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オークデール伯爵夫人は、鼻息も荒く私に食ってかかります。


「ミリア、一体何のこと?」


旦那様の妹であるミリア・オークデール伯爵夫人は、私が理解できないことが、さも意外だ、と言わんばかりに私の鼻先で人差し指を振り回しながら話を続けます。


「ファーミングヴィルよ!今、貴方あの女と話してたでしょう!あの女の評判を知らないの?」


なぜ、こんなに意気込んでいるのか知りませんが、とりあえず親戚なので、穏やかに話しをします。


「ごめんなさい、知らないわ。」


ミリアさんは、鬼の首を取ったような顔をして、


「あの女、辺境伯の領地から久しぶりに戻ってきたかと思うと、別邸をサロンのようにして、若い男の子をはべらせているんだから!恥も外聞もないわ!

毎日のように、自分の子供と同じような歳の子と遊んでるのよ、信じられる?

うちのパルマーだって呼ばれたのよ!もちろん行かせませんでしたけれどね!」


あの、おっとりパルマー君も呼ばれたの。ふーん。

ファーミングヴィル夫人の方を見ると、確かに数人の男子生徒に囲まれていますね。


私があまり衝撃を受けていないのを見て、ミリアさんの怒りが一層激しくなりました。


「兎に角、あんな女とスタイヴァサントがお付き合いがあるなんて噂になったら、社交界でなんて言われるかわからないでしょう!?

未亡人同士が連んで若い男を誘惑してるなんて言われたらどうするのよ!」


横でリリアちゃんが思わず吹き出しています。


私は、うんざりして


「そのような心配はご無用ですわ。ファーミングヴィル夫人とは節度を持ったおつきあいをいたしますので。それよりも・・・」


と、視線を話題に上がったパルマー君に投げます。パルマー君は、尻尾があったら振りまくってるだろうな、という勢いで、ファーミングヴィル夫人に近寄っていきます。


「・・・あちらの方を気にかけた方がよろしいのではなくて?」


ミリアさんは、私の視線の先にいるパルマー君が、ファーミングヴィル夫人に話しかけようとしているのを見ると、小走りにそちらに向かいました。


ミリアさんが去った後、先生がぼそりと付け加えます。


「ファーミングヴィル夫人の取り巻き男子生徒の中に、声高に王家への不満を述べていた子たちも含まれていますわ。」


ふむ、夫人の行動は、よく注意をして見ておく必要がありますね。


「私もあの男子生徒たちに話しかけてみたんですけれど・・・」


先生が残念そうに呟きます。


先生、あまりがっかりしないで。それぞれ資質の違いはあるものよ。


固まっていても効率が良くない、ということで、私たちは、バラバラに散って

様子を観察することにしました。


リリアちゃんは、ダンスを申し込まれて、男子生徒の一人と踊りに行きました。

本日のリリアちゃんの相手を、私が心配する必要はありません。なにせフィリップ殿下は、マーガレット王女に現在の状況を釈明すべく、マディソン王国に出向いているので、今日のダンスには不参加です。


先生は数人の女子生徒に囲まれています。カウンセラーとしてもなかなかの仕事ぶりのようですね。


私は、ファーミングヴィル夫人の取り巻きが、夫人の周りをを出入りする様子を、観察しています。幸い夫人を観察しているのは私だけではなく、周りの年配の婦人方も眉を潜めて見ています。ですから私の視線が目立つことはないでしょう。


私のカメラアイは、夫人の取り巻きリストを作りつつあります。





緩やかなワルツ音楽が鳴る中、ひときわ高い声が上がります。


「フランツ!貴方一体何をしているの?!」


おや、始まりましたね。


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