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その134 春が来ます・・・『桃華17歳』

■その134 春が来ます・・・『桃華17歳』■


 2月18日。

毎年、この日の前後『二十四節気の雨水』に、白川家と東条家のリビングに二人分のお雛様が出されます。


「この日にお雛様を飾ると、良縁に恵まれるのよ」

「水は命の象徴。

豊穣(ほうじょう)や子孫繁栄につながると言われているのよ」


 その言葉は、毎年、一緒に雛人形を飾る娘達に語られます。

美和さんは僕の主の桜雨ちゃんへ、美世さんは主の従姉妹の桃華ちゃんへ、それぞれの娘の雛人形を出しながら、


『今年も災いが降りかかりませんように』

『健康に過ごせますように』

『幸福でありますように』


と、願いを込めています。


 主のお父さんの修二さんが、ローテーブルよりも低くて長細い台を作ってくれたので、毎年その上に飾り付けます。

母娘で一緒に飾ると言っても、七段飾りとかの豪華なものではなく、こじんまりとした二人雛の『親王飾り』です。

それでも、お花、茶器、雪洞、屏風、お菓子といった物もあるので、女子4人は会話を交わしながらゆっくりと飾ります。


 そして、『桃の節句』の3月3日・・・

主の大切な従姉妹の、桃華ちゃんのお誕生日です。

ケーキとかプレゼントとかの盛大なお祝いは、2日後の5日に、主の誕生日と一緒に行います。

小学校中学年ぐらいから、真ん中バースディになりました。

と、いうのも・・・



 3月2日・3日・4日は・・・

下駄箱を開けると、ラブレターが落ちてきます。

教室に行くと、机の上には幾つかのプレゼント。

勇気がある男子や仲のいい友人や先輩後輩は、休み時間や放課後に、直に渡しに来ます。

プレゼントは、仲のいい子からしか受け取りません。

中身は、ちょっとした小物、消耗品、お菓子と、処分に困らない物が大半です。

もちろん、登下校中にも他校の人からもプレゼントを頂きますが、お手紙以外は返却です。

梅吉さんの『シスコンセキュリティー』は、この3日間はだいぶ厳しくなります。

大切な妹の誕生を祝ってくれているので無下には出来ないのですが、過去に変なモノを混ぜ込む人もいたんです。

特に、食べ物。

なので、基本はラブレター。

 5日後の8日に誕生日の主にも、前日の7日から同じ事がおこるので・・・落ち着いている真ん中の5日に、家族でやる風習になりました。

 もちろん、朝の挨拶は『お誕生日おめでとう』ですけれど。


 なので、3月3日の夕飯は、『桃の節句』のご馳走が並びます。

両家の母娘が楽しそうに作るのを、双子君達や梅吉さんがお手伝いです。

今年は、笠原先生や佐伯君も居るので大助かりです。


「桃華姉さん」


 この日は、主は桃華ちゃんをこう呼びます。


「なあに?桜雨ちゃん」


 そして、桃華ちゃんはわざと、にこやかに返事をします。

たった5日間の1歳差です。



 賑やかな夕飯が終わると、片付けは男性陣のお仕事です。

女性陣は、ゆっくりと食後のデザートやお酒を堪能しました。

 今年のデザートは雛祭りカラーのプリンで、お砂糖の代わりに甘酒を使いました。

一番下の『緑』は抹茶。

真ん中の『白』は豆乳。

一番上の『ピンク』は苺。


「この時季は、気を抜くと太っちゃうわ」


 美世さんと美和さんが、日本酒に桃の花を浮かべた『(とう)()(しゅ)』を楽しんでいる頃、主と桃華ちゃんは仲良くお風呂です。

今日は、白川家のお風呂ですね。


「本当~」


 今夜のお湯は、よもぎ汁が入った『よもぎ湯』です。

主と桃華ちゃんは、湯気と一緒に立ち昇るよもぎの爽やかな香りを堪能しながら、気持ちよさそうに腕や(ふくら)(はぎ)をモミモミ・・・


「今年も、いっぱい貰ったね」

「半分以上、兄さんが返してくれたから、殆ど手紙ですんだけれど・・・

いつも思うんだけれど、想いを伝えたいのに名前を書かないって、桜雨はどう思う?


僕はこんなに貴女を思っているんです!

この気持ちを知ってくれるだけでいいんです!


・・・で、貴方は何処(どこ)何方(どなた)

一方的に気持ちをぶつけて、貴方は納得するかもしれないけれど、ぶつけられた私は?

顔も名前も分からない人に、好意を持って見られてるって分かっちゃった私の気持ちは?

ハッキリ言って、気持ち悪い。

その一言しかないわ」

「でも、中先輩みたいに、行動に出られても困るわ~。

それなら、手紙で終わってくれた方がいいな。

桃華姉さんの言うように、良い気持ちはしないけれど。

・・・桃華姉さん、胸、大きくなった?」


 主の視線が、桃華ちゃんの胸に釘付けです。


「あら、成長期だもの。

桜雨ちゃんだって、少しは成長・・・してないか」


 桃華ちゃん、主の胸を見て、言葉尻かメチャクチャ小声になりました。


「・・・やっぱり?」


 シュン・・・とした主の胸を、桃華ちゃんは鷲掴みにしました。

出来るだけ、優しくですが。


「きゃっ!桃ちゃん!!」

「揉んでもらったら大きくなるって、大森さんが言ってたわよ」

「じゃぁ、自分で揉むー」


 バスタブの中のお湯がバシャバシャ音を立てる程、主と桃華ちゃんはふざけ合ってから、お互いの体や髪を洗いっこしました。


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