表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
299/434

その299 春と一緒に来た人

■その299 春と一緒に来た人■


 こんにちは、ワンコのアキ君です。

ボクのご主人様はミタカさんです。

でも、ご主人様は忙しいので、ボクはオウメちゃんのお家に預けられています。

まぁ、預けられているというより、ここも自分のお家だと思っていますよ、ボクは。


 今日、オウメちゃんは朝からお出かけです。

ご主人様とデートで、昨日の夜からモモカちゃんとキャッキャしていましたね。

最近、お家のお掃除やご飯の準備とかは、ほとんどオウメちゃんが頑張ってやっています。

そのオウメちゃんがいない今日は、大学受験が終わったモモカちゃんが頑張ってます。

双子のトウリュウ君とカコ君は、お手伝いです。


「桃ちゃん、おトイレとお風呂のお掃除、終わったよ」

「終了~」


 このお家には2つのお風呂と、4つのおトイレがあります。

ボクのおトイレは、1つです。


「はい、お疲れ様。

後は、お洗濯ものを干せば一段落よ」


 さっきまで、掃除機が大きな音を立てて床を行ったり来たりしてたんですけど、今はモモカちゃんが雑巾でゴシゴシ拭いてます。

床、ピカピカですね。

ボクのお顔が映ってますよ。


「桃ちゃん、僕お腹空いた~」

「僕も。

お昼前に、何か食べたいな」


 カコ君がボクの前でゴロンゴロンと転がります。

ボクもつられて、コロコロコロ。

トウリュウ君も一緒にゴロンゴロン。

あんまりコロコロすると、テレビに当たっちゃいますね。


「お昼、早めに用意してあげるから、お買い物も頑張ってよ」

「「はーい」」

「わん」


 あれ? 誰か来ますよ。

足音が2つ、床から聞こえます。

軽い人と、小さな足音。

お家の誰でもないですけど… この足音、聞いたことありますよ。


「お邪魔します」

「こんにちは」


 足音がどんどん近づいて、リビングのドアが開きました。

大きな荷物を持ったカズミさんと、ナオちゃんです。


「わんわん! わんわん!」


 ボク、ナオちゃん大好き!

尻尾をブンブン振ってナオちゃんの足元でピョンピョン撥ねると、ナオちゃんは優しく抱っこしてくれます。

ナオちゃんの抱っこ、オウメちゃんの次に優しいんです。


 カズミさんはミワさんの妹さんで、ナオちゃんはその娘さん。

オウメちゃん、トウリュウ君とカコ君の叔母さんと従姉妹なんだよって、前に教えてもらいました。


「「和桜(なお)ちゃん~」」


 トウリュウ君とカコ君はビックリです。

ゴロンゴロンしていたのに、パッと起き上がって、ボクみたいに駆け寄ってきました。


「予定より早く着いちゃったんだけれど… ごめんなさい、お邪魔じゃないかしら?」

「こんにちは。

大丈夫ですよ。

お昼はこれから作るので、お手伝いをしてもらえると、助かります」


 モモカちゃんは、和美さんが持っていた大きな荷物を1個受け取ると、リビングを出ようとします。

カズミさんとナオちゃん、今日はお泊りですか?


「もちろん、喜んでお手伝いするわ」

「その前に、お部屋にどうぞ」


 お部屋?

お泊りは、いつもこのリビングにお布団を引いて、皆で寝るんじゃなかったでしたっけ?


「秋君、これからよろしくね」


 よろしく?


「「よろしく?」」

「わんん?」


 ボクもトウリュウ君もカコ君も、首を横に倒しました。


「あ、良かった、桃華ちゃんがいてくれたのね」


 バタバタバタって、お仕事途中のミワさんがお店から上がってきました。

ずいぶん、慌てていますね?


「今、お部屋に荷物を運ぶところ」

「ありがとう、桃華ちゃん。

荷物は修二さんが後で上げてくれるって言うから、お昼の準備をしちゃいましょう。

佐伯君、随分とお腹を空かせているみたいだから」


 言いながら、ミワさんはお店のエプロンを外して、ご飯を作る用のエプロンを付けました。

モモカちゃんも、持っていた荷物を階段のところに置いて、エプロンを付けます。


「私も、お手伝いするわ」


 カズミさんは、持っていた荷物の中からエプロンを取り出しました。


「助かるわ~。

今日、桜雨が三鷹君とデートに行っちゃってて、桃華ちゃんにオンブにダッコだったのよ。

でも、お昼の下準備はしていってくれたみたい」


 ミワさんはパタパタと冷蔵庫を開けて、色々なモノを取り出します。

モモカちゃんは、冷蔵庫から出たモノをどう料理するかカズミさんに伝えて、お洗濯ものを干しに行きました。


「桜雨ちゃん、デートかぁ。

デートなのに、ここまで家の事して行ってくれたの?」


 カズミさんは、モモカちゃんに教えてもらった通り、冷蔵庫から出たモノをフライパンやレンジで調理し始めました。

トウリュウ君とカコ君とナオちゃんは、炬燵(こたつ)の上のお片付けです。


「そうなの。

初めてのデートなんだから、自分の事だけ考えていいのにね。

今朝ね、ちょっと、緊張してたのよ」

「可愛いわ~」


 ミワさんとカズミさん、そっくりな美人姉妹さんですね。

並んでご飯作ってると、オウメちゃんかな?って間違えちゃいそうです。


「和桜ちゃんの学校、もう春休みに入ったの?」

「何回お泊りできるの?」


 トウリュウ君とカコ君とナオちゃんは、大きな炬燵のテーブルを綺麗に拭いて、お箸や小さなお皿を並べ始めます。


 ボク?

ボクはお邪魔にならない様に、炬燵の隅っこで骨をガジガジしてますよ。


「春休みまで、あと1週間ぐらいだから、残りの日数は、ここから通うの」


 ん? ナオちゃん、このお家から学校に行くんですか?

トウリュウ君とカコ君も、お首をかしげてます。


「あ、(とう)(りゅう)()()にはまだ言ってなかったね」


 お顔に『?』が浮かんでいるトウリュウ君とカコ君に、ミワさんがキッチンで笑いながら

教えてくれました。


「和美叔母さんと和桜ちゃんね、今日からこのお家で一緒に暮らすのよ。

正確には、新しいアパートが出来るまでなんだけれどね」

「「えええええー!!」」


 ボクも、ビックリです。


「よろしくね。

冬龍君、夏虎君」


 カズミさん、踊り出した2人には聞こえてないと思いますよ。


「なぁに? そのダンス」

「「喜びの舞」」


 ヘンテコダンスです。

トウリュウ君とカコ君は、手を握り合ってデタラメナなヘンテコダンスを踊っています。


「じゃぁ、私も、喜びの舞~」


 さすが、従姉妹。

ナオちゃんもヘンテコダンスに混ざって踊り始めました。


「わんわん! わん!」


 ボクもボクも!

嬉しい時のヘンテコダンスなら、ボクも踊りますよ~。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