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数日後の夜、再びパトリックさんがやって来ました。
先生とリリアちゃんと一緒にお迎えします。
「既に伯爵には報告を済ませておりますが、グリーンヴィル商会について、気になる事実をいくつか聞き込んでまいりました。
まず、グリーンヴィルは5年前に設立された商会で、土木、建築を中心に商売しています。建築工事を請け負うと、地方から資材を購入するだけではなく、建築関係の人手の確保もしているそうです。」
うーん、ゼネコン?今も昔も土木建築関係は、税関係の不正の割合が高いのかしら。
「王宮の公共事業なんかにも食い込んでるの?」
パトリックさんは、その辺もきちんと調べていました。
「いえ、まだのようですが、その勢いはあるようですね。現在は王宮や公共事業に建築資材などを卸しているだけのようです。ですが、そのうち、公共事業を全面的に 請け負うのではないかという噂です。」
公共事業は、だいたい前払いでお金が入るから業者側からすれば、取りこぼしがないし、実入りが良いのですよ、いつの時代でも。
「公共事業を請け負うための有力者へのバラマキが、他の商社の間で囁かれてます。」
はあん。ウッドベリーはこの辺が気に入らないのね。善意で私たちを助けてくれたとは思いませんでしたが、私たちに協力してくれるその意図がわかれば、多少気が楽です。
「そういった賄賂資金はどこから入ってくるのかしら。
建築資材の売買だけでは難しいでしょう。立て続けに事業を請け負っているの?」
「いえ、土木事業はギルドがキツくて、なかなか新参者が参入しにくいのです。全面的に工事を請け負っている数は多くないはずです。主な収入源は、あくまでも建築資材の売買です。」
パトリックさんは、ここで眉を顰めて、なお一層声を落としました。
「口入れの方も、技術より、荒くれごとを平気で受ける奴らを、足元を見て安く雇い入れているようです。それに・・・巷では、そういった奴らに、得物を回してやっている、という話が流れています。」
リリアちゃんが、ハッとして、
「じゃあ、あの時の銃も・・・」
と、呟きました。
何はともあれ、スタイヴァサントには、より一層の警戒が必要だということだけは分かりました。
「で、グリーンヴィルが羽振りが良くなったのはいつ頃からなのですか?」
「三年前からと聞いております」
三年かー、結構最近だなー、危ないなー、どうしましょう。




