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第8話 真っ裸でストレッチするからハッピーエンドの彼女について聞かせてほしい

私、楽満スミレはテレビアニメ≪百合ハプニング≫の第10話に登場する作中作≪ハッピーエンドの彼女≫がお気に入りである。

今日も今日とて露天風呂に入りながら、サクラと≪百合ハプニング≫の話題をする。

「真っ裸でストレッチするからハッピーエンドの彼女について聞かせてほしい」

サクラは私にそう言って、露天風呂の傍らでストレッチを始めた。

「私の自称元カノのスクにはもう会えない。

スクは失うことでしか愛情を抱けない女子高生。

彼女と私は付き合ってもいないのに別れ話をした。

そうすることで、自称元カノのスクは私に愛情を抱けるようになった。

それから半年ほどが過ぎ、もっとも親しくしていた私に愛情を抱けるようになったスクの姿は見られなくなった。

私にスクへの恋情があるなら三人のうちの一人を選んでほしいとスクは私にいった。

登校中にはヒラクと会話を楽しむ。

学校にいるときはチルと会話を楽しむ。

夕飯の外食の際にはヒラリと会話を楽しむ。

ヒラクは初恋の人と付き合わないと他人の愛情を感じられない。

チルは初恋の人と付き合わないと笑顔になれない。

ヒラリは初恋の人と付き合わないと人の顔が判別できない。

女子高生の私は同級生の彼女たちに惚れたのだ。

私はヒラクと付き合うことを選んだ。

スクは二十四時間存在し続けられるけれど、愛情を抱いてから半年が過ぎると、いつまでも存在できなくなり、代わりに八時間ごとにヒラクとチルとヒラリのうちの一人だけが存在するようになる。

つまり、今の彼女は一つの意識で三人分の体を有しているのだ。

三人のうちの一人を選ぶ。すると、選ばれた一人は残り二人分の制限を受ける。

そして、私が選ばなかった二人は姿を見せなくなる。

ヒラクを選ぶということは、ヒラクは私の顔がわからなくて笑顔になることもできないということだ。

スクは三人分の制限を受けていた。

けれど、スクは愛情を知った。

だから、ヒラリには私の愛情を感じてほしいと思ったんだ。っていうあらすじがいいんだよね」

「「……」」

「ちょっと、二人とも聞いてる!?」

「ちゃんと聞いてたよ」と両足を大きく横に開いてサクラはいった。

サクラは露天風呂の縁で真っ裸で私の話に耳を傾けながらストレッチをしていた。

隣にはヒマワリがいる。

ヒマワリが柔軟にハマってる話をするとサクラが食いついてどちらの体が柔らかいか競うことになったのだ。なぜそうなる……

「私もその作中作お気に入りなんだ。実は≪百合ハプニング≫の10話に登場する作中作って全部、百合ハプニングの主人公の笑良えよと恋人の最空もぞらが幾何学模様の霊にいたずらされて、自分たちのことを王女と聖女と思い込んだり、≪ハッピーエンドの彼女≫に登場する主人公とヒロインと思い込んだりしてたって二人が気づくのが魅力的な回かな。間違った記憶を保ったまま≪湯宿なごむ≫で二人きりで入浴するシーンがあるけど、二人で湯船に浸からないと、本当の記憶を取り戻せないっていう性的な展開が≪百合ハプニング≫の10話の醍醐味よねぇ~」

ヒマワリがサクラと同じく大きく開脚してサクラよりも胸が石畳につきそうなくらい上体を伏せている。

「負けたぁ」

サクラがそういうと、ヒマワリは勝ち誇った顔で露天風呂にゆっくりと浸かり満足げな笑みを浮かべるのだった。

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