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三日ぶりの王宮、謁見の間です。


ナイアック公爵に対する罪の告発と反論が陛下の前で行われます。その上で、ナイアック公爵に対して、陛下の御裁量が降ります。


今回は、フィリップ殿下が告発者なので、殿下は、陛下の前に立っています。殿下から体二つ分空けて、ナイアック公爵も同様に、御前に立っています。


王妃は陛下の横で席についていらっしゃいますが、自分の兄が罪を犯したという訴えを受けているということで、明らかに動揺しています。ですが、王妃の横に立つローランド殿下は、自分には関係ない、という表情を崩しません。

エドワルド王太子は、陛下の横に立ち、ナイアック公爵から目を離しません。

謁見の間には、リリアちゃんの婚約無効の時とは比べ物にならないほどの数の貴族たちが立ち並んでいます。


私たちは、居並ぶ男性貴族の後ろに立ち、 肩の隙間から、ようやく中央の様子が見える体たらくです。


王家の席の近くに立つ宰相が、開会の宣言をします。


まずは、フィリップ殿下が、


「ペルハイム・ナイアックを国庫の資金を横領し、着服した罪で告発いたします。ナイアックは、財務長官という、国の資産を守る重要な役にありながら、グリーンヴィル商会を使って架空の請求や、水増し請求を行わせ、それで得た資金を、あろうことか、グリーンヴィル商会と山分けすることによって、着服したという罪です。

先ほどお配りした書類は、スタイヴァサント侯爵家から提出された、財務省の帳簿とグリーンヴィルからの請求書、それに対する支払い、がまとめられたス、スプレッドシートです。

別欄にあるのは、グリーンヴィル商会が財務省からの発注に対して、実際に使った出金額です。

この三年で、グリーンヴィル商会は、財務省と12回の取引を行い、そのうち5回は完全なる架空請求であり、残り7回は40%からひどい時には、65%の水増し請求がされております。」


陛下がここで一度、手を挙げて、フィリップ殿下の言葉を遮りました。


「ナイアック公爵、なにか反論はあるか。」


ナイアック公爵は、収監されていた割には血色も良く、自信ある態度を崩しません。


「発言の機会をいただき誠にありがとうございます。

財務長官として、一介の商社に騙され、商社の言うがままに支払いをしてしまったこと、私の不徳の致すところです。

しかしながら、これは、商社が偽の請求書をあげて、我々を謀ったという案件です。

騙された我々財務省をなぜ罪に問われるのか、全く理解できません。」


フィリップ殿下が、すかさず、


「グリーンヴィル商会からは、横領で得た資金は、一部を残し、すべてナイアック側に渡していたという複数の証言を得ております。」


と、主張しました。


しかし、ナイアック公爵は、慌てず、


「私は受け取っておりません。私が受け取ったという明らかな証拠がない限り、公爵である私の発言を信ずるか 、それとも平民である商会の輩の証言を採用するかということになりますな。」


と、述べました。


確かに、グリーンヴィルの帳簿には、ナイアックに渡した資金のことなど、一切記載はありませんでした。そんなことは記載しません。当たり前です。


それを聞いていたフィリップ殿下は、ここぞとばかりにナイアック公爵に確認をとります。


「ナイアック、貴様は、平民の証言など取るに足らぬというのだな。貴族の証言でなければ、無価値であると。」


ナイアック公爵は、片方の眉を上げると、さも面白そうに、


「そうでなければ、この王国も、この社会も成り立ちません。」


と、言い返しました。


フィリップ殿下は、その顔を真っ直ぐに見て、


「では、貴族の証言を採りましょう。」


そして、振り返って、デュラント伯爵に、


「伯爵、証人を入廷させてくれ。」


と呼びかけました。


「はっ!」


と、答えた伯爵は、足早に出て行くと、すぐに、二人の男を連れて戻ってきました。


ラガーディア伯爵と、ニューアーク子爵です。



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