姿見の沼
僕は、目の前にある姿見をじーっと見つめていた。
理由もなく、考えることもなく、ただただ本能のままに何時間も姿見を眺めていた。
そうしているうちに、何かが僕の脳裏に声が映った。
「楓の杯に、味蕾の寒冷をどう受け止めるのか?」
そのようなニュアンスが響いてきたが、僕には理解ができなかった。
理解ができないまま、それを理解するために姿見を何時も眺めた。
しかし、僕の脳裏には、もう一度声が響くことはなかった。
楓の杯?味蕾の寒冷?
僕にはさっぱり理解ができなかった。
僕は、理解ができない言葉を理解する為に頭をかきむしり
ながら姿見を眺めた。
何時間も.....。
そうして眺めていくと、声が響いてきた。
「味蕾の寒冷に楓が実ときは、僕の心がすでに満たされた時であろう」
そう響くと、ゆっくりと姿見が砕けていくのでした。