女王、地球への降臨
2199年7月12日 日本皇国 伊豆半島沖 東京・宇宙港
22世紀末、混沌と戦争の世紀となった21世紀が明けておよそ100年、地球は一言で言えば「繁栄」していた。日本による技術の一部開示によって「宇宙開拓時代」の幕が開け、宇宙での資源開発が商業的に成功したことで、人類は前代未聞の「ゴールドラッシュ」の真っ只中であった。国家間の格差は残ってはいたが、地球は安定を取り戻しつつあった。
だがその繁栄に突如として悪魔が忍びよる。2195年の「宇宙漂流連合」出現、そして4年後の「火星襲撃」は、地球にとって歴史上初の宇宙戦争となった。宇宙産業は休業を余儀なくされ、地球は大混乱に陥る。
そして、国連は全地球人類が見守る中、地球への移住を求める異星人との交渉に望んだ。相手が融和路線に切り替えたこともあり、まだ公式には公表されていないが、地球側が提示した妥協案でまとめる方向に向かっている。女王府が火星からの撤退を発表したことも相まって、地球での報道は彼らとの共存を模索する様な内容にシフトしていた。
そして火星占領から4ヶ月、そんな友好ムードを決定付けるイベントが開催される。連合女王ライザ=グリアント・アルザウォールの地球訪問である。場所は「日本皇国」、世界で最も宇宙産業技術が進んだ歴史と魔法の国だ。
その領海内、伊豆半島沖に縦横4キロメートルを超えるメガフロートがある。日本から宇宙への玄関口である「東京・宇宙港」である。日本の宇宙産業の要衝だが、今は数多のマスコミが押しかけ、警備員・宇宙軍兵士が睨みをきかせていた。
程なくして遥か宇宙から1隻の宇宙航行船が降りてくる。それは国連宇宙軍の宇宙軍艦や戦闘機を伴って太平洋へ降り立ち、大きな水飛沫を上げる。
宇宙艦「ミーナン」より発射された惑星間航行船「ライ・アルマ」、連合女王と女王府の重鎮たちからなる「地球視察団」を乗せたその船は、東京・宇宙港へ近づき、その桟橋へ接岸する。「ライ・アルマ」に続けて、国連宇宙軍の艦も次々に海面へ着水した。
『今、宇宙漂流連合の女王を乗せた船が、宇宙港へ到着しました!』
接岸した「ライ・アルマ」からタラップが下される。ついに、異星人の女王が地球へ降り立つ瞬間が訪れた。
「・・・これがチキュウのウミの香り、マズナーのそれとはまた違う」
船内から姿を表した女王ライザは、地球の海に見惚れていた。タラップの先にはレッドカーペットが敷かれており、その途中には日本皇国外務大臣である猪野洸平が待ち構え、女王を迎えた。
「ライザ=グリアント・アルザウォール女王陛下、地球・・・ならびに日本皇国へ、ようこそ。私は日本皇国外務大臣、コウヘイ=イイノと申します」
「手厚い歓迎、大変感謝いたします。よろしくお願いします、イイノ閣下」
2人はカーペットの上で友好の握手を交わす。日本皇国陸軍特別儀仗隊がレッドカーペットの両脇に整列し、女王とその一団は猪野の先導を受けながら、カーペットの上を進む。黒服のSPたちが無線で連絡を取り合い、警備ドローンが周囲を飛翔し、警戒に当たっていた。
女王の座乗艦に伴って地球へ降り立った宇宙軍艦は、続々と他の桟橋へと接岸していた。その中からは、今回の「地球訪問」のために尽力した日本皇国の役人たちが下船しており、彼らは久しぶりに地球へと足をつけていた。
「・・・やっと帰って来られたな」
「ああ、だがここまで辿り着いた。あとは友好条約と移民協定の正式な締結を待つだけだ」
その中には若き外務官僚、庭月野の姿があった。彼は他の同僚たちと共にタラップを降りている。女王の地球視察が実現したことで、任務終了となった彼らは、女王の一団と共に地球へ帰ってきたのである。
猪野外務大臣は地球へ降り立った視察団へ、今後の行程について説明する。
「ここは我が国の領海、首都・東京へ上陸するには船で渡らなければなりません」
「・・・船、ですか?」
