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第5話 第一歩

職を求めて冒険者ギルドに向かう仁。誰にでも出来る「薬草採取」という仕事にありつくためだ。

自分にもできそうな仕事が有ることを知って少し安堵するが、未だ報酬を得たわけでは無かった。

無事、職にありつけるのか?・・


俺はさっそく冒険者ギルドに向かった。


冒険者ギルドは、噴水広場から100メートルほどの所に建っている3階建の建物だ。

正面の入り口の前に立って眺めていると、なるほど、如何にも冒険者然とした多くの連中が出入りしている。


「おい、ぼうず!そんなとこに突っ立ってると出入りの邪魔だ、端に寄れ!」


「あ!すみません」


「ん・・またお前か?なんでいつも出入り口の前で突っ立ってるんだ?」


「あ、さっきの・・」


「お前、この街は初めてか?」


「はい・・」


「そうか・・で、冒険者ギルドに何か用なのか?」


「はい・・薬草採取でお金を稼ぎたいと思って・・」


「なに、薬草採取?」


「はい・・」


「それを早く言え、ギルドは初めてなんだな?」


「初めてです・・」


「よし、俺が案内してやる!お前、名は何ていうんだ?」


「ジンと言います。ジン・カツラギです」


「ジンか、家名持ちなんだな」


「家名持ち?」


「カツラギが家名だろ」


「あ、・・はい」


「貴族にしちゃあ・・みすぼらしい格好だな・・」


「そうですね・・僕もそう思います」


「まぁ、どんな事情があるかは知らねーが、俺はクレスってんだ」


このクレスという男は「谷番のドルフ」という冒険者チームの前衛を努めているらしい。

背中に大剣を背負ってガッチリした体格のマッチョ野郎だ。


見た見や乱暴な態度とは裏腹に、思ったより親切で話し好きで、冒険者登録の仕方なんかを教えてくれた。


他の街ではギルドの登録料が必要だが、この街は「冒険者で潤っている街」なので、冒険者登録は無料なのだそうだ。文無しの俺にとって「無料」というのは実にラッキーだ。


「俺はチームと落ち合うから此処までだ。今日からお前も冒険者仲間だ、よろしく頼むな!見かけたら声でも掛けてくれ!頑張れよ、ぼうす!」


「はい!どうも有難うございました!!」


「おう、またな!」


俺はクレスに教えてもらったように受付を済ませた。


「ジン・カツラギ 君ね・・ステータス測定はどうする?」


「測定すると何か良いことが有るんですか?」


「冒険者ギルドには色々な依頼が来るの。

 依頼を受ける時に、自分のステータスを知っていれば、相性の良い依頼を選ぶ事ができるから、比較的安全で効率よく依頼をこなす事ができるわね」

 

「他の冒険者さんは測定をしてるんですか?」


「そうね・・有料なのでマチマチね・・」


「有料なんですか?」


「測定棒は使い捨てなので有料になるわね・・」


「それならけっこうです」


「そうね、初心者だとステータスやレベルは上がっていないでしょうから、あまり意味がないわね」

 

結果から言うと、ステータスを測定しなくて正解だった。


俺の持っている5つのスキルのうち、ヒール以外は全て「特殊スキル」である。

特殊スキルは1つだけで贅沢な暮らしが約束されているスキルらしい。

それを4つも持っていると知られれば、ほぼ間違いなく国から束縛され、特殊工作員として遣わされるハメになるだろう。


仕事は「薬草採取」から始めたい。と言ったら、すごく歓迎してもらえた。

さっそく数種類の実物の薬草を見せてもらい、特徴を押さえることにした。


すると、鑑定スキルと索敵スキルが登録されました。と、案内が流れた。


「え?この声は?・・どこから聞え・・??」


「え?・・『声』?・・」


「あ、いえ・・何でもありません・・ちょっと誰かの声が聞こえた気がしたので・・

気のせいです」


「そうなの・・?」


次の瞬間、目の前にある薬草がグリーン色に光り、点滅しはじめた。

頭の中で「索敵オフ、鑑定オフ」と唱えると光が消えた。

あのノートに書いてあった通りだ・・


登録が終わり、受付嬢に礼を言ってギルドを後にした。


この街には、塀はあるが門は開放状態だ。

なぜなら、一番危険な『ダンジョン』が街の中心を成しているからだ。

もし万が一、ダンジョンのモンスターが門から出てきた場合、門があると避難者を堰き止めてしまう可能性があるためだ。


従って、街の出入りは至って簡単である。警備兵に手を上げて挨拶するだけで良いのだ。

入場許可証の提示、なんてのも存在しない。

では、警備兵が警戒している事はといえば、手配書が回っている盗賊や罪人、場内への魔獣の侵入を警戒しているのだ。


俺は警備兵に挨拶し、門の外に出た。


「異世界の第一歩」だ!



未だ午前中だ。

街から出てさっそく森に向かうことにした。


「索敵オン」・・


んん??ま、未だ・・街を出て1時間も経っていないのに・・薬草??


間違いない、薬草だ!!

他の雑草に紛れて分かりにくいけど、あたり一面まばらに薬草が生えている!!

群生している場所はほとんど無いが、大した問題ではない。


回復と治癒の薬草が多く、解毒と魔力回復は少ない。

とはいっても、あたり一面に生えている!・・採り放題だ!!


採った薬草をどんどんポシェットに入れてゆく。

面白くなって時間を忘れ、夕方になってしまった。

ポシェットの中を確かめると薬草別に分類され、

全部で100キロほどの薬草が入っていた。


ポシェットに入れると重量まで把握出来てしまう・・

更にすごい機能がもうひとつ・・

自動的に種類別に分別されて収納されることだ。

底なしのポシェット・・既にファンタジーである。


気がついたことがある。・・それは体力だ。

13~14才の体にしては・・異常に体力があるように感じる。

薬草を摘み取るために、結構な体力を消耗したはずだが・・

全く疲れを感じない・・異世界とはそういうものなのか??


つい夢中で薬草を採取してしまったが、採取場所が街から出て30分程度の所だったため、日が沈む前にギルドに戻ることができた。


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