表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
旭光の新世紀〜日本皇国物語〜  作者: 僕突全卯
第4章 宇宙戦争篇
71/103

アルテミス・月軌道上の戦い 弍

2199年7月21日 月軌道


 無音の宇宙空間にいくつもの閃光が輝く。後に人類史上最大規模の宇宙戦闘と語られる戦いがついに始まった。


・・・


<国際連邦宇宙軍月面方面派遣部隊>

司令 峰岡凛(日本皇国宇宙軍中将)

旗艦 宇宙巡洋艦「古鷹」


構成 宇宙戦闘艦 53隻

   宇宙戦闘機 139機


<宇宙漂流連合軍 第1次地球圏攻撃艦隊>

司令 ウィッテ=シン・カルガイー中将 

旗艦 宇宙戦艦「グリンディッツ」


構成 女王府親衛隊 宇宙戦闘艦43隻 宇宙航空母艦4隻

   第1艦隊 宇宙戦闘艦51隻 宇宙航空母艦3隻

   第4艦隊 宇宙戦闘艦54隻 宇宙航空母艦3隻


・・・


 月面方面派遣部隊は、世界の列強からかき集められた宇宙軍によって再編成・強化されていた。22世紀末の科学力を結集した艦隊が、最強の敵へと挑む。


『主砲発射!』

『宇宙駆逐艦『夕雲』、撃ちぃ方始め!』


 静寂の宇宙空間に幾筋もの光が交錯する。地球側が放つ高出力レーザー砲、そして連合側が放つ荷電粒子ビームが飛び交っていた。だがその戦闘は一方的なものであり、地球側の攻撃はバリアに阻まれながら、連合の荷電粒子ビームは地球側の艦艇を次々と轟沈させていく。


「・・・っ!!」


 月面方面派遣部隊の旗艦「古鷹」に乗艦していた峰岡中将は、皇国の御船が次々と閃光を放ち、漆黒の闇に沈んでいく様に直面して、目を逸らさずにはいられなかった。


『・・・こちら宇宙巡洋艦『常盤』! 主機大破し航行不能! 至急救援を・・・ザザッ!』

『駆逐艦『野風』、通信途絶! 艦艇反応の消失を確認・・・!』

『こちら駆逐艦『五月雨』! 戦闘不能につき撤退を・・・ギャアアア!!』


 通信を介して、味方の艦艇からの阿鼻叫喚が次々と聞こえてくる。そして敵の無人戦闘機に翻弄される友軍機の反応も、1つ、また1つとレーダーから消えていく。

 仲間たちの叫びが、散りゆく艦の姿が、兵士たちの士気を奪っていく。そしてついに、敵の魔の手はこの旗艦にも迫って来ていた。目の前に閃光が光ったかと思うと、古鷹の第1砲塔が吹き飛んだ。


「第1砲塔被弾!」


 遥か彼方から繰り出された無音の攻撃によって、主兵装の1つが吹き飛ばされた。宇宙戦闘艦としては最新鋭の艦級である「古鷹型」をしても、連合の科学力の前では、全く無力であった。兵士たちは旗艦の沈没と死を覚悟する。直後、無数の無人戦闘機が古鷹に迫ってきた。


「・・・!」


 当然、近接防御用のレーザー砲が敵機を追尾しているが、敵のバリアはそれらの攻撃を何なく跳ね返す。峰岡中将は思わず目を瞑ってしまう。他の兵士たちも一斉に顔を青ざめ、誰しもが絶体絶命と思っていた。だがその時、古鷹に装備されているものとは桁違いの出力を誇る「高エネルギーレーザー」が背後から放たれ、敵機のバリアと突破してそれらを撃墜した。


「・・・!?」


 無数の破片が古鷹の艦体にぶつかる音がする。その直後、艦のレーダーが後方から迫る巨大な艦影を捉えていた。地球の方角から一筋の光が迫り、それはあっという間に古鷹を追い抜いていく。


