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83 アン・マーティアン先生視点

奥様からの指示で、学校内の勢力図を理解するため、毎日観察を続けています。

当初は、ローランド殿下に媚びる人たち、殿下に反発する人たちと、単純な図式が出来上がると思っていたのですが、蓋をあけるとそうでもありません。


原因は、王太子妃選びです。妃候補になるために、殿下に近づく人たちも現れました。殿下と親しくする人たちイコール王家に反旗を翻す可能性のある人というわけではなくなったので、見極めが大変です。


奥様曰く、少なくとも、殿下に反発する人たちの多くは、ナイアック事件における殿下とジリアン元王妃への反感からそのような行動に出ているはず、特に目立った嫌がらせをしない限り、彼らのことをあまり気にする必要はないのではないか、ということです。


そうなると、学生のほとんどがそのようです。ローランド殿下を見かけると、露骨に席を立ったり、慇懃無礼に挨拶をしたかと思うと、さっさといなくなるという子供たちが大多数を占めますね。殿下は、地味に傷ついていらっしゃるようですが、これぐらいでめげないでくださいましね。


殿下を嫌う子供達の中に、数名ですが、声高に殿下に対する悪口をいう人たち(ほとんど男子生徒ですね)がいます。時に悪口は、王家にも広がっています。王家に対する敬意が明らかに欠如していますね。彼らの名前はしっかりリストアップして、奥様にお渡ししました。


そういった男子生徒には、カウンセラーとして、それとなく、「話は聞くわよ」という態度を示したのですが、残念ながら、口も心も開いてくれませんでした。修行が足りませんね。


ですが、女生徒の中には、パラパラと悩み事を相談に来てくれる子もいます。先日は、リリアちゃんから勧められたといって、ジョージア・ユークリス伯爵令嬢がやって来ました。どうやら胸の内を聞いてほしいようです。


「王太子妃など、私の器でもなければ、興味もありません。でも母は、毎日のように、あれをしろ、これを着ろ、この先生について新たな習い事をしろ、王妃修行には必要だと、うるさいうるさい。

父がいれば、母を抑えてくれると思うのですが、父は職場に詰めており、それどころではないようです。」


奥様に財務長官をまかせてくだされば・・・まあそれは置いておいて。


つまり、お母様(毒親)にいかに対処するかということですね。これなら経験豊富な私が忠告できる問題です。


「残念ながら、貴方のお母様の考えを変えようとしたり、いい負かそうとしてもエネルギーの無駄です。

幸いにもあなたのお父様は、王太子との結婚を推し進めようとされるような方ではないのですよね。お母様のことは、お父様の手があくまで我慢すればよいのです。

しかし、我慢することによって、ストレスを溜めてはいけません。お母様の干渉を躱す技術が必要になってまいります。」


具体的になって来た話に、ジョージアさんが、身を乗り出します。


「技術とは?」


「お母様への対処方法は一つです。これを『は・ひ・ふ・へ・ほ』の会話方法と呼びます。」


ジョージアさんは、


「ええと、それは、どういった?」


と、聞いてきました。


「聞き流すのです。それも、聞き流すとあからさまにわかるようにやってはいけません。

は:なんでも『はーい』と答える

ひ:なんでも『控えめ』な態度で。

ふ:ふーん、そうなんですか。

へ:へーえ、そうなんですか。

ほ:ほー、それはすごいですね。

この態度が大事です。こうやって聞き流していれば、相手が疲弊します。無駄にストレスを溜めるのはおよしになったほうがよいと思います。」


ジョージアさんは、


「はひふへほ」


と呟きながら、部屋を出て行きました。


そんなある日、ローランド殿下がカウンセラーのオフィスに立ち寄られました。


「先生、スタイヴァサント夫人にお伝え願えますか。ナタリー・モーガン嬢が、フランツ・ホロウィッツ子爵との婚約破棄を狙っており、今、その証拠集めに奔走していると。しかも今度の学園親睦ダンスで、公開婚約破棄をやるつもりのようです。」


そういうの、貴方もやりませんでしたっけ?


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