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夜更けに闇に紛れていらっしゃったのは、デュラント伯爵とその部下?さんでした。


部下さんは、なんだか私の男性版を見ているような・・・地味を絵にしたような方でした。ビジネスの調査と言われて、会計士風を選ばれたのでしょうかね。


デュラント伯爵からまず、ご挨拶とご紹介がありました。


「侯爵夫人、ご無沙汰申し上げております。

今日は、調査員のパトリック・ウィーラーを紹介がてら、アッシュワースの件、お詫びとご報告に参りました。」


私は急いでデュラント伯爵にお返事します。


「伯爵!お詫びするのはこちらの方です!私の至らない計画に携わったばかりに、大変ご迷惑をおかけいたしました。本当にお詫びのしようもございません。

その上、殿下から伺いましたが、責任を取って、辞職を願い出られたとか、すべては私の読みの甘さにあったのに、伯爵をそのように追い込んでしまいましたこと、どう償えばよいのかと・・・」


伯爵も私の言葉を遮るように、意気込んで言葉をかけます。


「いえ、奥様のせいでは決してありません。銃を使われることを全く考慮に入れていなかった私の手配の落ち度です。

この計画を安易に受けたこと、 殿下に叱られてしまいました。」


あっの野郎。


私の顔色から伯爵は何かを察したようです。クスッと笑いながら、


「どうやらリリア嬢を危険な目に遭わせたのが、かなりお気に召さなかったようです。

リリア嬢が、アッシュワースを馬車から蹴り落としたことを報告したら、腰が抜けてましたよ。」


それは私も反省しております。決してリリアちゃんを危険な目に遭わせるつもりはなかったのです。


「すべてが事後報告で、自分が計画に参加できなかったことにも拗ねてらっしゃるようですね。」


あれは拗ねてるなんて可愛いもんじゃございませんが、私は皮肉たっぷりに、


「では次の計画には、殿下に十分にご活躍いただきましょう。」


と申し上げました。伯爵は、


「その次の計画ですが、どのようなことをお考えですか?ビジネスに強い部下をご希望ということで、パトリックを連れてまいりましたが。

彼は、もともと商人の三男坊ですが、商人になるのを嫌って兵士になる道を選んだのです。信用おける者です。」


と、横に立つパトリックさんを紹介してくれました。

パトリックさんがようやく口を開きます。


「お初にお目にかかります。パトリック・ウィーラーと申します。伯爵様からご活躍のほど伺っております。

学校を出るまで、商人修行をさせられましたので、ある程度、商売のことは把握しております。私を存分にお使いくださいましたら光栄です。」


商売にコネがある調査員を使えるというのは、幸先がよいですね。


「私達は、ナイアック公爵の横領について、これから調べていこうとしております。公爵が、国庫から資金を横領している可能性について、主人が調べておりましたので、それを引き継いで調査するつもりです。」


パトリックさんがすかさず、


「スタイヴァサント侯爵は、どのような調査をしていらっしゃったのですか?」


と、疑問を挟みます。


「国庫の帳簿の調査です。

水増し請求や、架空請求が行われ、それで得たお金を自分の懐に入れていたのではないかということを調べていたようです。」


パトリックさんは、横領に関する知識をお持ちのようです。


「それは、相手業者あってのことですか?それとも単独で?」


的確な質問です。


「商会に、水増し請求などをさせていた可能性があります。」


パトリックさんが勢い込みます。


「どの商会かご存知で?」


「噂だけですが、グリーンヴィル商会の名前が挙がっております。」


パトリックさんは、しばらく考え込んでいました。


「・・・あまり聞いたことのない商会ですね。新しいのでしょうか?」


「そのようです。あくまで噂として名前が挙がったので、私たちにもまだ何もわかっていないのです。

そんな訳で、どのような商会で、どのようなものを扱っているか、景気はどうなのか、繁盛しているとしたら、いつ頃からなのか、その辺の基本情報をまずは調べていただきたいのです。

何か怪しい動きがあるようでしたら、またお話しさせていただくということでいかがでしょう。」


パトリックさんは、どこから始めたらよいのか、既に目算がついているようです。


「商務省にある商会登録を確認した上で、父の商売仲間などに聞き込みをしてみます。発見がありましたら早急にご報告いたします。」


デュラント伯爵とパトリックさんは、再び闇に紛れて出ていかれました。デュラント伯爵の、


「スタイヴァサント侯爵は、本当に家族に恵まれていらっしゃったのですね。羨ましい限りです。」


との言葉を残して。


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