夢でしか行けない寺院
それは子供の頃から頻繁に夢に出てくる寺院だった。
夢でしか行けない寺院と言っても特別なものではない。
子供の頃だと家族と一緒に参拝する夢だったりしたが、大人になってから見る夢としては、参拝に行くというより夢の中の街の景色として出て来るだけで、見る夢の内容は寺院の存在とは関係ないものの方が多かった。
度々、夢の中でその寺院のある街が舞台となることがあり、次第に本当に存在しているかのようにすら感じる感覚になっている。
特別スピリチュアル的なパワースポット的な雰囲気があるわけでもなく、庶民的な雰囲気でちょうど大きさはとげぬき地蔵のお寺と同じくらいである。
街の景観は実際とは全然違うのだけど、場所的には有楽町と銀座の間に位置した所にある。
ここ最近はしばらくこのお寺の夢は見ていなかった。
しかし、今朝見た夢で、久々にこの寺院が出てきた。
寺院が出てきたというより、この寺院で買ったというお守りの話だった。
会社の研修なのか、研修所のような宿舎に複数で暮らしていて、出かける際に玄関でお財布に入れるムカデ小判という金運のお守りをお財布に入れていたら、宿舎の管理人のおじさんが、「それは毘沙門様のムカデ小判ですよね?」と話しかけてきた。
俺は「そうですよ。えっと……、あのお寺です。有名……えっと……」と管理人のおじさんにお寺の名前や場所を伝えようとするが名前も場所も思い出せない。
俺の話を聞いていた管理人さんも周囲の同僚たちも無表情で無言になり、思い出せない俺に何も反応せず、何も言ってこない。
この異様な雰囲気の中で「あ、あの寺院は実際には存在しないのではないか? なぜ、何十年も夢で見続けたのだろう?」
そう思っているところで、夜中に目が覚めた。
朝の4時くらいに目が覚めて寝ぼけていたのかスマホで本当に寺院が存在しないのか調べようとしていた。
朝起きてしばらくしてからも変な感覚だった。
ごくごく自然に何十年も時折夢に出てきて、普通に夢の中で家族も自分も親しんでいた場所だっただけに、存在しないということが少しショックでもあった。
しかし、気になるのは夢に出てきた毘沙門様のムカデ小判。
今年の1/3の初寅の日に銀座と有楽町の間ではないが、そこから一駅くらいのところにある毘沙門様を祀るお寺でムカデ小判をいただいたのを思い出した。
お寺の大きさも夢で見続けてきた場所と同じくらいだし、うちのご先祖様が400年前に大工として江戸に出てきた時に最初に暮らしていたのが、そのムカデ小判をいただいたお寺の辺りにあたる。
まあ、なんか気になる夢だが、今のところ、何か意味があったのかはわからない。