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第8話 妖刀宗近

転生した理由など、いくら考えても分からない。

そもそも。転生に「理由」など無いのかもしれない。


不思議なのは、たまに頭の中で声が聞こえる。

俺が分からないことで躓きそうになると、タイミングよく色々と教えてくれる・・

どういう事だ??


見た目は13歳くらいだが、中身は30過ぎのおっさんだぞ・・

いやいや、そこまでおっさんには見えなかったはずだ!!


今の容姿は・・黒髪に黒眼・・見ようによってはイケメンかも知れん・・

13歳にしては細マッチョ・・いや・・ちょっよマッチョ過ぎる・・

元の俺の体を無理やり子供にしたような感じだ・・


地球で生きていた頃の事を思い出していた。


俺は・・超電磁砲という中々にSFチックな武器を開発していた。

思えば高校時代から電子だの物理だの実験だのが大好きで、気がつけば電磁力学にハマっていた。


機械工学だ!ロボットだ!と、大学では色々やったし・・まだまだやりたいことは山ほどあった・・。メカトロニクスの集大成とも言えるロボット工学もやりたかった。


装備庁に入って、戦闘艦に搭載する次期主力武器に電磁砲の構想が上がった時はワクワクが止まらなかった。


構想から4年・・そして実射試験で事故に遭遇した。

実射試験自体は成功したが、残留プラズマを処理するコンデンサがオーバーフローを起こして・・たぶん、安全弁が開放されたのだろう・・

バーストしたプラズマが俺を一瞬で蒸発させた・・


気がつけば中世の異世界だ・・これからどうしろと・・

13歳にしてスローライフか? 中身はおっさんだから…それも悪くはないか…

そもそも・・32才って「おっさん」なのか?やっぱり・・


今日は朝から天気が良かった。転生して2日目…

全くこの街を知らないので、街を散策することにした。


取り敢えず、このみすぼらしい格好を何とかしたい・・

俺は街をうろつき、「冒険者御用達」と看板のある1軒の雑貨店に入った。

雑貨店というか、洋品店というべきか・・


装飾用の小物やら古道具、新しい服から、古着も置いてあるようだ。

面白そうなので、店に入ることにした。


「こんにちわ・・」


「いらっしゃい!」


「あの・・昨日から駆け出しの冒険者になったんですが、それらしい格好の服が欲しいんですが・・」


「まあ・・冒険者?良いわねー!」


「で、どんな服装が好みなの?」


「そうですねー・・出来るだけ体にフィットした・・革パンとジャケットなんか・・」


「なるほど・・これは冒険者がダンジョンから持ってきた服なんだけど、君の要望にぴったりじゃない?」


ええ?!・・こ、これって・・

革のストレートパンツにライダースジャケット??じゃないのか?

ってか・・これ、俺が着ていたやつに酷似してるんだが??

あれっ!!・・いや、これ、俺のだし!!


「どうしたの?そんなに驚いた顔をして・・」


「いえ・・ちょうどこんなのが欲しかったので・・」


「じゃあ、これで決まりね!」


「ええ、もちろん」


「他に何か欲しいものはあるの?」


「いえ・・得には無いのですが・・ちょっと店の中を見ても良いですか?」


「もちろんよ!欲しい物があったら声を掛けてね」


「はい!」


「ふふふ・・冒険者に似合わず、礼儀正しいのね!」


「あ・・ははは」


「冒険者に似合わず、礼儀正しい」というのは、褒めているのか、貶しているのか・・

ものすごく、どう反応してよいのか、今でも分からない・・


冒険者御用達と謳ってるだけあって、野外やダンジョン内での野営に使うような道具が多い。中古の大剣や片手剣、肩や胸のプロテクターも置いてある。

武器専門店ではないので、品揃えは良くない。それに殆どが中古品だ。


薬草採取と言っても、獣や魔獣とかいうやつも出るに違いない。

やはり、武器の1つや2つは持つべきか・・

軽装の冒険者でも、プロテクターは必須のようだし・・


おれは、中古の片手剣を置いてある場所に足を運んだ。


んん?・・・・すっごく見た事の有るようなものが置いてある・・

ま、まさか?!俺は自分の目を疑った。

宗近!!・・・な、なんで?・・なんで宗近がここに?!!


そこには、宗家から授かった日本刀「宗近」が置いてあった。

俺は「葛城流居合抜刀術」の伝承者の一人だ。


免許皆伝と名誉師範代となった時に、葛城流の伝承者の一人として選ばれた。

その時に贈られたのが、この「宗近」だ。


1800年前に高名な刀鍛冶が打ったものだが、侍の幾多の血を吸い「妖刀」と言われている。刀身には俺の名「葛城 仁」と刻んである・・


「あの、すみません・・これはおいくらですか?」


「ああ、それ・・ダンジョンから出た曲がり剣ね。差し上げるわ」


「ええ?!・・どうして?」


「短いし、変に反ってるでしょ? それに、そもそも抜けないのよ、その剣は・・」


いや・・普通に抜けるのだが・・


「ただの反った棒にしかならないので、捨てようか迷っていたところなのよ」


「いえ、それでは気の毒ですから、小金貨1枚で買わせて頂きます」


「まあ!気前がいいのね!!」


「いえ・・では、この服と下着、シャツとブーツ、それにこの剣をください」


「え?いま・・ブーツって言った?」


「ええ、言いましたけど・・」


「ブーツってなに?」


「え?・・この靴の事ですが・・」


「ああ、それのことね・・なんでブーツって言うの?」


「あ、僕の国ではこういう靴の事をブーツって言いますので」


「なーんだ、そういう事ね。全部で・・小金貨2枚と・・銀貨4枚よ」


「はい、これで・・」


「うん、確かに」


とんでもない事が起こってる気がする・・

俺のライダースジャケットとパンツ、妖刀宗近も・・

ダンジョンから持ってきたって・・どういう事だ??


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