「はい、そこまでご案内いたします。船で東京へ上陸した後には、皇居へ参ります。我が国の君主『天皇陛下』が皆様をお待ちです」
「・・・!」
カーペットの先には、この宇宙港内の移動に使用されている数台の電動カートが停車していた。総面積16平方キロメートルにもなるこのメガフロート内部では、車両を使わなければ移動もままならない。
そして地球視察団を乗せたカートは、数多のフラッシュライトを浴びながら発着場を後にする。彼らは東京との連絡船が出入りする港へと移動し、日本政府が用意した大型客船へ案内された。
東京・宇宙港 上空
宇宙漂流連合の来賓たちを乗せた客船が、東京・宇宙港から出航する。護衛の担当は国連宇宙軍から日本皇国軍へと移り、客船の両脇には皇国海軍の駆逐艦が伴走していた。
『対象を無事、日本へと送り届けた。護衛任務を海軍へと引き継ぎ、我々は横田基地へ帰投する!』
『了解!』
火星からの護衛任務に同伴していた、国連宇宙軍月面派遣部隊・第12飛行隊(日系部隊)は、補給と休息のため、東京都の横田基地へと進路を取る。直後、多数の宇宙戦闘機が東京へ機首を向けた。
(1年ぶりの東京だ・・・!)
パイロットの中には東郷俊亨中尉の姿がある。彼は1年ぶりに東京へ残した家族と対面するのを楽しみにしていた。
〜〜〜
2199年7月12日 火星 首都・水龍 第5区
同日、女王が飛び立った後の火星では、下火になりながらも攘夷志士を名乗る集団の抗議・デモ活動が続いていた。女王府は火星からの撤退は約束したものの、正式な謝罪などはなかったため、火星襲撃の被害者たちの間には、未だに不満と敵意が漂っていた。
そんな中、角一郎とイツキは首都・水龍へと帰還していた。イツキは女王を襲ったお尋ね者であるため、教会の跡地に建てられたプレハブ小屋の中に身を潜め、外出できない日々を余儀なくされていた。
そして彼女の養父である角一郎は、ある男に呼び出され、水龍の中心地にほど近い第5区を訪れていた。第5区は観光客向けのカジノやホテルが立ち並ぶ、水龍随一の観光区画である。角一郎はとある高層ホテルの最上級客室、すなわちスイートルームへ案内されていた。
角一郎を案内したホテルスタッフはドアホンを押し、中にいる宿泊客に話しかける。
「永見沢篤志様、お客様をご案内致しました」
直後、両開きの絢爛な玄関扉が開く。最初に彼らを出迎えたのは、部屋の主の秘書であった。
「ようこそお越しくださいました、柏角一郎様。会長は奥でお待ちです」
「・・・いえ、こちらこそ。お招きいただき光栄です」
角一郎を案内したホテルスタッフは、一礼してその場を立ち去っていく。角一郎は秘書の女性に促されるまま、スイートルームの中へ入っていく。
装飾品が並び、カーペットが敷かれた廊下を進んでいくと、水龍の景色が一望できるリビングルームへと到達する。その窓際に、気品漂う老紳士が佇んでいた。
「・・・よく来てくれたね、柏角一郎くん」
「いえ、いつかはお会いしなければならないと思っていました」
角一郎は覚悟を決めた目で老紳士・永見沢を見つめる。その後、2人はソファへ腰かけ、本題へと入っていく。
「・・・わかっているとは思うが、私が君に会いたかった訳は」
「はい・・・イツキのことですね」
角一郎はそういうと、無意識的に瞼を閉じた。彼は16年前の記憶を思い返す。
・・・・・
・・・
・
16年前の水龍、角一郎は日本から火星へ移籍した暴力団組織「柏組」の2代目組長として、違法賭博と麻薬の密売で暴利を得ていた。そんな中、賭場荒らしの豪運女として噂になっていた幸神イヨが、彼の組が経営する賭場に乗り込んできたのだ。
ハッピーチャーム族の力を駆使して荒稼ぎするイヨと日村に、彼の組の構成員が理不尽な難癖をつけ、強制的にとあるゲームへ参加させた。それは「ロシアンルーレット」だった。
(・・・あの女は?)