「あれは・・・『扶桑』?」


 峰岡中将は第1艦橋の窓越しに、その艦の姿を呆然と見上げていた。全長500メートルを超える巨体が、古鷹の頭上を超えて敵艦隊へと向かって行った。




飛行戦艦「扶桑」 第1艦橋


 飛行戦艦「扶桑」の両舷側面に設置されている「40口径10.5cmパルスレーザー砲」から、敵の無人戦闘機に向かって放たれた高エネルギーレーザーは、22世紀の地球で兵器として実用化されている高エネルギーレーザーのおよそ10万倍を超える出力を誇っていた。


「奇襲成功! 敵機12機撃墜!」

「古鷹の被害は第1砲塔のみの模様」


 砲雷長を勤める伊東淳彦中佐が攻撃成功の一報を入れる。続けて別の隊員が古鷹の被害状況を伝えた。28世紀の高エネルギーレーザーは、無人戦闘機のバリアと装甲を文字通り一瞬のうちに貫いていた。


「11時の方向に敵艦3隻!」

「第1、第2砲塔、発射用意!」

「測的完了、誤差修正! 発射準備完了! 弾種は“中性粒子ビーム”!」

「加速器稼働良好! 問題無し!」


 艦前方に配置された連装主砲が敵の無人宇宙戦闘艦を目標に捉える。


「・・・撃ちぃ方始め!」


 伊東中佐の号令と共に砲術士が発射ボタンを一斉に押し込む。直後、加速器から原子核と電子が混ぜ合わされた中性粒子ビームが発射され、それらは一直線に敵艦へと飛んでいく。そしてバリアに衝突した亜光速の粒子は、膨大な熱を放ちながらバリアを崩壊させ、そしてついに待望の時がやって来る。


「バリア突破! 敵艦に命中!」

「よっしゃあ!」


 艦橋の兵士たちは思わずガッツポーズをしてしまう。地球の兵器が初めて宇宙漂流連合の敵を撃ち落とした瞬間だった。だが艦長の芝蔵大佐は表情を一切変えず、敵がうようよ蠢く宇宙を見つめていた。


「主砲、副砲、全砲門を開け! 『扶桑』の全火力を以て敵を撃滅せよ!」


 芝蔵大佐は本気の火力を投じる様に指示する。地球上では決して日の目を見ることのない、扶桑の全力がついに発揮される時が来た。


「11時、3時、7時の方向に敵艦隊!」

「目標捕捉! 撃てっ!!」


 扶桑は探知した敵艦を手当たり次第に攻撃していく。そして敵の放つビーム砲を錐揉み回転しながら回避し、敵の奥深くまで突き進んで行く。


「艦載機発進! UF-1、UF-2出撃!」

「了解!」


 芝蔵大佐は続けて艦載機の出撃を命じた。命令を受けた兵士たちは慌ただしく動いていく。




飛行戦艦「扶桑」 艦後部 艦載機格納庫


 現在の日本皇国宇宙軍は4種の宇宙戦闘機を保有している。

 1つは「UF-3・ユニバースゼロ」、飛行戦艦「扶桑」の艦載戦闘機に使用されている28世紀の技術を元にして開発され、2076年に採用された機体であり、現在は他国にも輸出している。そしてその後継機が「UF-4・シューティングスター」、2160年に制式採用され、現在のところ地球における最新鋭の宇宙戦闘機であった。


 これらの機体のナンバリングが「3」からスタートするのは、28世紀からもたらされた既存の「発掘兵器」に1と2の制式名称が付与されたからである。それは「UF-1・ゼロファイター」と「UF/I-2・サンダーボルト」、テラルスで発見された飛行戦艦「扶桑」の艦載戦闘機に制式名称を付与したもので、前者が艦上戦闘攻撃機、後者が艦上邀撃戦闘機である。


 28世紀に開発されたこれらの機体は、22世紀における最新鋭機である「UF-4・シューティングスター」の性能を遥かに上回るものであった。それは速度然り、搭載されているレーザー砲も然りである。


