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殿下の眉が下がりました。


「あの、どうしてでしょう?」


昨夜リリアちゃんから話を聞いて以来、フツフツと煮えたぎっていた怒りがここへ来て表面化します。


「どうもこうもないでしょう!王家との婚約無効、一回ならいざ知らず、二回もさせるつもりはございません。たとえ無効であっても、人の口に戸は立てられませんわ!リリア、それはあなたも経験したでしょう?」


リリアちゃんも、ちゃんと身に覚えがあるようです。


「はい。先日ローランド殿下の取り巻きの方々に、結構言われてしまいました。」


プッツン。


「フィリップ殿下、殿下とのお付き合いは、あくまで偽装ですよね。この事件が解決したら、解消ですか?二度の王家との婚約解消で、リリアの将来は一体どうなるとお思いですか?」


殿下が、ハッとした顔をしていらっしゃいます。遅い!


「連絡を取り合うだけであれば、他にもいくらでも方法は考えられます!殿下のやり方は、全くスタイヴァサント、いえ、リリアのことを配慮していらっしゃいません。

リリアから情報を引き出すのも、赤子の手を捻るような容易さだったかもしれません。リリアもまだまだ未熟ですから。でも殿下は、既に成人され、外交の場にも何度も出ていらっしゃいます。

その貴方が、年端もいかない少女を利用して情報を得るとは何事ですか!このような方法を取られるとは、私には信じられませんわ。」


殿下は、恥じ入るように、視線を落とします。その先には、もっと恥いっているリリアちゃんがいます。

リリアちゃんは、昨夜私と先生に散々叱られましたからね。


「誠に申しわけない。王家の、いや、兄上の危機であると、気持ちが焦ってしまいました。リリアさんへのアプローチも性急だったことは否めません。」


殿下は、今度はリリアちゃんに向かって話かけます。


「リリアさん、すまない。」


あら、一応謝ることのできる人なのね。一連の事件を通じて今回初めて王家の人から謝ってもらったわ。


リリアちゃんはリリアちゃんで、自分のやったことの責任を転嫁するつもりはないようです。


「いえ、殿下。私の思慮が足りなかったのです。安易に殿下に情報を漏らしたのも私です。殿下が強制したわけではありません。」


リリアちゃんは、ほぞを噛むとは、こういう顔をいうのか、という表情です。しかし、殿下も負けていません。


「スタイヴァサント夫人、非難はすべて私が引き受けます。リリアさんを追い込んでしまったのは、私ですから。」


「いえ、お母様、私が・・・」


あらら、庇いあってるの?そうなの?ちょっと待って頂戴。ひょっとして私は馬に蹴られて死んじゃう方向に向かっているの?


「リリアさんとのおつきあいは認めていただけないでしょうか。すべての責任を取る覚悟はあります。決してリリアさんを傷つけるようなことはしません。」


うーん、まあ、既にデートしてるし、皆の前でダンスもしてますよね。なかったことには出来ないのかしら。


ぶっちゃけ殿下の参加は、私たちの調査にとって、棚からぼたもちであることは否定できません。停滞していた実行部隊が手に入ります。もし殿下が敵側と内通していたら、と、昨夜は肝を冷やしましたけれど。


ここはうまく利用した方がよいのかしら。


「わかりました。極偶にリリアにお会いになるのは、お止めいたしません。ただ、スタイヴァサントは、ローランド殿下のこともあるので、フィリップ殿下とのおつきあいには積極的ではない、という姿勢は貫きます。」


殿下は明らかにホッとしていらっしゃいます。


「ありがとうございます。」


でもね、覚えて置いてね、殿下。貴方は王家のことをまず第一に考えていらっしゃるのでしょうが、私は、スタイヴァサント家のことを優先してますからね。


いつかこの二つが相容れなくなる時が来たら、私は迷わず後者を選びますからね。


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