表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
145/434

その145 3年B組は問題児揃い、担当教員も問題教員揃い

■その145 3年B組は問題児揃い、担当教員も問題教員揃い■


 皆さんこんにちは。

桜雨ちゃんの折りたたみ傘の『カエル』です。


 今日は春休み最後の日、クラスはいつも通り賑やかです。

3年生のクラスは2年生のまま持ち上がりなので、グールプで固まって席に座っています。

主達はいつも通り、窓際の後ろの席で固まっていました。

午後からのホームルームで、新しい教科書が配られたり、明日の入学式の説明等があるんですが・・・


「近藤先輩、いつまでいるんですか?

この後、松橋ッチとデートするんでも、ここ(教室)じゃないとこで待ちなよー」


 食後の棒付きキャンディを舐めながら、今日発売の雑誌を見つつ、大森さんが言いました。

クラスがざわついていた理由の一つに、3月に卒業したはずの近藤先輩の姿が、教室にある事でした。

まぁ、卒業するまでは、主のクラスに時間があれば遊びに来ていたので、クラスメイトの皆は顔見知りなんですけれど・・・


「卒業、したよね?」

「大学生が、教室に居る・・・」

「え?何しに来た?」


 と、何気に注目の的でした。

まぁ、ホームルームが始まる前、主達は中庭でお花見ランチを楽しんでいて、そこから近藤先輩は参加していたんですけれどね。

で、皆が気にしていることを、大森さんがズバっと言ったんですが・・・


「ああ、言っていなかったか?」


 近藤先輩のあっけらかんとした声に、クラス中の音がピタっ!と止まって、クラスメイトの耳は近藤先輩に集中しました。


 綺麗に切り揃えられた角刈り頭に、浅黒い四角い顔に乗った大きな目と、存在をこれでもかと強調している黒い眉。

筋のしっかりした大きな鼻と、上下ともに分厚い唇。

体も筋肉質な四角で、白い学ランで更に膨張して見える近藤(こんどう)(たけし)先輩が、野太い声で続けます。


「スポーツ推薦で入学したんで、授業より試合を優先しても今までは差し支えなかったんだが、去年の怪我で単位も点数も足りなくなってな、つまり、留年だ。

スポーツ科では無理だから、このクラスで1年勉強することになった」


 そこまで言うと、近藤先輩は立ち上がって、クラスの皆に聞こえる大きな声であいさつをしました。


「近藤武です。

これから1年、宜しくお願いします」

「はいはいはい、そう言う事なので、皆さんよろしくお願いしますね」


 近藤先輩がお辞儀をしたタイミングで、教室にパンパンパンと手を叩く音が響いて、クラス中が良く知る白衣を着た先生が入ってきました。


「やった!ヨッシー(義人先生)、担任?」

「ウメちゃんは?」


 笠原先生の登場に、クラス中は沸きました。


「笠原せ・ん・せ・い、ですよ。

はい、近藤は着席。

皆さんの予想通り、今年も担任になりました。

最後の一年も、よろしくお願いしますよ。

副担人は皆さんの希望通り・・・」

「今年も、宜しくなー。

資料配るからなー」

「・・・」


 大量のプリントを抱えた、大きな男の人が2人、入ってきました。

ドア側の一番前の席に、ホチキス止めされたプリントの束を3つ置くと、次は隣の席に移動します。


 小顔に、気持ち目じりの下がった甘めな黒い瞳。

乳白色の肌に、たっぷりレイヤーの入ったミディアムロングの茶髪。

バランスの取れた長身を黒のジャージに包んでいるのが、体育教師で去年はバスケ部顧問だった東条(とうじょう)(うめ)(よし)さん、主の従兄で桃華ちゃんのお兄さんです。


 もう一人、梅吉さんに続いて入って来たのは、三鷹さんでした。

やっぱり、両腕でプリントの山を抱えて、三鷹さんと同じように一番前の席に置いていきます。


「ウメちゃん、今年もバスケ部の顧問?

私の妹が女バス入りたいって言っててさー」

「あー、残念。

俺、今年はバスケ部の顧問じゃないのよね。

女バスなら、顧問は三島先生かな?」


 梅吉さん、プリント配りにちょっと苦戦しています。

後ろの三鷹さんもですね。

笠原先生は、黒板に何やら書き出しました。


「えー、残念。

あの先生、バスケ出来るの?

トロそうじゃない?」

「ってか、走る時、あの胸は邪魔だろうなー」

「バスケボールぐらい、あるなー」


 さすが、年頃の男の子です。

数人がニヤニヤしながら、卑猥な手つきで空中をもんでます。

よだれ・・・


「ウメちゃん、やっぱ、三島先生の胸、ブルンブルン?」

「いやいや、俺が答えたらセクハラだから」


 話を振られて、梅吉さん、冷や汗をかきながら、桃華ちゃんと主をチラチラ見ていました。

つられて、男子たちもそっちを向きます。

・・・桃華ちゃんの張り付いた笑顔が、とても怖いです。

その後ろで、主が制服の上から自分の胸に手を当てていました。

ちょっと、ションボリ・・・しています。


「白川っチ、気になるなら、揉んであげるってー」


 そんな主に、大森さんがニマニマと近寄りました。

数人の男の子達は、ごくっと生唾を飲み込んで・・・三鷹さんと梅吉さんにプリントで頭を叩かれていました。


「ハイハイハイ、セクハラはそこまでです。

異性の体の成長が気になるのは、貴方達の年頃では正常ですが、対象とされる人の気持ちをきちんと考えるように。

・・・白川さん、手は膝へ」


 教室を見渡しながら窘めていた笠原先生でしたが、相変わらず主が自分の胸に手を当てているのを見て、ちょっと溜息が出ました。

三鷹さんは、あえて見ない様にしています。


「プリント、行きわたりましたか?

東条先生が配ったものは、保護者の方用です。

水島先生が配ったものが・・・」


 笠原先生、言いながら黒板に体を半分向けて、トントンと指で鳴らしました。


「『修学旅行』の詳細になります。

今日はこれからの時間、修学旅行の説明等になりますので、昼寝はしないように」


 皆、一気にソワソワドキドキしながら、ホチキス止めされたプリントをめくり・・・


『長崎―!!!』


 クラスメイト全員の、息のピッタリ合った絶叫は校舎内を駆け巡り、学年主任の高浜先生が飛んでくるのは時間の問題でした。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