(へぇ! 近頃噂になってる豪運女でさぁ! 調子乗ってたんで、若い衆が灸を据えてやってるところです!)
騒ぎを聞いて駆けつけた、角一郎を含む組の幹部たちが見守る中、イヨは臆することなくロシアンルーレットへの参加を承諾した。そして1回目、先行を買って出た若い衆の頭を9mmパラベラム弾が撃ち抜いた。
(1巡目かよ・・・運がないヤツ)
続けて2回目が始まる。1発だけ実弾が装填された6連リボルバーが、イヨの手に渡される。するとイヨは微笑みを浮かべ、何と引き金を5回連続で引いて見せたのだ。組の構成員はもちろん、幹部や他の客たち、その場にいた全員が言葉を失った。
(・・・さぁ、貴方の番ですね?)
イヨはリボルバー拳銃を、微笑みながら相手に渡す。渡された若い衆は一瞬のうちに顔を青ざめた。残す1回の引き金を引けば、訪れるのは確実な死である。やくざ者とはいえ、確約された死を前に平常心でいられるほど、ネジは飛んでいなかった。
ヤクザをひとしきり弄んで満足したイヨは、あくびをしながら椅子を立ち、角一郎のもとへ歩み寄る。そして妖艶かつ気品漂う笑みで、彼に取引を持ちかけた。
(あなたが組長さんですね、ご覧の通り・・・私の豪運は偶然じゃない、必然なの。私と手を組みませんか?)
(・・・!)
その後2人は協定を結び、豪運を手に入れた角一郎は裏社会での地位と名声を確立させていく。だがその繁栄も長くは続かず、2年後に組は摘発され、角一郎は逮捕されることとなった。
・
・・・
・・・・・
(思えば・・・俺の一目惚れだった。まさか、イヨの力がリスクを伴うものだったとは)
イヨを取り込んだ後の角一郎は、まさしく絶頂の最中にいた。しかしそれは、彼女がハッピーチャーム族であるが故のものだった。そして2年の間に豪運は枯渇して組は瓦解し、イヨ自身も若くしてこの世を去ることとなった。
「私はかつて、人道に反する商売に手を染め、イヨ・・・貴方の『娘さん』を含めて、多くの人を不幸にしました。私は今、神に仕える職に就いていますが、許されざる罪だと悔いています」
角一郎は過去の後悔を懺悔する。永見沢は無言のまま、彼の独白を聞いていた。
「私は16年前、貴方の娘である幸神イヨ・・・失礼、永見沢イヨを見初め、1人の子を成しました。お察しの通り・・・イツキは、大久保イツキは私とイヨさんの娘です」
角一郎は誰にも語らなかった過去を明かす。その瞬間、永見沢の右の眉が僅かに釣り上がった。
「組が瓦解した後の裁判で、私は陪審員たちを買収することで、短期間の懲役刑のみで刑期を終え、離れ離れになったイヨさんとイツキを探しました。ですが・・・」
最初は仕事として協定を結んだ角一郎とイヨだが、イヨに魅了された角一郎の積極的なアプローチで、2人は内縁関係となった。そして15年前、2人の間に女の子が生まれた。それがイツキだった。
だが、3人が家族として過ごした時間はわずか1年にも満たなかった。警察に目をつけられた柏組は不正経理で摘発され、角一郎を含む幹部たちは全員逮捕された。イヨと当時1歳のイツキは若い衆の手引きで逃げおおせたが、その3年後、イヨは命を落とすこととなった。
「当然ですが、イツキは私のことなど覚えていなかった。ですが、イヨさんの写真を込めたペンダントを大事に抱えていました。私は父と名乗らず、あくまで養父として、彼女を育てることにしました」
父としての義務を果たせず、人間として外道に落ちていた自分に父と名乗る権利はない。多大な後悔を背負い、角一郎は父親と名乗り出ず、養父として彼女と接することを決めた。
