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さてと、スタイヴァサントでは、親睦ダンスに参加した人たちが集まって、報告会を開いています。


「・・・と言うことは、やはり、ファーミングヴィル夫人のサロンに集まる人たちが反体制派ということですね。」


先生が確認します。私は頷きながらも疑問が頭を離れません。


「確かにファーミングヴィルの別邸がアジトなのでしょうが、首謀者は誰なのかしら。サロンに集まる青年たちが行動を起こしたとしても、夫人を旗頭にはできないわ。幾ら何でもそれは無理。夫人の背後に誰がいるのかしら?」


リリアちゃんが首をひねります。


「考えられるのはデュラント伯爵でしょうけれど、そうだとは思いたくありません。今までだって色々助けていただいているし・・・」


パトリックさんも同意します。


「いや、私も伯爵が黒幕説には反対ですね。陛下はさておき、伯爵は、王太子のために誠心誠意尽くされていますよ。それは前回のナイアック事件の際、調査が一切周りにもれなかったことからも明らかです。

夫人とは、姉と弟とはいえ、もう何十年もほとんど関わりがなかったはずです。」


でも私たちは、お二人が仲良くしていらっしゃるのを目撃しましたよね。


「それでは今なぜ、二人が親しくお付き合いしていらっしゃるのかしら?」


先生が


「それは夫人が最近、領地から王都へ出ていらっしゃったからでは?」


と、意見を述べます。私が誰ともなく、


「辺境伯がなくなってから、5年も音沙汰がなかったのに、このタイミングで王都に帰っていらしゃるとはね。その切っ掛けを探ることはできないかしら。」


と、聞くと、パトリックさんが、


「ダンスに元の騎士仲間が来ていたので、話を聞いたのですが、別邸はかなり厳重な警護がなされているようですよ。」


と、報告してくれました。


続いてエイミィさんが、


「お屋敷で働いていらっしゃる方々も全員領地から連れていらっしゃった方たちばかりだそうです。夫人付きの侍女が、『皆王都に初めて来たので、珍しくて楽しいわ』といっていました。」


と、レポートしてくれました。エイミィさんたらなかなかやりますね。


「ということは、間者を送り込むということは無理でしょうかね。若い男性だったらいけるんじゃないかしら。」


これは、探偵好きな先生の発言です。いや、私にはそんな男性心あたりがございません。


「信用のできる、有能な貴族の若い男性ということよね。今回はデュラント伯爵にご紹介をお願いできないし、いたとしても、そんな危険なことをやらせられないわ。」


夫人のターゲット層に合いそうな青年で、私の知っている人といえば・・・パルマー君か、ローランド殿下・・・


「そういえば、ローランド殿下を見かけなかったけれど、不参加だったの?」


バートさんが、頷きました。


「はい、奥様。先生方が、殿下は体調を崩して、欠席されたとおっしゃっていました。」


言った当人のバートさんもそんなことは信じていない様子です。


リリアちゃんが、呆れたように


「仮病でしょう。皆に冷たくされてるから。

よくもまあ、あんな細い神経で、王妃を救い出そうなんてかんがえますよねぇ。」


と、言いました。確かに。


「ローランド殿下に対する風当たりは結構強いの?」


これには、先生が答えます。


「ええ。王家に取り入ろうとする人たちでさえ、ローランド殿下になんの力もないと見て、ほぼほぼ無視ですね。

王太子妃になるために殿下に近づいていた人たちも、殿下に全く影響力なしと見ています。まあ、義弟になるかもしれないから、愛想良くはしてますけど。

王家に反発する人たちから時に嫌がらせは受けているようですね。でも大したことではありませんわ。

むしろ、リリアさんや、王太子妃の候補であるジョージアさんやクリスティンさんの方が、嫌な思いをしているんじゃないですか?」


リリアちゃんはにっこり笑って


「あんなの騒ぎ立てるほどのことはないわ。ジョージアも私も、大抵の嫌味は聞き流してます。カイルのおかげで、実際攻撃してくる人はいないし。」


どうやら女生徒の方が図太く頑張っているようですね。感心、感心。


この調子で行くと、ローランド殿下も、自分の立ち位置を痛感するでしょう。頼る人なし、ということで、王妃を救出するなんて馬鹿げた夢を早々に捨てるでしょうから、とりあえずは安心だわ。一人でやる根性はないでしょうし。


それにしても、ファーミングヴィル夫人は、なぜ、ローランド殿下の元を訪れたのかしら。謎の多い女性だわ。


「ファーミングヴィル夫人の背後にいる黒幕に関しては、ひとまず議論をおいておきましょう。それより彼女のことをこれからどう探っていくかよね。

まずは正攻法で行くわ。幸いスタイヴァサントに来たいとおっしゃっていたのだから、お茶にでもご招待しようかと思うの。」


先生が驚きの声をあげました。


「あの、奥様、ただの社交辞令では?」


私は微笑みながら、


「断られたら断られた時よ。別にお誘いするのは構わないじゃない?」


リリアちゃんがニヤッとします。


「未亡人同士仲良くなって、若い子を誘惑します?」


おいッ!こらッ!


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