再会
パイプチャイムの三重奏が聴こえた。—— ドアを開けて入ってきたのは、グレーのマフラーを巻いた美しい少女だった。
「香織さん……」
「……」
呆然とする香織の前に立ち、少女 —— 憂花 —— はほっとしたように笑みをこぼした。—— 黒い髪の毛に縁取られた顔の色はまだ青白かったが、色づいた菫の花のような愛らしいその笑顔は、凍りかけていた香織の心を一気に溶かした。
「来てくれたのね」
「ええ。急に会いたくなって」
「私に?」
「ほんとうの香織さんに」
「ほんとうのって」
「昨日、夢で会ったの」
「私?」
「そう。それで急に……、たしかめたくなって」
「ほんとうの私を」
「そう。だからほら……」
求めに応じて、香織は憂花を抱き寄せた。さらさらとした黒髪に触れる —— それからうなじに触れる —— 頬に触れる ——。
「もういいの?」
「病み上がりだけど」
「学校には行った?」
「まだ。来週から行こうと思って」
「……そう……」
香織は憂花から身体を離すと、相手の瞳を見つめた。—— 彼女の瞳は安心したように笑んでいた。—— そしてもう一度、先よりも強く抱き寄せた。
***
その夜のこと。
「前言撤回するよ」
—— え……。
「あなたは、僕よりもはるかに大した存在だ」
—— どういうこと?
「最終手段だ。ちょっと小細工をさせてもらうよ……」
そう言って、ときめき君はその小さな頬に笑みをたたえた。——





