その213 こんにちは、赤ちゃん・主婦な桜雨ちゃん
■その213 こんにちは、赤ちゃん・主婦な桜雨ちゃん■
お腹は、お母さん達特製のお弁当で満たされて・・・
睡眠不足は、三鷹さんに抱き抱えられて、たっぷりお昼寝で解消して・・・
朝あった目の回りのくすみも、すっかり無くなっていました。
なにより三鷹さんが帰ってきたことに一番安心した主は、部活には出ないでお家に帰ると、元気に家事に取り組みました。
今朝、主と桃華ちゃんが寝坊したので、白川家と東条家のキッチンシンクには洗い物がそのままに、洗濯物もまだ残っていました。
ベランダに干された量をみると、お母さん達、2回は洗濯機を回せたようですね。
主、制服を着替える前に、2台の洗濯機を回しました。
「あ、桜雨ちゃん、お帰りなさい」
着替えてリビングに下りてきたタイミングで、美世さんもグズっている輝君を抱っこして上がってきました。
「ただいま~。
あ、輝君、オムツだね」
美世さんから輝君を受け取ると、慣れた手つきでオムツを変えます。
それを見ながら、美世さんは冷蔵庫からアイスティーのポットを取り出して、グラスに2人分注ぎました。
「龍虎(こ・双子)と秋君に、お買い物頼んだわよ。
朝のチラシに赤丸がしてあったから。
ごめんね、食器洗ってないわ。
今夜は煮干しがメイン?」
次に、輝君のミルクを作り始めました。
「ありがとう、美世さん。
お買い物行かなければ、食器と洗濯をゆっくり出来るから、助かる。
三鷹さん、怪我は酷くないって言うけれど、額の傷もあるから。
煮干しで鉄分補給と、お肉でタンパク質の補給メニューにしようと思って」
お尻がサッパリした輝君は、ご機嫌が治って仰向けのまま主の手にじゃれ始めました。
「三鷹君、出勤したんだって?
出かける後ろ姿を、美和ちゃんが見たみたいよ。
よっぽど早く、桜雨ちゃんに会いたかったのね」
アイスティーの入った二人分のグラスと、輝君の哺乳瓶をローテーブルに置いて、美世さんも主の隣に座りました。
「私も、会いたかったから・・・嬉しかった」
よいしょっと・・・と、寝返りをうった輝君のポッコリお尻をナデナデしながら、主は照れたように微笑みます。
「梅吉、学校でも煩いでしょう?
あの子、本当に結婚できるのかしら?
重度のシスコンよね」
美世さんは溜息をつきながら、アイスティーを飲み始めました。
「・・・多分、大丈夫じゃないかな?
梅吉兄さんの事は、坂本さんがフォローしてくれてるから。
さ、輝君、ご飯ですよ~」
主のお膝の上にコロンと抱っこされた輝君、これからミルクタイムです。
輝君は小さな手で哺乳瓶を抱えて、勢いよく飲んでいきます。
主はそんな輝君のお手伝いで、哺乳瓶を支えてあげています。
とっても優しい笑顔で、輝君を見つめています。
「私達、人脈に恵まれてるわね。
輝君、いっぱい飲んでね」
美世さんは言いながら、ツンツンと輝君のほっぺたを突っつきました。
ミルクでお腹がいっぱいになった輝君は、気持ちよさそうに寝始めました。
その姿を見て、美世さんはお店に戻って、主は溜まった食器を洗い始めました。
洗濯機が終わると、食器洗いをいったん止めて、乾いた洗濯物を取り込んで、洗いたての物を干して・・・
「「ただいま~」」
「わん!」
白川家の食器洗いを済ませて、東条家の食器洗いをしていると、双子君達と秋君が元気よく帰って来ました。
「うにゃぁぁぁぁぁ~」
元気な声に、輝君が起きちゃいました。
「お帰り~。
手洗いとうがい、ちゃんとしてね。
秋君、足、火傷してない?
