キャラメイク
『100人特別クエストを自動開始します』
「行けると思うか?」
「やらないとログアウト出来ないんだからやるしかないでしょ」
エデンズサーバー
サーバー番号1203100102
ダイブシステムと呼ばれる端末と、腕時計型のリストと呼ばれる機械を利用してファンタジーの世界を冒険するサーバーである
この手のサーバーは通称ゲームサーバーと呼ばれる
私達がこのゲームに参加したのは数時間前のことである
『内藤優…
リストロード完了…
ダイブを開始します…
サーバー接続…
異常なし…
このサーバーは安全です…』
ユ「メイセイ、めっちゃいいサーバー見つけたんだけど!」
すぐさま友人に連絡した
リストさえあればダイブ中でも友人にメッセージを飛ばすことが出来る
メ「まーたお前の妄言に付き合うんじゃないだろうな?
この間のサーバーは入った瞬間ジャングルで野生動物に小一時間追い回されたじゃねぇか」
ユ「その件に関しては非常に申し訳ない
でも今回はマジですごいよ」
メ「しゃあなしな、番号」
彼は相馬明星
よく私のダイブに付き合ってくれる友人である
サーバー番号を伝え、しばらく待つ間に既にウィンドウが表示されていたゲームの説明を読んだ
エデンズサーバー
製作者 adm
このゲームは私が10年間思うままに作り上げたゲームです。
広大で美しい世界とその世界を生きる人々、生き物たちをぜひ楽しんでください。
この世界には魔族と呼ばれる悪が存在します。
彼らは人間の世界を侵略しようとします。
それは彼らの生き方だからです。
魔族は魔物を使役します。
その魔物や魔族を倒すと経験値が得られ、一定以上溜まるとレベルが上がります。
魔族や魔物をドンドン倒して最後に待ち受ける魔族の王を殺すこと、それがあなたの目的となります。
【メニュー】と言ってもらえればメニューが開けます。
詳しい説明はその都度ヘルプが出ますので省きます。
では、この世界をご堪能ください。
と、言うことでとりあえず「メニュー」と言ってみた
すると上から
[ステータス]
[アイテム]
[技・魔法]
[オプション]
[ヘルプ]
と、左寄りに縦長のウィンドウと各個のアイコンが出てくる
とりあえずステータスを確認しとくか
【HP】25
【筋力】5
【体力】5
【器用】5
【精神力】5
【素早さ】5
全て平均だな…
既にヘルプには【!】と表示されており、新しいヘルプが出ていることが分かった
そして気になるのは少し下に
「キャラメイ…ク?」
勿論キャラメイク自体は珍しいものでは無い
しかしよく使うウィンドウにそれが存在するのが違和感である
そもそもキャラメイクは基本的にサーバーに入った時1度だけ行うものでは無いのか?
「最初だしやってみますか…」
と、キャラメイクウィンドウを押してみた
『あなたの武器を選択してください』
直接脳内に語りかけてくるこの声はシステムボイスか
周りもかなりシステマチックな背景になっていた
でも、武器?
とりあえず「剣」と言ってみた
『そのカテゴリーは存在しません』
剣がない?
ファンタジーの世界でそんなことあるのか?
その後槍や斧、考えつく限りの武器を言ってみたが全て弾かれた
「じゃあ何ならあるんだよ…」
と、ぼそっと呟く
『現状あなたが最も得意とする武器は《優しさ》と《正義感》です』
優しさと正義感?
概念の話?
でもとりあえず武器を選択しないとキャラメイク画面から出られないので、「じゃあ、優しさと正義感」と答えた
『あなたの武器を承りました。あなたの武器はこれからこの世界だけでなく現実の世界も含めてのあらゆる出来事で成長も退化もするでしょう。より強く成長して、このゲームを有利に進めてください。それでは、キャラメイクを終了します。』
そう言われて手渡されたのは剣と盾だった
「一応武器は確保出来たけどこれはちゃんとヘルプを読んでおいた方が良さそうだな…」
その後ヘルプで確認したことをまとめるとこんな感じだ
①キャラメイクをすると文字通りの武器が与えられる
与えられる武器はその人の性格や記憶に基づいて最も適したものが与えられる
②選択した概念の方の武器、今回は優しさと正義感だが、これはそういうこと(人助けをすると優しさが、悪とされるものを倒したりすると正義感が上がる)をすると強くなり、攻撃力や防御力が上がる
③システムが答えた私が得意とする概念の武器というのは過去これまでしてきた行いをシステムの数値的に見た時最も値が高いものを参照してくれる
④選択した概念のシステムの数値の高さに応じてステータスも振り分けられる。
改めて見てみるとステータスは
【HP】25
【筋力】5 (+5)
【体力】5 (+15)
【器用】5
【精神力】5(+10)
【素早さ】5
という感じで結構伸びていた
⑤これは後で知ったことだが、キャラメイクは1度すると次にできるようになるまで24時間かかる
ヘルプには乗っていなかったが、そもそも再度キャラメイクする必要がなかったし、キャラメイク自体何度もできるとは思っていなかったので知るのは少し先になってからの事だった