その後、神に仕える職を選んだ角一郎は、イツキと共に教会で暮らすこととなる。イツキは快活な少女として成長し、今や副牧師として彼の職務を支える様になっていた。
「イツキは・・・本当にいい子に育ちました。私の補助をしてくれて、生活費のためにバイトまでして・・・。本当にいい子なんです」
「・・・」
角一郎はイヨの将来を案じていた。このまま自分と共に居ては、幸せになれないであろうと感じていた。彼はソファから立ち上がり、両膝を床につけて頭を下げた。
「だから・・・! ほとぼりが冷めたら、あの子のことをお願いします・・・! あの子には『ヤクザの子』であるが故の数えきれない苦労をかけました。だから! あの子にはこの先『永見沢の令嬢』であるが故の幸せな人生を送って欲しい! 手前勝手なお願いだとは、重々承知しています」
床の額をつける角一郎の両目からは、大粒の涙が流れていた。永見沢は彼の心情を察する。
「話は分かった。・・・イツキはこのことを知っているのか?」
「・・・いえ。でも、薄々勘付いているとは思います」
イツキを救出するため、角一郎はヤクザ時代の伝手を使い、彼女の前に現れた。そして潜伏先として日村のバーを使ったことで、イツキは断片的に実母の過去に触れることとなった。
「・・・そうか」
永見沢はため息をついた。
火星襲撃の日、やむを得ず自宅に連れ帰り、介抱した少女が、娘の顔写真を収めたペンダントを所持していた時は、心の底から驚いた。同時に、彼は自分に孫娘がいることを知った。
(これは、運命か・・・)
永見沢は孫娘と向き合う決意をする。同時に彼も、自身の過去を悔いていたのである。
かつて、若き野心家であった永見沢は、「ハッピチャーム族」の能力を目的としてイツキの祖母を娶り、その奇跡の力を手にした。その後、彼が興したIRリゾート企業は見る見るうちに急成長を遂げる。だが、財と名声を手にした永見沢は、家族への関心を失った。
娘・イヨはそんな父親に反発して家を出て行ってしまう。彼女が出ていく間際、激昂していた永見沢は感情のままに勘当を宣告してしまった。後日、我を取り戻した永見沢は後悔の念に苛まれ、あらゆる手段を駆使してイヨを探すも、ついに娘を見つけることはできなかった。
だが、長い月日を超えて、娘の血を引く子・イツキが現れた。彼は運命を感じずにはいられなかった。
〜〜〜
2199年7月12日 日本皇国 東京都港区 竹芝桟橋
その頃、地球では女王を乗せた客船が東京へ到着していた。ついに本土へ降り立った地球視察団は意気揚々と地上に降り立つ。同時に彼らの顔面を湿度の高い熱気が襲う。
「なぜこんなに暑いのだ? 空調の故障かね?」
「・・・空調? 今は季節が『夏』ですから、暑いのは当然のことです。事前に説明はあったはずですが・・・?」
視察団の1人であるマーランは露骨に不機嫌になる。外務大臣の猪野はわざとらしく首を傾げた。季節は7月の中旬、この日は日中の最高気温が30度を超える真夏日を記録していた。
気温・湿度が完全に管理された環境下で暮らしていた宇宙漂流連合の面々は、すでにこの暑さに面食らっていたのである。
「地球は豊かな自然に恵まれ、我々地球人はその恩恵を得ていますが、地球の自然はその対価と言わんばかりに『災害』という形で牙を剝きます。人類の歴史は災害と戦ってきた歴史です。コロニーという管理された温室で生まれ育った軟弱な・・・失礼、繊細な貴方方は、地球で暮らすことにそもそも耐えられないかもしれませんね・・・」
猪野はそこはかとなく挑発するような物言いをする。
