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鍵が開けられ、獣の鳴き声のようなけたたましい音を立てて、私が拘束されているこの暗闇と足音の主とを隔てる鉄の扉が内側へと押されていく。
さて、私の元へやって来るのはどんな悪鬼羅刹であろうかと明るみに目を向ければ、地に着かんばかりの長く垂れた黒い衣服を着た長身の男の背中がそこにあった。
男はゆっくりと私に向かって振り返ると、いやに柔和な表情を浮かべていて、背後の壁には持ってきた松明が備えられている。
薄明りの中、明瞭ではないものの、男が白頭で長く突き出た鼻を持った老人であることと、私が拘束されているのは独房のような一間だったことがわかった。開け放たれた鉄格子の大きな扉の先には、窓一つ見当たらないこの部屋で唯一くり抜かれた戸口が見え、そこから先は真っ暗になっている。
私の横たわる右側には長細い瓶が置かれており、これが揺れ動く像の正体だったのだと腑に落ちた。
男に構わず首や眼球をあちこちへ動かして部屋中を貪るように見ていると、男は嗄れ声でぽつりと「苦しいでしょう」と言った。
男が私をこのような憂き目に遭わせている張本人ならばやけに白々しい文言だが、不思議と拘束の解除を男に訴え喚く気にはならない。
男はまた規則的な歩調で私の横に置かれた瓶の傍に近づくと、持ち上げてたらたらと私の口へ瓶の中の水を流し込む。静謐さを潜ませた水の味わいが、私の喉を潤わせた。