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”こどもたち”と謎の館

「わぁ〜。とってもいい天気!」

燦々と降り注ぐ太陽の光に手をかざし、眩しそうに、愛おしそうに空を見上げる少女。

連日の雨はすっかりどこかにいってしましった。

庭に点々とある水たまりを避けながらミヒリエは、そばにあったボロボロのバケツを持って、井戸に向かった。

「こんなにいい天気だから、溜まってた仕事をたくさんやらないとね」

使い古されたロープをバケツの取手に括り付けて、石でできた井戸の中に勢いよくバケツを投げる。

ジャポン、と音がして、近くにいた小鳥たちが驚いて飛んで行った。

「まずはお部屋のお掃除をして、作り置きのご飯も用意して、書斎のたくさんの書類と本も片付けないと。まったく、ガイファさんったら、出したものは出しっぱなしで、どんどん物が増えてくのよね。実験室だって、あ〜仕事がいっぱい!何から片付けようかな」

文句は言いつつも、鼻歌を歌いながら、ミヒリエは水をたっぷりと張ったバケツを井戸から上げた。

お気に入りのクリーム色のエプロンは、いつも彼女を元気にさせる。

同居人で、この屋敷の主人であるガイファからもらった初めてのものだった。

クリーム色の下に履いているピンク色のスカートをひらひらとはためかせながら、館に戻った。

道中、門の前に一台の馬車が止まっているのが見えた。

馬車に括られている馬はいつも元気がなさそうに、悲しそうな瞳でこちらを見てくる。

一体どんな旅をしてきたのだろうか。

馬車の後ろには荷台があって、こげ茶の車体は馬よりも一層悲しそうな雰囲気を醸し出していた。

「あ」

ミヒリエは何かを思い出したようだった。

「今日は、そうだ。”受け入れの日”だった。」

こんな大切な日を忘れてしまうなんて、私ったらだめだ。

ガイファさんを困らせてしまう。

両手で持っていたバケツを道の脇に避けて、たくさんの色とりどりな花たちに囲まれた緑豊かな庭を抜けて、石畳を走って行った。

ここは村の奥にある古い館。

門は高く岩を切り取って作られた豪勢な佇まいである。

白を基調とした館の壁の周りには、蔦が豊に茂っており、館の後ろにある森の緑と絶妙なまでに一体化している。

どんな貴族が住んでいるのか、と聴きたくなるほど、庭は小綺麗に手入れされており、館の庭にはお茶を楽しめるようなお洒落なテーブルと椅子まで用意されている。

館もそうだが、庭の広さも相当なもので、小川が流れていたり、鶏が飼われていたり、大きなバラ園まである。

全ての手入れは、小柄なミヒリエが毎日楽しんで行っている。

家主のガイファは、まったく関与していない。

日々、何をしているかというと、”研究”とミヒリエは呼んでいる。

”呼んでいる”というのは、正確にガイファがそう言っているわけでは無いからだ。

でも、ミヒリエは特にガイファが何をしていても気にしてはいない。

彼女にとって大切なことは、”ガイファのそばにいること”だから。

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