と、そうこうしてる間に
メ「おーい!」
ユ「遅かったね、メイセイ」
メ「いや、お前ん家から俺ん家結構あるからね?」
ダイブシステムは現在各家庭に設置を義務付けられている
街中にも一定間隔に設置されていて自由に様々なサーバーに出入りできるようになっている
家庭用ダイブシステムは登録されているリストの人間のみ使用可能なだけでそれ以外は街中のダイブシステムと何ら変わりはしない
また、ダイブシステムはINする場所によってサーバー内の入場位置も変化する
サーバーにもよるが、運搬用等の特殊なサーバー以外は基本的に現実世界と距離は同じなのでメイセイの家から私の家まで歩いて来た事になる
メ「おっと、そうだ。このサーバーはファンタジーのRPGサーバーなんだろ?じゃあとりあえず戦ってみようぜ!」
ユ「まてまて、その調子だとまた説明全く読まずに来たな?」
こいつは説明書を全く読まないタイプである
私はとりあえずさっきまでのヘルプのことを説明し、こいつにキャラメイクをさせた
彼がキャラメイクを押したと思った瞬間テレポーテーションのように消えていた
ユ「さっき私もこんな感じだったのか…」
少ししたらまた同じ要領で彼が帰ってきた
ユ「どうだった?」
メ「なんかよくわかんなかったけどとりあえず言われた通りの武器にしてきたよ」
そう言って彼が手に持っていたのは1本の大きな槍だった
ユ「ちなみになんて答えたの?」
メ「明るさと冷静さ」
ユ「人によりけりなんだな
私は優しさと正義感だったよ
これでとりあえず2人とも武器は揃ったわけだし村でも探しながら魔物退治でもしてみるかい?」
メ「いいねぇ、大賛成!」
実はそうこう話してる間にも少し遠くにはそれっぽい影は見えていた
草を食べながら半透明の体内で消化しているゼリー状の生物
まさしくスライムそのものだった
あと遠くで見えなかったが、近寄るとスライムの上に
スライム レベル1
と表示されていた
ついでに言うとメイセイにも同じように名前とレベルが出ていた
近寄っても襲いかかってくるわけではなかったが、せっかくなので剣で刺してみたらまさかの反撃
突然の事で盾でガードする余裕がなかったが、すかさず後ろからメイセイが槍で一突きしてスライムが光状になって消えていった
メ「油断すんなよ」
ユ「助かったよ…」
とは言ったもののスライムに攻撃された痛みはなかった
と言うよりダイブしている時は痛みという感覚はない
たとえ腕が吹き飛んでも、足をもがれても、頭(脳)とリストさえ残っていれば生き続けることが出来る
現実に帰れば五体満足に戻っているのだ
たとえ頭やリストが破壊されたとしても「別の誰か」に端末から緊急呼び出しをしてもらえば帰ってくることも可能である
メ「ちなみに今のでHPどれくらい減った?」
ユ「んー、1ですね!」
メ「経験値はどれくらい入った?」
ユ「んー、1ですね!」
メ「次のレベルまでは?」
ユ「んー、20ですね!」
メ「日が暮れそうだな…」
この調子で行けば村に着くのが先か、レベルが上がるのが先か…
スライムもこの辺りは決して多い訳では無い
何匹か倒すよりかは別の魔物を見つけて倒した方が効率はいいだろう
「お、あれは!」
「おー、町?村か!」
スライムを数匹倒しながら綺麗な平原を進んでいると集落のような村を発見した
「始まりの村へようこそ、旅のお方」
そう挨拶してくれたのは中年の女性だった
『始まりの村をマッピングしました』
こっちはシステムだ
「こういう時はまず道具屋かな?」
「そうだな」
「うちの村に道具屋はないんですが、今丁度行商の方が村においでなのでそちらへ行ってみてください」
「あっ、分かりました、ありがとうございます」
「いえいえ、ゆっくりして行ってくださいね」
そう言うと女性は別な村人と井戸端会議をはじめた
言われた通り商人に話しかけるとそのままウィンドウが表示された
薬草 5ゴールド
解毒の実 5ゴールド
地図 10ゴールド
所持金100ゴールド
意外とお金持ちだった
でもこの先何が起こるかわからないのでとりあえず地図だけ買って次の町を探してみる事にした
ダイブRPGは普通のテレビゲームと同じでNPCなどは基本的に決められたこと以外はできない
だから先程の女性の行動が少し気にかかってはいるがその日はそれで終わり、ログアウトする事にした
補足説明
サーバー
電脳世界を構築する機械や電脳世界そのものの総称
当初は運搬用として発展していき、無機物をデータ状にして別の場所から取り出すことで、運搬費を削減する狙いだった
その際謝って作業員がサーバーの中に入ってしまい、慌てて取り出したところ、その作業員は完全無事で生還したことから結果的に人体実験が成功
別な場所への移動も可能となり、大幅に技術が進化した
その作業員のコメント
「最初に落ちた時巨大で明るい筒状の通路に落とされました。
少ししたら落ちてきた穴がまた現れ、そこに吸い込まれたと思ったら、現実に戻っていました」