「・・・っ!! フン! この程度の暑さ、何のこともない!」
マーランは顔を顰めると、子供のようにそっぽを向いてしまった。女王府総裁であるロトリーはそんな同行者の言動を苦々しく感じていた。
(しかし、この暑さは恐れ入る・・・。これが『夏』というわけか。陛下もよく、平気なお顔ができるものだ・・・)
マーランほどに露骨ではないにせよ、ロトリーも生まれて初めて体感した“蒸し暑さ”に辟易としていた。それは他の役人たちも同様である。だが、女王のライザだけは、興奮と喜びに満ちた瞳で地球の空を見上げていたのである。
港には日本政府が用意した公用車が車列をなして待機していた。SPたちは車のドアを開け、来賓である地球視察団のメンバーに公用車へエスコートする。
遥か遠き宇宙からの来訪者を乗せたその車列は、次なる目的地が位置する千代田区へ向かう。
千代田区 皇居
報道ヘリやパパラッチドローンが追尾する中、来賓たちを乗せた公用車の列は「皇居」へと到着した。車列は都心に位置する緑豊かな敷地の中へ入っていく。ライザは木漏れ日が溢れる深緑の木々を、車窓の中から恍惚な表情で見上げていた。
程なくして、車列は御所へ到着する。出迎えの侍従や皇宮職員たちがドアを開けると、女王ライザと複数の随行員たちが、日本の聖地へ足をつけた。その瞬間、彼らを襲ったのは、執拗なほどに鼓膜を揺らす、多種多様な豪音であった。
「このうるさい音は何だ!? 客人に対して無礼ではないか!?」
マーランはそれを嫌がらせだと断じ、またしても不機嫌な態度を露わにする。出迎えの侍従は首を傾げるが、すぐに彼が言わんとしている内容を理解する。
「・・・ああ、これは『蝉』という『昆虫』の鳴き声です。夏という季節には付き物の風物詩なのですよ」
「生物の声!? これがか? ただの騒音ではないか! なぜ駆除しない!?」
マーランはますます機嫌を悪くする。皇居の職員たちは苦笑いを浮かべていた。宇宙漂流連合の艦内には、生きた植物もなければ生きた動物も居ない。彼らは生物の鳴き声というものに全く馴染みがないのである。
「・・・あら、他の生物が声を奏でるなど、興味深いではないですか。お気に召さないのであれば、貴方はお帰りになってはどうでしょう?」
「!!」
女王のライザは微笑みながらマーランに問いかける。マーランは一瞬のうちに、笑顔の裏に貼り付けられた怒りを察知し、冷や汗を流した。
「・・・た、大変失礼いたしました」
マーランは謝罪の言葉を述べると、それ以降は口を開かなくなった。その様子を見て、ロトリーや他の随行員たちはホッと胸を撫で下ろした。
その後、彼らは侍従たちに先導され、天皇が待つ間へと案内される。
「陛下は奥でお待ちです・・・。この日をとても楽しみに待っておられました」
侍従が扉を開ける。するとその向こう側に広がっていたのは、質素な内装ではあるが、どこか気品と格式が漂う空間であった。
奥には花瓶と小さなテーブルが置かれており、さらにそれらを中心にして、向かい合わせになる様な形で、2つのソファが置かれていた。
「・・・!?」
そして、一方のソファの前には、高級な特注スーツに身を包む“少年”が立ち、その背後には礼服に身を包む“少女”の姿があった。
小首を傾げる女王ライザに対して、少年は両腕を広げて彼女たちに歓迎の言葉を告げる。
「ようこそ、日本皇国へ!」
22世紀末、この国には齢十一の君主と齢十九の摂政が君臨していた。そしてこの出会いは、ライザの心情に大きな影響を与える出来事となる。




