不思議な箱
定期的な採血はとっくに慣れたけれども、もう一つ定期的に行われることで不思議なものがあった。
それが”箱に入る”ものだった。
それは毎回決まって夜に行われた。
一番初めは、ここにきた当日にやった。
全員が大きな小部屋に移動させられて、一瞬のうちに電気を消された。
命の終わりだと思った。
全員が自身の最後を覚悟した。
しかししばらくして電気は再度つけられた。
その間は一瞬だったけれども、唸るような電気の流れる音や何か紐が勢いよく巻きつく音は今でも忘れられない。
耳に心地よいものでは全くなかった。
それが何回か行われて、そのあとは個別に部屋に入るようになった。
トイレのように一定の間隔で並んだ小部屋がずらりと並んであって、それぞれ一人ずつその箱に入る。
中は薄い茶色で窓も何もない。
のっぺりとした壁があるだけだ。
ただでさえ謎ばかりの部屋に閉じ込められる恐怖があるのに、さらに扉が自動的に閉まり、縦に横に回転を始めた時は本当にこの世の終わりかと思った。
隣からはもちろん他のこどもたちの絶叫が聞こえる。
他のこどもたちも同じように恐怖を感じているようだった。
当然ボクも恐怖はあったけれどもそこはぐっと我慢して声を殺した。
声を出したら、向こうの思うつぼだと思ったから。
中には楽しんでいるような声を上げるものもいた。
長い手袋をしている女の子と体にタトゥーを入れている髪がツンツンの男の子だ。
あとは声を上げていないのか、何も感じてていないのか分からなかった。
特に詳細な説明もなく四方八方に揺らされ、ボクは具合が悪くなった。
そんなことも回数を重ねればなんのこともない。
トイレに行くような感覚にまでなり、ただの通過儀礼になった。
ミヒリエという幼女とガイファという巨体が何を考えているのかは全く分からなかった。
行ってはいけないと言われてたガイファの仕事部屋も気になる。
ダメと言われれば気になってしまうのが性である。
いつか、ルルと行ってみて身良いかも知れない。
ただ、何か行動に移すにはまだ時間が必要だ。
もう少し向こうの味方を見たい。
自分の身の安全を守るためにも。
こうして不思議ながらも平和な日々は続いていった。
ある日までは。