『パイロットは直ちにコックピットへ搭乗し、キャノピーを閉じてください。整備員は速やかに外界接続区画から退避してください。15秒後に格納庫を開放します』


 アナウンスに従い、飛行科の整備員たちが瞬く間に格納庫から退散する。15秒後、格納庫内の与圧が解除され、宇宙空間へとつながる扉が開かれた。


『1号機を射出カタパルトに接続。発射スタンバイ!』

「コスモ1、東郷俊亨中尉。出る!」

『カタパルト射出! ・・・ご武運を』


 女性のオペレーターが東郷中尉へメッセージを送る。直後、彼が搭乗したUF-1・ゼロファイターが宇宙へと射出された。その後も次々とレール式カタパルトによって艦載機が射出され、18機のUF-1・ゼロファイター、14機のUF/I-2・サンダーボルトが宇宙空間へと放たれた。




 戦場には数多の敵戦闘機が飛び交っており、友軍の戦闘機や宇宙艦艇を襲撃している。敵機もそれぞれがバリアで守られており、地球側の攻撃は通じていなかった。

 そして今、3機の敵機が旗艦「古鷹」に接近していた。隊長機を駆る東郷中尉は部下たちを引き連れながら、旗艦の救援に向かう。


『コスモ部隊続け、V字隊型で行く!』

『コスモ3追随!』

『コスモ1、発射(FOX3)!』

『コスモ12、発射(FOX3)!』


 複数のUF-1・ゼロファイターが高エネルギーレーザーを発射する。22世紀の宇宙戦闘機とは比較にならない出力のレーザーが、敵機に向かっていく。


「!?」


 1発目のレーザーが弾かれ、バリアが露わになる。直後、2発目と3発目も弾かれるが、4発目のレーザーがようやく敵機本体に到達する。そして堅牢な外殻を穿ち、爆炎を放ちながら漆黒の宇宙に沈んでいく。


『何て硬さだ・・・!』

『だが攻撃は通じた! 我々は敵戦闘機の殲滅に集中する!』


 扶桑の戦闘機部隊は敵無人戦闘機の殲滅に集中する。攻撃は通るものの、彼方が数発耐えるのに対して、此方は一撃でも攻撃を受ければアウトだ。パイロットたちは極限まで集中力を高めていた。




第1艦隊 旗艦「レムナー」


 第1次地球圏攻撃艦隊に参加している艦隊の1つ、第1艦隊の旗艦「レムナー」では、カリアン人の司令、カボン・ヤ・デフール中将が「扶桑出現」の報告を受けていた。


「あれがチキュウの最後の手か・・・」


 第1艦橋のメインスクリーンには、無人戦闘艦が写す扶桑の姿があった。扶桑は出鱈目に回転しながら、6つの主砲を乱射して宇宙を突き進んでいる。


「・・・あの艦は沈めるな。そして女王府親衛隊旗艦『グリンディッツ』まで誘導しろ」


 カボンは新たな命令を出す。その顔には邪悪な笑みが浮かんでいた。




宇宙漂流連合女王府親衛隊 旗艦「グリンディッツ」


 一方、扶桑についての前情報を知らされていなかった「女王府親衛隊」では、地球の科学力を逸脱した兵器の登場に動揺していた。


「・・・何だあの艦は!?」

「分かりません・・・! 事前に把握していたチキュウの科学力を遥かに凌駕しています!」


 地球の軍は連合の艦隊に対して全くの無力の筈であった。だが、突如として目の前に現れた艦は、連合の艦のバリアを突破する攻撃を繰り出し、味方の艦を撃ち沈めながら真っ直ぐにこの旗艦へと向かっている。

