ヘラクレス
ユ「あのー、あなたはどなたですか?」
『お!気付いた?俺はヘラクレスってんだ!』
絶賛身投げ中のユウは声の主に問う
横を見ると屈強な、だが優しい顔をした青年が私の横であぐらをかきながら落ちていた
てかヘラクレス!?
流石の私も知っている
古代ギリシャ神話の歴戦の英雄であり神の名だ
てことはこの能天気そうなのが神?
へ『おーい、誰が能天気だってー?』
ユ「え!?
声に出てました!?」
へ『俺たちは意思の存在だからお前たちが考えてること分かるんだよ』
ユ「そうだったんですか、すいません!」
ヘ『いいっていいって!
あと訂正しとくと別に俺はそんなに御大層な神とかじゃねぇと思うよ?
穢れと戦って世界と同化したけど名前だけは神であっても崇められたこととかないしな』
彼は自分が神ということを知らないのか
ユ「では、あなたはこの世界の今はご存知ないんですか?」
へ『そうだよ?
君が崖から飛び込むまで俺は眠ってたんだよ
今どうなってんの?』
ユウは今この世界で魔族が復活し、別世界の人間達がそれと戦っているということを伝えた
へ『また戦争か…
俺は嫌なんだよね
人が人を殺すこと
元々俺も人間だったからさ』
ユ「そうだったんですか」
へ『そう、完全に人間だったんだよ
地球の意思と呼ばれてる者達に意思をそのまま世界と同化されたから今はお前たちの言う神って存在にはなってるんだろうけどね』
ユ「どうしてそんなことを…」
へ『あー、俺が望んだんだよ
それで人類が助かるなら俺は迷わなかった
俺の使命は生まれた時から人類を守ることだって決まっていたからね
人間だった頃の功績を神達が認めてくれて世界を見守る側になったってことよ!』
ユ「あなたはとても正義感の強い人なんですね…」
へ『お前もそうなんだろ?
俺たち意思の存在はそれに近しい意思を持つものとしか同調して会話することできないからな』
ユ「そうなんでしょうか…?」
へ『なんか引っかかることでもあんのかい?
一応神らしく、話くらいは聞くぜ?』
ユ「私は…1人の女性を放っておけなくて戦っています
あなた方のように全ての人間を守ろうという崇高な覚悟ではなく、1人の女性を助けるためにこの世界に来たのです
だから…」
へ『はっはっは!!
どこまでもお前は俺と一緒だな!!』
ユ「え!?」
へ『俺はな、ちゃんと生まれた時から人間を守るという使命を授かって生まれてきたんだ!
でもな、同じように好きな女ができちまった
その女に好かれたいがために、その女を守るためにひたすら穢れをはらい続けたんだ
だから俺だって大して変わらねんだよ』
ユ「そんなことが…って別に私はその人のこと好きとかそんなんじゃ…」
へ『でもな、結局その女は死んじまった
その女の最後の言葉、人間を救ってくれって言葉で俺は意思の存在になった
だからな、ユウ
お前が思ってるより俺は人間なんだよ』
ユ「あなたとは良い友人になれそうだったんですけどね…」
へ『なーにこれから死ぬようなこと言ってんだ?』
ユ「え、だって普通にあんなところから落ちたら死んじゃうじゃないですか」
へ『死ぬようなこと女1人のためにできるお前の方がよっぽどすげぇと思うよ俺は
手出せ』
ユ「こうですか?」
へ『それでいい
多分こうなることが必然だったんだろうな』
そう言って伸ばした手にヘラクレスは手を重ねる
するとヘラクレスの体が少しずつ消え、ヘラクレスの意思が頭に伝わって来る
ユ「ええ!?
落ちるスピード戻ってるんですけど!?」
へ『大丈夫だ
俺がついてる』
数百はある高さからユウは真っ逆さまに地面に激突した
ユ「…あれ?
全然平気だ」
へ『俺の力が入ったからあの程度の高さならほぼ無傷だろう?』
ユ「そんなに凄い事だったんですね、神をこの身に宿すということは」
へ『それでなくてもお前なら助かってただろうけどな?』
ユ「不屈がありますからね」
こうして私は神の力をその身に宿すことに成功した