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おまけの話81 敷かれたレールから外れて君と歩く道22

■おまけの話81 敷かれたレールから外れて君と歩く道22■


 美世です。

もうすぐ梅雨に入ろうとしていた休日の夕方、結構大変な事になっています。

お昼すぎに遊びに出た美和ちゃんが、いつもの時間になっても帰って来なくって、美和ちゃんのお父さんや修二様が血眼になって探しています。

美和ちゃんのお母さんはお家に、サヨさんはお屋敷にそれぞれ待機して、美和ちゃんが帰って来るか電話連絡が来るのを待っていました。

定期連絡は10分ごとにお屋敷に。

勇一様と私、修二様と美和ちゃんのお父さんで分かれて、美和ちゃんが行きそうな所を探しました。



 四人の考えることは一緒だったみたいで、打ち合わせもしていないのに神社の鳥居の前で落ち合った。


「困った時の神頼み」


 私は言いながら、小さな(やしろ)に向かって二礼二拍手一礼した。


「巫女神様、美和ちゃんの行き先を教えてください」


 大きく手を叩いて、大きな声を出した。


「巫女神さんよ! 美和が無事に戻ってきたら、美味い酒を奉納するから!!」


 私のマネをして、美和ちゃんのお父さんも。


「このちんけな(やしろ)を燃やされたくなかったら、今直ぐ教えろ!!」


 そして、修二君も。


「白川さん、お神酒は先日の物がいいらしい。

その代わり、3本よこせと。

シュウジ、脅すなら天罰を下すってさ」


 後ろから聞こえた声に思わず振り返ると、ライダースーツ姿のコージさんがヘルメットを抱えて立っていた。


「4人とも、来るのが遅いってさ。

… いや、巫女神様、そうは言いますけれどね、俺もサヨちゃんから連絡受けて向こうの仕事ほったらかしにして飛んで帰って来たんですってば!」


 コージさんは、ここの神様の姿が見えて、お話しが出来るらしい。

そして、ここに居る皆、巫女神様に怒られているようで…


「はいはいはい、分かってますってば!

はい、失礼しますよ」


 コージさんは勇一さんにヘルメットを押し付けると、社の扉を勢いよく開いた。

ずいっ! と、ご神体の鏡の裏に手を差し入れて、二本の刀を取り出した。


「これ、シュウジ」


 その刀を乱暴に投げると、修二君が楽々と受け取った。


「これ、ユウイチ」


 次にご神体の裏から取り出したのは弓。

ポイっと投げられた弓は、勇一さんが確りと受け取った。

 コージさんは社から戻ると、勇一さんの腕に収まっているヘルメットを手に取った。


「ミワちゃん、トヨちゃんっていう友達に連れて行かれたそうだ。

トヨちゃん、色んなものを引っ付けていてあまり良くない状態だったから、半分ぐらいは祓えたらしい。

で、2人の行き先… 一昨年、廃墟となったN公団地。

あそこ、来月には取り壊しが始まるから、その前の今月末に私が祓う予定で、今日は本契約をするはずだったんだ。

契約前に何かあったら大損になりかねないし、損害賠償なんて話が出てこないとも限らないから、とりあえず契約してきちゃう。

… シュウジ、ユウイチ、俺が行くまで最低限の被害にしてくれよ。

まぁ、命は最優先なのは当たり前だけれど」


 そう言い残して、コージさんは階段下に停めてあったバイクに乗って、疾風(しっぷう)のごとく去ってしまった。


「私達も急がなきゃ!」

「いやいや、ミヨはダメだってば」


 階段を降りようとした私の腕を、勇一さんが強く握って止めた。

同時に、修二君が私に言った。


「コージさんが、こんなん俺に渡したんだぜ?!

それぐらい危ない所、行くんだってば。

ミヨは留守番だろ」


 修二君は、手にしていた日本刀の一本を鞘から抜いて見せた。

濡れているような刀身は怪しく光って、修二君の鋭い目が映り込んでいた。


「ミヨちゃん、修二の言う通り…」

「誰が止めるんですか?」


 三人に止められて、ムッとしてしまった。


「誰が、頭に血の上った修二様とおじ様を、止められるんですか?

勇一様? ハッキリ言って無理です。

コージさん? 合流する前に、お2人が暴れ出す方が早いですよね。

冷静で、きちんと話が出来る人が1人は居ないと駄目ですよ。

私は大丈夫です、勇一様がちゃんと守ってくれますから!!

私だって、美和ちゃんが心配なんです」


 このままお屋敷で待っている事なんて、出来ない。

それに、この三人だけで行かせて、絶対、必要最小限の被害で済むわけがない! と確信していた。

最悪、コージさんのお仕事にマイナスになってしまうという事は、東条グループに損失を与えるという事で… これ以上、勇一さんや修二君の立場を悪くしたくなかった。


「… わかったよ。

絶対、兄さんの側から放れんなよ」


 修二君は面白くなさそうに舌打ちをして、階段を降り始めた。


「後方援護は頼んだ」


 美和ちゃんのお父さんは、苦笑いをして修二君に続いた。


「さ、私の援護は頼みましたよ、勇一様」


 私の腕を掴んだままの勇一さんにウインクして、今度は私が勇一さんの腕をとった。


そして… 


公団の入り口に立って、後悔した。

私も、何か武器になる物を持って来ればよかったと。



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