 さらにどういうわけか、カリアン人が指揮する連合第1艦隊と第4艦隊の砲撃はその艦に当たらず、敵はどんどんと此方に近づいてくる。


「・・・くっ!! 役立たずのカリアン共め!」


 女王府親衛隊の司令、ウィッテ=シン・カルガイー中将は冷静さを失い、カリアン人への罵倒を口にする。


「何をしている! ・・・本艦も直ちに攻撃開始! 撃って撃って、あの艦をすぐに沈めなさい!」

「は、はい!」


 地球侵攻艦隊総司令の命令を受けて、今まで余裕を保っていた「グリンディッツ」の砲塔が急激に回り始める。

 だがその時、予想だにしない悲劇が彼女たちを襲った。


「・・・火器管制装置沈黙! ビーム砲発射できません!」


 アクシデント発生のアラートが艦橋に響き渡る。突如として「グリンディッツ」は攻撃不能の状態に陥った。


「何だと!?」


 ウィッテはさらなる叫び声を上げる。その直後、謎の敵艦から粒子ビーム砲が放たれた。


「・・・うわっ!」


 その青白い閃光を受けて、「グリンディッツ」の兵士たちはたまらず目をつぶる。バリアによって弾かれたそれは、数万度の高温を発していた。さらに第2射撃、第3射撃と攻撃が加わり、原子レベルで破壊された「グリンディッツ」のバリアはついに崩壊する。


「バ、バカなァアアッ!!」


 それがウィッテの最期の言葉となる。宇宙漂流連合軍女王府親衛隊、並びに第1次地球圏攻撃艦隊の旗艦「グリンディッツ」は、地球の最後の切り札「扶桑」の捨て身の攻撃によって、月軌道上に沈んだのである。




飛行戦艦「扶桑」 第1艦橋


 決死の覚悟で突き進む「扶桑」は、まさしく我武者羅に宇宙を突き進んでいた。沈めた敵艦はすでに30を超えている。


「ハァ、ハァ・・・!」


 手動運転で扶桑を操る航海長の遠藤健一中佐は、冷や汗で制服を濡らしながら操縦桿を握っている。彼らは敵の旗艦を撃ち沈めたことを認識してすらいなかった。




第1艦隊 旗艦「レムナー」


 旗艦轟沈の知らせは、連合第1艦隊の旗艦「レムナー」にも直ちに届けられる。それを聞いた瞬間、カリアン人の司令、カボン・ヤ・デフール中将はほくそ笑んだ。そして戦死した総司令に代わり、全艦隊に向かって次なる指示を出す。


「宇宙漂流連合母艦へ伝達! 旗艦轟沈の異常事態につき、この第1次地球圏攻撃艦隊は一時撤退し、木星(ズープ)に派遣された第2艦隊、土星(サターナス)に派遣された第3艦隊との合流を待つと・・・そう伝えろ!」

「・・・はっ!」


 扶桑によって屠られ、戦死したウィッテに代わって、カボンが撤退命令を下す。旗艦を失ったことで、残存の女王府親衛隊は指揮系統が第1艦隊旗艦へ自動的に移され、各艦は攻撃を停止してその艦首を反転させていく。


「・・・だが、このままチキュウ人に良い思いだけをさせるのは癪に障る。・・・よし、当艦隊に属する無人戦闘機第12・13飛行隊をチキュウへ向かわせろ。このジェリカ恒星系の“首都”に一撃を加え、チキュウ人への最終通告とするのだ」

「・・・了解!」


 カボンの新たな命令を受けて、一部の無人戦闘機がその動きを変化させる。宇宙漂流連合軍第1艦隊所属・第12・13飛行隊、合計118機の無人戦闘機が地球へ進路を向ける。




 敵の一部が動きを変えたことは、地球側も察知していた。UF-1・ゼロファイターの隊長機を駆る東郷中尉は、操縦桿を旋回させて追撃を試みる。


『敵機の一部が地球へ進路を取った! コスモ部隊は直ちに追撃せよ!』

了解(Copy)!』


 東郷中尉は部下たちを引き連れ、地球へ向かった敵機の追撃を開始する。だがスピードの差は歴然であり、全く追いかけることが出来ない。本気の加速を見せた連合の戦闘機に対しては、28世紀の技術力でも及ばなかったのだ。


〜〜〜


地球 日本皇国 東京都新宿区 上空


 地球側の監視レーダーを嘲笑い、それらが全く反応できない速度で大気圏に突入する。そして地上に向かって無造作に高エネルギーのパルスレーザー、そして無数のミサイルが放たれた。


ド ド ド ド ド!!


