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パトリックさんが帰り、居間で、旦那さまの絵と相談中です。
ちょっとー、旦那さま、10冊は大胆すぎない?どこの帳簿をすり替えるつもりだったのよー。
ひょっとしてちまちま、ナイアック公爵が財務長官になったころから、時間をかけて調べるつもりだったのかな。独りぼっちだったもんね。
でもね、それはもう出来ないと思いますよ。事態は急激に動いてます。グリーンヴィルが公共事業に参入してくるのも時間の問題のようだし。そうなったらなお一層ナイアックは大胆に資金を横領してくると思います。
そしてその資金をより多くの貴族にばらまいて、ローランド殿下の後押しをするでしょうね。
そうよね。彼らに力を与えちゃいけない。人殺しできる人たちに権力与えちゃ駄目。貴方を殺せる人たちを、私は放っては置けないです。
さて、私たちの共同計画を進めましょう!
「先生、ジュリアちゃんと一緒に、練習帳簿を集めてきてもらえる?時間と日にちを開けて、不審がられないよう十分注意してね。
あとで、バートとヘンリーにお願いして、書棚に帳簿を隠せるところを作ってもらうわ。集めてきた帳簿はそこに保管してね。」
「わかりました」
先生が力強く頷きます。
「リリア、貴方はフィリップ殿下に相談して、殿下が帳簿を疑われないように受け取れる方法を考えてもらってちょうだい。王宮での帳簿のすり替えは、あの嫌味殿下にやってもらうから。」
「はい、お母様。」
リリアちゃんも戦闘態勢に入っています。
「私は、デュラント伯爵にお願いして、一時的にパトリックさんにスタイヴァサント家にルディの従者として入ってもらうわ。多少なりとも荒事になれている人に、殿下との連絡係をやってもらうほうが安心だから。」
リリアちゃんと先生、そして旦那さまに宣言します。
「ナイアックとグリーンヴィルが大勢の貴族を味方につけ、完全に力をつけてしまう前に、スタイヴァサントが叩き潰してやるわ!」