表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
一度人生を諦めた悪役令嬢ですが、目が覚めたので婚約解消して自由に…ってしつこいです、元婚約者殿下。  作者: 心音瑠璃
第一章 学園革命

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

33/78

32.学園革命⑤

『ルビー様! これより先には近付いてはいけません!』

『嫌よ! お母様に会わせて!』

『お嬢様のお気持ちは大変分かります! ですがどうか、お聞き分けくださいっ……!』

『嫌っ!!』


 どうにか振り切ろうとするも、小さな自分よりずっと身体の大きな騎士が、私の身体をいともかんたんに持ち上げる。

 その手を噛んでやろうかと思ったけど、そんなことをしてもお母様は喜ばないと分かっているから、ただただ暴れた。

 だけど、伸ばした小さな手は虚しく空を切り、その手がお母様に届くことも、触れることも、最期まで叶うことはなく―――




(……嫌な夢を見たわ)


 そう冴えない頭で考えながら、目元に手をやれば、案の定指先が涙で濡れていて。

 夢見が悪いせいか、ズキズキと痛む頭を抑えながら身体を起こす。

 天井の次に視界に映ったのは、見慣れた寮の自分の部屋。


(……私、どうやって部屋に帰って来たのだっけ)


 そうだ、確か階段から落ちて……。


「ルビー様!」

「!」


 不意に名を呼ばれハッと見やれば、開いた扉の先にシンシア様の姿がある。そして……。


「……え!?」


 後ろにいた人物の存在に思わず声を上げた。


「ど、どうして!? ここは男子生徒は立ち入り禁止のはずでしょう!?」


 そう、シンシア様の後ろにいたのはグレアム様で。

 彼は不機嫌そうな顔で口にした。


「会長権限だ」

「……立場乱用!」


 思わず声を上げた私に、シンシア様が駆け寄ってくる。


「ルビー様、お身体の具合はいかがですか?」

「身体? 特に何ともないけれど……」


 頭が痛いのも大分取れたし、と首を傾げれば、シンシア様がホッと息を吐く。


「良かったあ……」

「いや、良くないだろう」


 そう口にし、勝手に部屋に入ってきたグレアム様を見て思わずムッとする。


「ちょっと、まだ入室許可を出していないのだけど」

「誰が倒れた君をここまで運んだと思っているんだ!」

「!」


 珍しく彼に怒られたことで怯んでしまっている間に、グレアム様はため息交じりに説明した。


「……階段から危うく落ちかけたんだぞ。人のことをグチグチ言うわりに、自分のことには無頓着にも程がある。

 あれから十日間も眠っていたんだぞ!」

「!? 嘘!?」


 十日と言ったら……。


「待って! 試験は!? 学期末試験が始まるわよね!?」

「明日からです」


 パニックになる私にシンシア様がすかさず答えてくれたことで、少し安堵したものの。


「……いや、呑気に構えている場合ではないわ! まだやるべきことはたくさんあるのに!」

「駄目だ」

「え……?」


 ベッドから立ちあがろうとした私を、グレアム様が行手を阻む。

 思わずムッとし、声が低くなる。


「……退いて」

「駄目だ」

「なぜ!」

「駄目に決まっているだろう!!」


 グレアム様は声を荒げる。

 再び驚いてしまう私にハッとしたのか、彼は咳払いしてから言った。


「……なぜ倒れたか知っているか?」

「……いいえ」

「著しい魔力消耗のせいだ。体力と魔力が直結していると知っているくせに、自分が疲れていることにも気付かず働き詰めだった。

 ここ数日の君の目撃情報が全てを物語っていた」


 そう言って、彼が私に紙の束をつきつける。

 その紙を見れば、報告書と書かれていて。


「っ、な、何をしているの!? 報告書!? ということは、聞き込みをしたってこと!? 信じられない!」

「信じられないのは君のほうだろう、ルビー!」

「っ」


 今度は強い力で肩を掴まれる。

 振り払うことが出来ず痛みに顔を歪めると、幾分か力が弱まったものの、逃がさないとばかりに彼の空色の瞳が私をじっと見つめた。


「夏休みが明けて、君が変わったことに衝撃を受けた。婚約を破棄……、いや、解消されたのもなぜだかは分からなくてひどく落ち込んだ。

 でも、君は俺の婚約者だった時よりずっと生き生きとしていて……、あぁ、俺の婚約者でいた時は窮屈だったんだとそう思って……、そんな君を応援したいと思って、君が起こす革命にも参加した。

 ところが君は、俺達生徒会の仲間がいるにも拘らず、一人でこんなになるまで無茶をした。

 どうしてだ! なぜ、君はいつも……っ」


 そこまで言った彼は、ハッとしたように目を見開いた。

 そして、パッと肩から手を離すと、背中を向けて言う。


「……ごめん、頭に血が上った」


 グレアム様の言葉に、私はぐっと腕を抑えて口を開く。


「……心配してくれているのはよく分かった。

 けれど、他ならない私が革命を起こしたんだもの、私がここで立ち止まるわけにはいかない」

「っ、まだ分からないのか!」


 グレアム様がもう一度振り返り、大声を上げる。

 それに今度は怯むわけにはいかないと、言い返そうとしたその時。


「はい、そこまで」

「「「!」」」


 一度手を叩き、部屋の外にいたのはヴィンス先生で。

 ヴィンス先生は私に部屋に入っても良いか尋ね、私が恐る恐る頷くと、部屋へ入ってきて言った。


「ごめんね、話は聞かせてもらったよ。

 そうだね、とりあえずスワン君は一旦外に出ようか。生徒会の仕事、まだ残っているでしょう? 行って良いよ」

「っ、ですが」

「彼女は私に任せて、君は君のやるべきことをするんだ。良いね?」

「……っ、はい」


 グレアム様は私の方を振り返らずに部屋を出ていく。

 その背中を見送ってから、ヴィンス先生は扉を閉じてベッドに腰掛ける私の元へ来た。


「具合はどう?」

「おかげさまで……」

「そう、良かった。魔力消耗は君が頑張った証でもあるけれど、少し今回は空回ってしまったようだね。

 一人で肩肘を張るのは、限界があるんだよ」


 ヴィンス先生の言わんとしている意味が分かり、私は首を横に振った。


「っ、ですが、私が頑張らないと意味がない……!」


 私が革命を起こした意味が、ここにいる意味が、なくなってしまう……。


「確かに、君が頑張ることで士気が上がる。それは確かだよ。

 だけどね、それでは何のために君は生徒会に入ったの?」

「……!」


 ヴィンス先生の問いかけに言葉に詰まる。

 そんな私を見て、ヴィンス先生はゆっくりと言葉を発した。


「……“魔物”の件を生徒全員に公表したよ」

「え……っ!?」


 ヴィンス先生の衝撃の一言に、私は言葉を失い、愕然としてしまうのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