 まず第一に「国防省市ヶ谷庁舎」が襲撃される。敷地内に展開していた地対空超音速ミサイルシステムも、その日の目を見ないまま破壊された。


「キャアアア!!」


 崩壊する市ヶ谷庁舎から断末魔が上がる。無慈悲な攻撃に晒された市ヶ谷庁舎は、瞬く間に炎に包まれ、そして崩壊した。

 攻撃は東京都庁、警察庁、警視庁、さらにその他の中央省庁を容赦なく襲う。それだけでなく、その周囲にある民間施設も攻撃を受け、炎上・崩壊していく。その様相は正しく、22世紀末に甦った“空襲”であった。


 都内にアラートが鳴り響き、急速な避難を促すアナウンスがテレビ、ネット、SNSで流れてくる。全ての都民が恐怖に囚われ、そして涙する。

 周辺の基地から皇国空軍の戦闘機が出撃していたが、その性能差に圧倒され、まるで小蠅の様に瞬く間に叩き落とされてしまった。墜落した機体が地上に落下し、さらなる破壊の連鎖が降りかかる。




東京都福生市 横田飛行場周辺


 攻撃は東京23区にとどまらず、横須賀、入間、百里など、関東地方における日本の軍事拠点に対して行われた。

 横須賀皇国海軍施設に停泊していた空母、軍艦は轟沈し、港湾施設は周囲の市街地ごと破壊された。炎上する基地が東京湾の水面に赤く反射する。そして厚木基地や百里基地の滑走路も、駐機されていた空軍戦闘機諸共悉く破壊されてしまったのである。


 そして空襲の魔の手が迫ったのはこの横田基地も同じであった。街中に緊急事態を知らせるアラートが鳴り響く。あっと言う間に炎上する横田基地を目の当たりにして、人々は際限ない恐怖へと落とされる。


 そして攻撃は周辺の市街地にも及んだ。横田飛行場の西側、福生市の市街地にも乱雑な攻撃が及ぶ。レーザーによる機銃掃射に晒された家屋やビルが崩壊していく。

 そして今、街には避難に遅れた雑踏が、まるで蜘蛛の子の様に無秩序な逃避を繰り広げていた。その中には東郷中尉の家族、妻の優香と息子の大輝の姿があった。


「お母さん! 何で宇宙人が地球まで攻めて来たの!? お父さんは負けたの!?」

「・・・っ!」


 皇国宇宙軍のパイロットである父親が、現在交戦中である筈の敵が地球に到達した事実、それは2人の脳裏に最悪の事態を想起させる。優香は息子の問いかけに答えることができず、ただ彼の右手を強く握り、その他の人波と共に走り続ける。

 その時、連合の無人戦闘機がミサイルを発射する。それは市街地にあるマンションに直撃し、その崩落を招いた。大量の瓦礫が砂埃を巻き上げながら、地上で逃げ惑う人々に襲いかかる。


「・・・キャアアアアッ!!」


 それは2人の母子にも容赦なく襲いかかった。数多の断末魔が虚空に響き渡り、そして一斉に沈黙する。




 UF-1・ゼロファイターの隊長機を駆る東郷中尉、そして彼の部下たちが地球へたどり着いたのは、すでに攻撃が全て終わった後のことだった。東郷中尉は炎上する福生市を目の当たりにして、絶望に苛まれる。


(・・・まさか、まさか!!? いや、頼む・・・無事でいてくれ! 優香、大輝・・・!)


