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女性を取り巻く環境を向上させるためにやることリスト:

(当然このリストは私の頭の中にだけ存在します。書面で残して後々問題になるようなことはしません。)


1、内戦にならないよう、陛下に、速やかに王位をエドワルド王太子に譲っていただく。

2、エドワルド王太子とマーガレット王女の婚姻を進める。

3、エドワルド王太子を支持する貴族を増やす。


うわー、でかいわ。やらなきゃいけないことが、大きいわ。


フィリップ殿下がお帰りになって以来、私は居間の旦那様の絵の前で考え込んでいます。

どこから始める?そもそも私にできるのか?


ねえ、旦那様、どう思います?


いや、やらねばならないですよね。

絵には、旦那様に寄り添うように立つリリアちゃんの姿もあります。今動かなければ、リリアちゃんの世代も同じ道を辿ることになります。とはいえ、最終的な(相手)は陛下です。


ナイアックの事件をここまで大きくし、旦那様という犠牲者を出した責任は、陛下にあります。息子たちの器量を図り、彼らに事件を解決させるために必要以上にナイアック一派を放っておいた陛下のせいです。陛下にはここで責任とって退位していただかなくては、いったいどこでするんだ、というものです。


加えて、今回の中途半端な不正貴族の扱いのせいで、王家に対する不信、不安が広がっています。その責めを一人で負っていただきましょう。他の人たち、特にスタイヴァサントが引き摺り込まれることのないように。腹立たしいことにすでにスタイヴァサントの名前は王家とぴったりくっついているようです。ここで下手を打てば一緒に引きずられる可能性大ですね。慎重にやらねば。


リリアちゃんのこともあります。あの様子だと、フィリップ殿下とのお付き合いを真剣に考慮しなくてはならないでしょう。リリアちゃんが学校でのいじめを私のためだけに我慢していたとはちょっと考えにくいですね。殿下のことも考えてのことでしょう。となると、一層王家に失敗させるわけにはいかないわ。


やらなきゃならないわね。

エドワルド王太子とフィリップ殿下の目指すところが、私の協力があれば、より成功する確率が高くなるのは確かです。ぶっちゃけあの二人では心もとない。


あれこれ考えていると、ノックの音が聞こえました。


「奥様、お邪魔してよろしいでしょうか?」


先生です。


「どうぞ。」


先生と一緒に、バートさんにお姫様抱っこされたリリアちゃんも入ってきました。


「あら、リリア、起き出してきて大丈夫なの?」


リリアちゃんは、お昼寝したせいか、かなり顔色が良くなっています。とはいえ、体重を足にかけられないゆえのお姫様だっこでしょう。


「だいぶ良くなりました、お母様。

先生が、フィリップ殿下がお見舞いにいらっしゃったとおっしゃっていました。その時、亡くなられた王妃のお話があったとも。」


リリアちゃんは、バートさんによって、そっと長椅子に座らされました。先生がクッションを持ってきて、リリアちゃんの挫いた左足を高くします。


「リリアは、王妃のことを知っていたの?フィリップ殿下とお話ししていたのかしら?」


リリアちゃんはちょっと微笑みながら、


「はい。フィリップ様は、エドワルド殿下とともに目指すものを、何度かお手紙で書き送ってくださっていました。

私もできうる限りフィリップ様に協力する覚悟でおります。」


そう言って、ちょっと赤らめた顔を見られたくないのか、旦那様の絵の方を向きました。


「お母様が悩んでいらっしゃると先生から伺って、きっとここだと思いました。考え事をしていらっしゃる時は、いつもお父様の隣ですものね。」


そう言うと、リリアちゃんは今度は私を真っ直ぐ見ます。


「お母様、学校であったこと、黙っていてごめんなさい。自分で解決できると思っていたのだけれど。」


リリアちゃん、一人でやる必要はないのよ。


「リリア、貴方に対する嫌がらせの背後には、王家に対する反感や不信があるのでしょう?それは一人で対処できるようなことではないわ。私たちスタイヴァサントが全員でやるべきことよ。」


リリアちゃんは頷いています。


「初めはあんまり気にするほどのことでもないと思っていたの。もっと重要なことが進んでいたし・・・

お母様、財務長官のこと、殿下からお聞きになったのですよね 。お母様にとっても非常に繊細な時期だったので、なるべく問題を起こさないように、と思ったんです。それに・・・これ以上、お母様が王家に対して反感を持たれるのも避けたいな、と。」


そこは王家ではなく、フィリップ殿下かしら。


「そうね。でも貴方ももう問題の大きさに気がついているわね。この国の女性の立場が悪化するか、改善するか、その瀬戸際に立っているの。私たちが団結して・・・」


言い終わらないうちに、先生が歓喜の声をあげました。


「奥様!いよいよ決心されたのですね!ありがとうございます!」


リリアちゃんも負けてはいません。


「お母様のご指導があれば、王妃が戦っても得られなかったことを成し遂げることが必ずできます!」


いやいやまあ、抑えて、抑えて。


リリアちゃんの面倒を見ていたバートさんが、目を白黒させながら、


「奥様、今度は一体何をされるおつもりなのですか?」


と、聞いてきました。バートさんに手短に何が起きているか説明します。バートさんは相槌を打つ余裕もないようで、口をあんぐり開けて話を聞いています。


「女性の地位の向上?社会を変える?お話が大きすぎて、想像もつかないのですが、できうる限りのお手伝いはいたしますが・・・

何をまずされるおつもりなのでしょう?」


バートさんは、いささか怖気付いているようです。


「そうね、まずは仲間を増やすことから始めるわ」


私にこの国を変えていくことができるかできないか、まずは、小さなことから試してみましょうか。彼を説得することもできないようであれば、私にこれをやる資格はないでしょう。


どちらにしても彼のお母様に頼まれてますしね。


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