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「侯爵夫人、お久しぶりです。」


「こちらこそ、ご無沙汰しており失礼いたしました。」


殿下がなぜいらっしゃったのかわからないので、まずは様子を見ましょう。


殿下は、多少皮肉を込めた声音で、


「しばらくお目にかからないうちに、何やら騒ぎが起きたようですね。」


と、おっしゃいました。


すでに全てお聞きですよね。お叱りにいらっしゃいましたか。この際、文句を言われるのは仕方がありません、謹んでお受けいたします。


「ご心配をおかけいたしまして、大変申し訳ございませんでした。浅はかな考えで、皆様の調査を危険にさらすような真似をしてしまい、お詫びの申し上げようもございません。」


殿下は、深いため息をつくと、


「デュラント伯爵は、今度のことの責任を取って、私に辞意を表しました。」


と、冷たい声で仰せられます。


ああ、しまった。彼に責任を負わすつもりは全くなかったのに。


「殿下、今度の計画は私が考え、デュラント伯爵にお願いして手伝っていただいたものです。

伯爵には、全く落ち度はございません。なにとぞ・・・」


殿下は、私の言葉をさえぎりました。


「伯爵にも落ち度はあります。そもそもこんなお願いは受けるべきではなかった。私がいたら、聞き入れていなかったでしょう。」


そうですか。そうですよね。わかってました。


「それでも責任は、私にあります。伯爵ではなく、私にけじめをつけさせてくださいませ。」


殿下はちょっと肩をすくめて、


「伯爵を辞めさせるつもりはありません。彼は今回の調査に非常に重要で、なおかつ我々に忠節を誓っている、貴重な戦力です。

今も、アッシュワースから、どの貴族に何が渡ったのか、見返りに何を約束したのか、証言をとっています。」


少しはお役にたてましたか。そうですか。でも問題は、そこではありません。


「ナイアック公爵の動きはいかがでしょう?何か感づいたような様子があるのでしょうか。」


殿下は渋々といった様子でお答えになります。


「今のところ特筆すべきものはありません。アッシュワースが銃を持って飛び出していったので、カーターの襲撃に行って、失敗したとみられているようです。焦って証拠隠滅を測っているような動きはありません。」


ふう。とりあえず危機を脱しましたか。


「しかし、今回の強引な計画の推進で、アッシュワースを早々に抑えてしまったので、ナイアックが使っている金がどのように集められているのか、それを調べる機会を失ってしまいました。」


え、いや、それはそもそもアッシュワースは知らないことではないでしょうか。そこまで私に責任押し付けますか。


「アッシュワースを泳がしても、そこまで判明したかどうか・・・」


また殿下に遮られました。


「言い訳はご無用。結果を出してください。

貴方はナイアックの資金源とそのカラクリを調べてください。

それが貴方のいう、責任を取るということではないですか。」


失敗を責められるのは仕方がないと覚悟していましたが、ああ、カチンと来ます。


「承りました。」


長々とお返事していると、つい言い返しそうになるので、短くお答えします。


殿下は、私が調査を請け負ったのを聞いて、お戻りになるようです。

部屋を出ながら、捨て台詞をお残しになりました。


「そもそも、貴方は、侯爵の調査を引き継いで、資金の流れを調べることに集中すべきだった。

まあ、これに懲りて、二度と荒事には関与しないことですね。」


うっさい!言われなくとも、わかっております!!




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リリア・スタイヴァサント視点


お母様が、ドスドスいわせながら、殿下とお会いしていた応接室から出てきました。


お母様はこうでなくっちゃ。


側にいた先生と素早く視線を交わします。万事計画どおり。


殿下ならお母様刺激できるかな、と思いましたが、うん、バッチリです。


さて、お母様、今度は何を思いつかれたのかしら。うふふ。ワクワクします。


考え込んでいたお母様が、顔をあげて、


「リリア、ウッドベリー商会にちょっと行って来ますね。」


と、おっしゃいました。


お母様ったら、一人で行かせませんよ。私も先生も同行します!


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