7:手当てする
ここにおちてきてはじめてのことかもしれない。
そのことに気づいたラウラは、このまま放っておいてはいけないと、立ち上がった。何度か深呼吸すると怪我をした少女のもとへ向かう。
横たわる彼女は目を閉じていて寝ているように見えた。手足にいくつか見える裂傷はすでに消毒されているようで、血は止まっている。
クラールスが使っていた箱は開いたままで、そのすぐ横に包帯が置いてあった。
ラウラはそれを手に取るとまず彼女の腕に巻いていく。慎重に、怪我にさわらない様にそっと。当然出来上がりの状態は悲惨なものだった。あちこち緩んでいて、少し動かしただけで外れそうだった。
「これは………」
さすがにまずいだろうと、一度外して再度試みる。しかし何度やっても結果は同じであった。それもそのはず、ラウラは一度も手当てなどしたことがない。全て見よう見まねで、出来るわけなかった。やがて、何度も巻き直すのはまずいのではないかと、ラウラは一度手を止める。
すると、急に少女がカッと目を見開いた。
「えっ」
ラウラは驚きのあまり後退るとしりもちをついた。それと同時に少女は起き上がると、ラウラに向かって手を伸ばす。
「貸して、ヘタクソすぎてじっとしていられないっつーの」
「え?」
「え?え?って、あんたはそれしか言えないの?包帯を貸せって言ってんの。このクソが」
「あ、はい」
ラウラは驚きで包帯を落とさなかったことに感謝しつつも、少女それを手渡した。
「ええと、ご健勝そうでなによりで?」
すると少女は顔を歪めた。舌打ちしようとしたが、口の中が切れていて痛みを感じたのだろう。
「これが元気に見える?」
少女は吐き捨てるように言い、てきぱきと包帯を巻き始めた。
ラウラにとっては一瞬に見えるほどの速度で少女はすべて巻き終わる。出来上がりはうまいものではないが、ラウラよりははるかに上出来であった。
「何?いつまでいるの。さっさとか・え・れ!」
少女はシッシと手を振って追いやると、ベッドに横になり目を閉じた。
もしかしてあの時の事故は少女にとって何らかの策略か、もしかしたらわざとやったのかもしれない。
そういった駆け引きは貴族間ではよくあったことだ。最も彼女は貴族でも何でもないし、そのこともラウラは分かっていた。一先ず自分を納得させるためである。
ラウラがそのまま床の上で呆然と座り込んでいると、出て行った時よりは少ない足音が聞こえ数人程の彼らが戻ってきた。座り込んだままのラウラを見ると、手当てをしてくれたのかと驚く声を上げ、感謝の言葉を何度も告げられた。
ラウラはそれを否定も肯定もせず、ふらふらと自分のベッドに戻っていった。