↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
33/44

翼竜のような悪魔


 そいつは恐るべき形体を有していた。—— 太古の空を飛び回った翼竜プテラノドンのような頭と痩せた四肢と尾とを持ち、その胴には人間のような乳首《ちちくび》と浮き出た肋骨《あばらぼね》、臍《へそ》がついていた。関節でつながった両腕の先は蟹《かに》の足先のように鋭くとがり、脇のあいだには羽毛のような毛が生えている。


「なんなの、こいつ……」

「ウミガメ奏者が言ってたやつ、だろうね」


 肩から伸びる頚部《けいぶ》は掃除機(ヴァキューム)のホースあるいは駝鳥《だちょう》の硬く太い脚を連想させるような蛇腹《じゃばら》の形状になっていて、そのく(・)の(・)字(・)に曲がった首の先にある翼竜のような頭部には、ふたつの恐ろしい目の玉と鉤《かぎ》のかたちに反り返った恐るべき犬歯とがあった。


「じゃ、僕は所用だからお暇《いとま》を —— あいだだだ!」

 憂花は逃げようとする笑う蜘蛛の脚をひっつかみ、

「そりゃっ!」

 おぞましい敵の影へと投げつけた。


「ぎゃああああ……」

 敵の鋭くとがった腕の先に捕らえられた蜘蛛は悲鳴を上げる。


「クシャアアアッ!」


 唸り声とともにその怪物は腕を振り下ろし、地面へと突き刺した。—— 白い砂埃《すなぼこり》が巻き上がり、それが消えると、そこにはすでに笑う蜘蛛の影はなかった。

 敵は憂花を見下ろすように立っていたが、そいつを見上げた憂花は不敵にも口角を上げて笑った。



 —— やってくれるじゃない……。



 憂花は戦斧《せんぷ》を掲げて跳び上がり、その翼竜のような頭へと振り下ろした。


「クキャアアアア」


 怪物は唸り声をあげ、地に降り立った憂花へととがった口先を突き刺そうとする —— 憂花は体勢を崩しながらもすかさず斧を掲げ、牽制する。



 —— さあどうする、悪魔よ……。



 しばらくにらみ合いがつづいたが、その間に敵の背後に現れる、無数の怪物の群れ……。



 —— 援軍のつもりかしら……。



 憂花は戦斧《せんぷ》の刃へ敵の注意を引きつけつつ、ゆっくりと片脚を動かしていた。—— この動作の起(・)こ(・)り(・)に敵は気づいていない。



 —— いける……!



「ハッ!」

「クキアアアアアアアッ……」


 憂花のかかとが怪物の細い足首へとかかった。—— 不意をつかれた怪物は体勢を崩し、膝を折って地面へと倒れ込む —— その口先が、憂花の額をかすめて地面へと突き刺さった。



 —— 間一髪……。



 白い砂煙の中、憂花ははっとして立ち上がり、斧を持ち直した。

 倒れた怪物が頭をもたげ、憂花を睨《にら》む —— その頭部を、憂花は思い切り叩きのめした。




「クキイイイイイイッ……!」




 怪物の悲鳴とともに、あたり一面が白い光に覆われた。—— 視界が元に戻ると、憂花はひとり荒野のど真ん中に突っ立っていることに気がつく。—— 足元には、土に埋もれた翼竜の化石とその頭部に突き立てられた戦斧《せんぷ》とがあった。


 乾いた風が、頰をなでる……。










評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。



i415155


― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。