デスペナルティ
メ「記憶が無くなる…か…」
ユ「むしろレベルと記憶だけで良かったんじゃないのか?」
メ「レベルが上がらなければまた前のレベルまで戻され、その間の記憶も消される
今回のクエストで上がった分までならいいが、2や3まで戻され続けると記憶は初日まで戻るってことだ
これでやばさがわかったか?」
ユ「よくわかった」
メ「幸いなのは今できる蘇生が1時間に1回しか使えないことか」
ユ「それは不利なことじゃないのか?」
メ「蘇生しなければ再度死なないってことだ
何度も死ななければ記憶は失い続けない
生きている限り死ぬリスクは付きまとうんだよ」
こいつは本当にこういう戦闘になるとよく喋るな
普段からよく喋るんだが
メ「これから先、1度も死ねないと思え」
ユ「最初からそのつもりだ」
メ「膝枕の記憶も消えるぞ」
ユ「マジで死ぬ気で生き残ります」
「あの娘、普通の人間では考えられない神聖力じゃな
神に愛されたのか、はたまた優しさと無垢ゆえの奇跡か…」
森の方で戦いを見ていた女性がそう呟き、プレイヤー達を見守っている
メ「殆ど片付いたか」
ユ「他のプレイヤーも相当減らしてくれたしな」
メ「だが、戦ってて気付いた
奥のあの女の魔族
奴だけは上空から少しも動いていない」
それがボスって奴か?
そう思った矢先、そいつがゆっくりと降りてきてこちらに近寄ってくる
「あらあら、私の眷属がみーんなやられちゃったみたいね?」
魔族も喋ることが出来たのか!?
というかこの魔族はヤバい
近寄ってきただけで脳が揺らされて頭がおかしくなりそうだ
「お主ら伏せろ!」
女性の声が響くとほぼ同時に魔族に向かって矢が飛んでいく
魔族の女はそれをいとも簡単に弾く
声のした方を見るとそこには長い耳の軽装、弓を持ったエルフ?が立っていた
エルフ「久しぶりじゃのう、アスモデウス
まさかこんなに早くお主が出てくるとはのう」
ア「あんたはフレイヤ?
久しぶりの再会だと言うのに随分ご挨拶じゃない?」
フ「その娘達は貰い受けるぞ」
ア「いいわよ、今回は私の眷属も減っちゃったしあなたの顔に免じてこの辺にしといてあげるわ
別にお目当てはそっちじゃなかったしね?」
そう言うとアスモデウスと呼ばれた魔族はほかの生き残った魔族を連れて岩場の方向に飛び去って行った
メ「何がどうなってんだ?」
フ「ワシとお主らはいずれ会うことになるじゃろう
その時話すべきことを話そう」
そう言い残すとフレイヤと呼ばれたエルフも森の方へ帰って行った
マ「何だったんでしょう?」
メ「とりあえず魔族は帰って行ったな…」
『100人クエストは完了しました』
ユ「良かった、これで何とか助かりましたね」
マ「でも…」
周りは見渡す限りの焼け野原となっていた
至る所にプレイヤーの死亡アイコンが表示され、始まりの村とその周りの平原は草木1本残っていなかった
今回私たちが生き残れたのも他の多くのプレイヤーが助けてくれたからだ
デスペナルティがレベルひとつと記憶だけとはいえ、ほかの多くのプレイヤーが死んでしまった事には変わりはなかった
『報酬をお配りし、世界を元の状態に戻します』
報酬?
元の状態に戻す?
『10000ゴールド手に入れました』
『技 [不屈] を覚えました』
『技 [広域防御] を覚えました』
『初めて死を乗り越えた者の称号を入手しました』
『生存報酬として武器のレベルが1段階上昇しました』
『MVP報酬として武器のレベルが1段階上昇しました』
『世界を元の状態に戻します』
そのアナウンスが聞こえた瞬間流れるように世界が再生された
空は元の綺麗な青空に戻り、草原には草木が生え、村や村人は元の生活を取り戻していた
そして死んでいたプレイヤー達は全員復活し、レベルや記憶は失ったものの、報酬を受け取って満足そうだった
メ「なんだったんだ、あれは…」
ユ「色々整理しないとな」
マ「あの、不謹慎かもしれないですけど、空が元に戻った時、草原に緑が戻った時、とても美しいと思ってしまいました…」
ユ「私もですよ…」
補足説明
端末
リストと接続し、データをサーバーにダイブさせるための機械
人間だけでなく無機物やペットなどの動物もダイブさせることが可能
ダイブした物の記録が半永久的に保存され、ダイブ後不測の事態に陥った時は端末から無理矢理帰還させることも可能である