この時間でも、アスファルト熱いでしょう?」
主が洗い物をしながら声をかけると、双子君達は買い物袋を持ったままサササササーと主の横に来て我先にと手を洗って、洗いたてのコップでうがいをしました。
「冬龍が抱っこしてたから、大丈夫。
秋君、お水飲もう」
「輝君、ただいま~」
夏虎君は秋君のフードボウルにお水を入れてあげると、秋君は勢いよく飲み始めます。
その横を冬龍君はすり抜けて、いつの間にか腹ばいになって泣いている輝君の所に行きました。
いつの間にか、買い物袋は主の足元にありました。
「梅吉兄さん達、今日は少し遅いみたいだから、宿題やっちゃってね」
輝君と遊び始めた双子君達に声をかけながら、主は買い物袋の中身を冷蔵庫にしまい始めました。
食器洗いが終わると、次は乾いた洗濯物をたたみ始めます。
輝君の一人遊びを見守りつつ、双子君達の宿題を見守りつつ・・・
秋君は、ちょっと離れた所でお昼寝です。
お日様が夕日に変わる頃、輝君は泣きだします。
この時間になると、主は夕飯の準備をし始めるので、輝君をじっくりあやしてあげれません。
そんな時は、オンブ紐でオンブしながらキッチンに立ちます。
少し音程の外れた歌をうたいながら、ユラユラ揺れながら。
髪は三つ編みにして、前に垂らしています。
「桜雨、ただいま~。
暑かった~」
夕飯の支度が始まってしばらくすると、桃華ちゃんが学校から帰って来ました。
桃華ちゃんは、双子君達と同じようにキッチンに入って来て主の横で手を洗います。
「「お帰り~」」
宿題が終わった双子君達は、テレビに夢中です。
そんな横でウトウトしていた秋君が、桃華ちゃんのお出迎えをします。
「お帰り、桃ちゃん。
美世さん特製アイスティー、冷蔵庫に入ってるよ。
お風呂も入っちゃう?」
「あー、飲む飲む」
秋君が落ち着くまで撫でた後、桃華ちゃんが冷蔵庫を開けると・・・
「ただいま~・・・暑かった」
「帰りました」
「ただいまー」
「ただいま」
梅吉さん、笠原先生、佐伯君、三鷹さんの順番で、帰って来ました。
「「お帰り~」」
双子君達、相変わらずテレビに夢中です。
秋君は、再び烈々なお出迎え。
「あ、お帰りなさい。
皆、予定より早かったね。
乾いた洗濯物、まだそこに置いてあるから、先にシャワー浴びちゃってください」
皆、料理をしている主の背中にオンブされている輝君を覗こうとしますが、主に先にシャワーと言われて、ゾロゾロとバスルームに向かいます。
そんな一同に、輝君は主の背中から何やらアウアウ声をかけていました。
三鷹さんはバスルームに向かいながらも秋君を抱っこすると、秋君が一生懸命クフクフ言っています。
秋君も、三鷹さんの事を心配してたんですもんね。
一応、飼い主さんですから。
4人はたたまれた洗濯物の中から着替えを取って、代わりに荷物を床に置いて、バスルームに向かいます。
「あ、龍虎(こ・双子)もシャワー浴びちゃいな。
桜雨、これ、サラダに入れる?」
アイスティーを一気飲みした桃華ちゃんが、ササっとエプロンをして、夕飯の準備に加わります。
「ほら、行くよ~」
テレビに夢中な双子君達は、梅吉さんと佐伯君に抱きかかえられて強制的にお風呂タイムです。
「人数居るから、お風呂も2つあると助かるわよね」
桃華ちゃんが、皆が左右のバスルームに分かれて入っていくのを見ながら言います。
あらかた夕飯の準備が終わった頃、いつもより早く美和さんと美世さんがお店から上がってきました。
「2人も、シャワー浴びちゃいなさい」
美世さんに言われて、主と桃華ちゃんは先に空いた白川家のバスルームで汗を流しました。
もちろん、輝君も一緒です。
先に入った三鷹さんと笠原先生は本当にシャワーだけなので、輝君が一番風呂ですね。
「龍虎~。
どっちか来て~」
主と桃華ちゃんと輝君がお風呂に入ってしばらくすると、桃華ちゃんが双子君達を呼びました。
シャワーを浴びた男子組は、ダイニングテーブルで水分補給中です。
梅吉さんと笠原先生は、キンキンに冷えたビール。
三鷹さんは額を縫っているので、佐伯君と双子君達と一緒にオレンジジュースです。
「「どうしたの?」」
双子君達が、そろって向かいます。
少しして、バスルームから戻って来た双子君は、美和さんに大きな声でハキハキと言いました。
「輝君のミルク、昨日より少し多めにして欲しいって」
「輝君、お腹空いてるみたいで、お姉ちゃんのオッパイ吸っちゃったんだって」
「「「「ブーーー!!!!」」」」
梅吉さんも笠原先生も、佐伯君も三鷹さんも、飲んでいたモノを一気に噴き出しました。
そして、咽ました。




