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ミルドレッドさんとエイミィさんが、テーブル周りを片付け、新しいお茶を用意するために部屋を出ていきました。


バートさんとヘンリーさんが椅子をいくつか動かし、円卓会議ができるようにしてくれています。


バッシーン!


物音に振り返ると、リリアちゃんが、思いっきりノア君の頰を張ってました。


目を丸くするノア君に、ヘンリエッタ夫人が、


「まあ、グウじゃなかっただけでもよかったじゃないの。」


と慰めています。まあ、そうですね。今回は、得意技の蹴りではなかったようです。


席に着いた私たちは、早速確認事項をまとめます。


「ファーミ・・・


「ヘンリエッタよ。反逆罪で共に死刑になるかもしれませんのに、他人行儀はやめませんこと?」


それもそうです。ただ、先ほどからルディ君が私の側を絶対に離れようとしないので、あまり刺激的な発言は避けていただきたいのですが。


「では、私のこともヴァネッサとお呼びください。

ヘンリエッタ様、貴方のサロンに来ていらっしゃる青年たちは、皆王家に対して不満を持っているということで間違いないですね。」


ヘンリエッタ夫人は、今までのことがまるで夢だったかのように、平静に答えます。


「ええ、その通り。ただ、王家にのみに不満足なわけではないの。体制そのものに不服なのね。古い高位の貴族が全てを仕切っていて、自分たちの将来に望みがない、とね。」


ああ、だから若い貴族の子女や比較的下位の貴族、新興貴族が集まっていたのね。


「その不満がナイアックの事件で表面化したの。

もともとナイアックに誘われて、税金をごまかしたけれど、子爵以下の人たちはその利益のほとんどをナイアックに吸い上げられているのよ。おまけに今度は、ごまかしていた分をまとめて支払わなくてはならない、そんな絶望的状況の下位貴族の人たちと、不正はしなかったけれど、いつも高位貴族にばかりうまい汁を吸われて、出世の望みのないと思っている若い貴族たちが混ぜ合わさっているわね。」


なんとなく図が見えてきました。


「だとしたら、結構な人数でしょうし、軍などによって彼らの不満を力ずくで抑えようとしたら、確かに血を見るでしょうね。」


私がそう発言すると、デュラント伯爵の肩がピクリと動きました。その様子に気がつかない振りをして、質問を続けます。


「彼らが団結する可能性はあるのですか?」


ここ重要です。

ヘンリエッタ夫人は、妖艶に微笑みながら返事をします。


「今のところ、中心になる人物が決まっていないから団結はしていないわ。そもそも若い子たちは、税金の不正を行った貴族に対しての嫌悪を拭えていないのよ。だから、道を踏み外した子爵たちとそうでない貴族の子弟のソリが合わないの。王家は彼らの正義感に感謝すべきね、そうでなければとっくに集まって反旗を翻していたわよ。

でも、ここへ来て、なんとか彼らの力をまとめようとする動きがあるの。」


追徴課税の発表を前に、焦りもあるでしょうしね。私は「知ってるよ」オーラを出すために、推測を投げかけてみました。


「ランバート子爵あたりですか?」


ヘンリエッタ夫人は、片眉を上げて、ちょっと感心した風です。


「その通り。団結する可能性は刻一刻と高まっていると思った方が良いわ。」


でしたら早いこと手を打たなければならないですね。


私はにっこり、余裕の微笑みを浮かべます。


「つまり、若手貴族集団は、リーダーがいれば、まとまるということですよね。私たちは、そのリーダーをエドワルド王太子にして、王太子の元、若い貴族を団結させたいと思っているのですけど。」


夫人はちょっと眉を下げます。


「それは私も考えたの。エドワルド殿下を王位につけて、陛下にご退位いただくというのはね。でも、不満分子は、エドワルド殿下では、世の中が変わらないと見ているの。

だから新たな可能性を探っていたのよ。」


ああ、安心しました。夫人はガチガチの反体制ではないようです。


「では、エドワルド殿下が王位につけば、世の中が変わります、ということが実証できればよいのですよね。それに成功すれば、青年貴族たちはエドワルド殿下の元に団結するということで。

そうすれば殿下が王位についても文句は出てこないということでよろしいでしょうか。」


ヘンリエッタ夫人は妖艶な笑みを浮かべます。


「ヴァネッサ、貴方何か案があるのかしら。」


ここでグラついたら女が廃ります。


「ええ、もちろんですわ。既に動いておりますの。」


こういう時は先生に振るのに限ります。


「先生、ユークリス伯爵とは連絡が取れるのかしら。」


計画は考えてるだけではなく、既に実行段階よ、と、いうハッタリです。

先生はしれっとして、


「はい、奥様。お嬢様のジョージアさんを通じて。」


と答えます。


私は、おぼろげながらも私の中で固まりつつあった計画をこの場で小出しにしようとしました。


しかし、それまで黙って聞いていたデュラント伯爵が声をあげます。


「ヴァネッサ、お待ちください!姉上の目論見がはっきりするまで貴方の計画を話さないでください!」


いきなりの名前呼びですか。いや、名前を呼んでといったのは、お姉さまに向けて言ったのですが・・・まあ、いいか。


私の腕にしがみついているルディ君の視線が心なしか険しくなったような気がします。


デュラント伯爵凍りつくような視線を姉であるヘンリエッタ夫人に投げかけます。


「姉上、貴方はなぜこの問題に首を突っ込んでいるのですか?」


それは、私も聞きたいところです。


「私怨ですか?陛下に対する恨みから、陛下を追い落とそうとしているのですか?」


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