 彼はこの地に残していた妻子の無事を祈っていた。その直後、彼の両隣を飛んでいた2機のUF-1が突如として撃墜される。


「・・・コスモ5! コスモ9! ・・・くっ!」


 東郷は辛うじて回避行動を取り、撃墜は免れたが、関東地方を一頻り荒らし回った敵戦闘機の群れは、再び宇宙へと機首を向けていた。


「・・・逃がすか!!」


 東郷もすぐさま彼らを追いかけ、宇宙へと機体を反転させる。だが、その速度差故、瞬く間に引き離されてしまった。

 斯くしてこの日、日本の首都とその防衛拠点は、第2次世界大戦以来の大打撃を被ることとなったのである。


〜〜〜


宇宙漂流連合第1艦隊 旗艦「レムナー」


 敵主要拠点への奇襲成功は、すぐさま新たな艦隊旗艦である「レムナー」、そしてカリアン人の司令、カボン・ヤ・デフール中将のもとへ届けられる。第1艦橋のメインスクリーンには炎上する東京の姿が映し出されていた。


「・・・フン、呆気ないものだな。チキュウの首都と言えども、我々の科学力の前には防衛網など無に等しい」


 カボンは満足そうな笑みを浮かべる。“女王府親衛隊の掌握”と“地球への奇襲攻撃”、今回の侵攻における目的を2つとも無事に達成できたからだ。

 一時撤退後、地球への第2次侵攻に当たって、女王府親衛隊の新司令、すなわち地球侵攻の新たな統括指揮者を選出する手筈になっている。そしてそれは、連合行政部をカリアン人の首相であるガンヴォが掌握している以上、カリアン人が選出されることが自明であった。


「・・・旗艦沈没という予期せぬ事態を受け、これから我々は一時地球重力圏から撤退する! そして第2次侵攻が決定されたその時が、我々が新たな故郷を手に入れる歴史的な瞬間となる・・・!」


 遥か1000年以上前、核戦争で滅びた星「カリアン」・・・その末裔である彼らにとっても、新たな母星を得ることは遥か太古から続く悲願であった。

 さらに女王不在という千載一遇の好機を利用し、連合の行政主導権をキリエから奪取することに成功した。さらに今回の一件で、軍事についても完全にカリアンの手中に収まることとなる。面倒な過程を経つつも、その瞬間を間近に迎えたことに、カボンは興奮しつつあった。




月面方面派遣部隊の旗艦「古鷹」


 連合の艦隊が艦首を転換させて月軌道から撤退していく。その様子は度重なる砲撃でほとんど戦闘能力を失った、月面方面派遣部隊の旗艦「古鷹」のレーダーにも捉えられていた。


「敵艦隊撤退!」

「地球に向かった敵戦闘機群も撤退を開始した模様!」


 死に体となった旗艦の中で、日本皇国宇宙軍の兵士たちは現状把握に勤しむ。そして生き残った艦からの通信が徐々に回復していく。


「地球の被害状況は!?」

「国連からの正式な通達なく、詳細不明です」

「・・・っ!」


 峰岡中将は祖国・日本の無事を祈るばかりであった。他の兵士たちの顔も一様に暗い。


 その後、月面の首都・竹取から救助のための宇宙輸送艇が接近してくる。輸送艇の後方ハッチが開き、宇宙空間での精密活動用の有人操縦型アンドロイド「機能拡張型宇宙アーマー」が降りてくる。彼らは生存者を捜索し、次々と宇宙船間輸送用の密封タンカ内に収容していく。


 全世界からかき集められた宇宙戦闘艦53隻、宇宙戦闘機139機からなる月面方面派遣部隊、通称・アルテミス艦隊は、旗艦「古鷹」以下5隻の戦闘艦と7機の戦闘機を残して壊滅した。

 途中から出撃し、敵旗艦撃沈という戦果を上げた扶桑も無傷では済まず、2基の主砲塔と1基の副砲、いくつかのパルスレーザー砲が被弾し、32機の所属戦闘機については、その半数近い14機が戦闘の中で撃墜された。


 事実上、国際連邦宇宙軍は今回の戦いで完全に崩壊し、地球人類が有する宇宙戦闘能力は消滅したのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 以前扶桑でも型落ちの型落ちという話がありましたが奮戦していて嬉しい
[一言] 更新お疲れ様です。 防衛艦隊をあっさり撃破でピクニックモードの連合を扶桑が痛打し撃退も、かの艦も満身創痍とはいかないまでもかすり傷とは言えないダメージ(><) 次回も楽しみにしています。…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