第7話 聖女の想いが高まりまくって恋愛魔法で王女にもっと惚れてもらおうとしたところ、見事に失敗してしまい昨日までに会った記憶のなかにいる人しか愛せなくなった彼女とはどうにか今も別れずに済んでてほしい
花見サクラは仲居の仕事が終わった後に≪湯宿なごむ≫でテレビアニメ≪百合ハプニング≫の第10話について私と語りたいらしい。
「私は聖女としての高い技量を多くの人たちに認められていたから、今回も上手くいくと思っていたけども思うようにはならなかった。
王女にもっと私のことを好きになってほしくて、最上級魔法に属する恋愛魔法を彼女が寝ている隙にこっそり使ってみたのだが、これが見事に失敗に終わった。
そのせいで、王女は昨日までの私しか愛せなくなった。
彼女をこんなふうにしたのは私の責任。
彼女から身を引くことはあるかもしれないが、私の方から身を引くのはありえない。
なぜなら、私はまだ王女を想っているから。
そう思って日々を過ごしていると、以前は金髪だった王女が少しずつ白髪はくはつになり始めた。
正直、悪くないな。と思ったし、むしろ、前より好きかも。白馬を乗りこなす王女には金髪よりも白髪はくはつの方がふさわしいだろう。
どうやら、その体の異変はこれだけにとどまらず、よく寝れてないのか最近では王女の目元にひどく濃いクマが出ていた。
正直、悪くないな。と思ったし、むしろ前よりずっと好き。目にできたひどく濃いクマすらオシャレに見える。
でも、こうも立て続けにこれまでと違う様子を見ると心配にはなる。
試しに再び寝ている王女の体を魔法で探ってみたら、とんでもないことがわかった。
なんと王女は私の用いた恋愛魔法を自身の体から取り除こうとして、魔力を使い続けていたのだ。
もちろん、王女は私にその事実を打ち明けていない。
聖女として、自分のしたことが原因とはいえ、今の私を愛するための惜しみない努力に心を打たれた。
その日の夜は朝になるまで王女を想って自室で涙を流し続けた。
さらに体が弱っていく王女。
ついに固い食物が噛み砕けなくなり、おかゆで食事を済ませるようになった。
魔力消費により弱りきった王女の口に私が食べやすい料理を運ぶのがあまりにも幸せで毎日、卒倒しそうになっていることは、王宮にいる人のほとんどが知っているけれど、まだ王女には一切話せていない。
そんな、あらすじの作中作≪聖女の想いが高まりまくって恋愛魔法で王女にもっと惚れてもらおうとしたところ、見事に失敗してしまい昨日までに会った記憶のなかにいる人しか愛せなくなった彼女とはどうにか今も別れずに済んでてほしい≫って良いよね」
「話が長いよ!」
今日も夜遅くに露天風呂の湯船に私たちは浸かっているのだけれども、私はサクラの話に思わずそう返さずにはいられなかった。