その101 転校生は問題児・彼の現状は実はピンチでした
■その101 転校生は問題児・彼の現状は実はピンチでした■
目の前で授業をする水島先生は、すんごーく落ち着いた声で授業を進めてる。
水島先生だけじゃなくって、笠原先生も東条先生も・・・先生達の寝起きの悪さは、嘘みたいだ。
テスト直前だから、教室も殺気立ってんなぁ・・・
特に、水島先生は声が小さいから、余計な音一つでも立ったら、そっち睨むんだもんな。
・・・大人しくしとこ~。
「佐伯、ここの年号」
「あ、はい・・・」
不意打ちだ。
でも、昨日やったな。
確か・・・
「えっと・・・1732年」
「正解。
この年で、イギリスの13植民地が全て揃ったことになる」
おお、当たった。
初めてかもしんねー。
なんて喜んでたら、意外と授業が面白かったし、時間が直ぐに過ぎてた。
水島先生の声が小さいから、集中して聞かないといけないから、授業終わったらメチャクチャ疲れてたけどな。
そんな疲れは、白川と東条が作ってくれた弁当が吹っ飛ばしてくれた。
教室で食ってたやつら皆、勉強しながら食べてたから、叫びそうになったの抑えたけど。
マジ、美味い!!
メチャクチャ、美味い!
あんな美味い弁当、初めて食べた。
作ってるとこ見てなかったら、買って来たモノかと思うぐらいだ。
その後の授業は、やっぱりあんまし頭に入んなかったけど、笠原先生の化学は何となくわかった・・・かも?
「では、今日はここまで。
週明けから学期末が始まりますから、体調管理に気を付けてください。
あと、学級委員長二人と田中さん、佐伯君はちょっと来てください」
授業が終わったと思ったら、呼び出しだ。
クラスの奴らが掃除をしているのを横目に、俺たちは廊下で立ち話だ。
「委員長と田中さん、学期末の準備はいかがですか?余裕?塾はありますか?」
「先生、私、まだ余裕ありません。
塾もあるし・・・この土日で、追い込むつもりで・・・」
笠原先生が聞くと、髪の長い眼鏡の子が答えた。
「了解です。
睡眠と栄養は確り取ってくださいね。
あ、掃除に合流していいですよ、ありがとうございました」
笠原先生に言われて、一人、いなくなった。
残るは、俺より身長あるショートカットの眼鏡の女子と、ヘルメットみたいな頭の、いかにも勉強できます!って感じの男。
あ、コイツ、この前、俺が何とか先生を殴ろうとした時、止めに入ってくれた奴だ。
見かけによらず、ガッツはあるんだな。
「さて・・・お二人の現状の成績も、志望校の合格ラインは余裕でしたね。
学期末の対策も大丈夫でしたら、この佐伯君に勉強を教えてあげてくれませんか?
この土日の数時間でいいです。
長時間やったところで、頭に入るのは、たかが知れているでしょうから」
は?俺、聞いてないけど?
「いいですよ。
人に教えるのも、勉強になりますから」
委員長、そんな簡単にOKしちゃっていいの?
俺、自慢じゃないけど、けっこう馬鹿だぜ?!
「そうですね。
自分がちゃんと理解していないと、他人に教えられませんから。
確認の意味で、いい勉強法ですね」
・・・ああ、そう言う事なんだ。
「佐伯君、我が校は、バイトは許可されていますが、中間や期末といった成績に直結するテストで2科目以上赤点を取ったら、バイト禁止となります。
貴方の現状は・・・2科目ぐらいギリギリ赤点を免れるかも、といったところです「
お、2科目は少しはまともな点数とれそうなのか。
何だろう?
1つは保健体育だな。
あとは何だ?
「つまり、ピンチです。
このままですと、バイト許可が下りません。
まぁ、隠れてしている生徒もいますが、貴方の『未成年後見人』はどなたですか?
そう、東条先生ですね。
貴方が赤点を山のように取って、しかもバイトまでして・・・貴方も怒られますが、東条先生も怒られた上に始末書を書くでしょうね」
勉強しなきゃ、バイトが出来ない。
バイトが出来ないと、好きなモノ買えない・・・じゃぁ、スマホ代払えねーじゃんか!
「分かりました。
場所は?図書室でいいですか?」
「私も、OKです」
こうして、俺の土日は勉強漬けの二日間と決まった。
ってか、今日からだってさー!




