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33 リリア・スタイヴァサント視点 (1)

お母様は変わりました。


誰がなんと言おうと変わりました。しかも、とっても良い方向に。


もし、この喜ばしい変化の原因が、私の婚約破棄、いや、婚約無効にあるのであれば、ローランド殿下万歳!です。


「あら、リリアさん、今日の夜会でお見かけするとは思いませんでしたわ。しばらくこう言った華やかなことは避けられるとばかり思っておりましたのに。」


通りすがりに、嫌味たっぷりな視線と言葉を投げかけて来たのは、この夜会の主催者でもあるラガーディア伯爵の令嬢です。


私は、今日もお母様の指令で、先生と一緒に夜会に来ています。


「エレノアさん、お久しぶりでございます。本日はお招きいただき、ありがとうございます。母が、いつまでも父を思って泣き暮らしても父が喜ばないので、お友達と会うようになさい、と、申しますもので。最近は、夜会にも出席させていただいております。」


エレノア・ラガーディア伯爵令嬢は、


「あら、私はあなたのお父様が亡くなったことを申し上げてるわけではなくてよ。」


と、捨て台詞を残して、歩き去って行きました。


わかってますよ。婚約破棄じゃない、無効のことを言っていることはね。はい、はい。


近くで聞き耳を立てていた、ジョージアが、憤慨したようによって来ました。


「リリアさん、エレノアさんの言うことなんて気にする必要はありませんわ。あの方、どうやら、リリアさんの後釜を狙って、ローランド殿下に取り入ろうとしてるから、あなたのことが気に障るんでしょう。」


じゃあ、招待しなけりゃいいのに。ああ、憂鬱。


「エレノアさんもなかなか結婚が決まらないから、ラガーディア伯爵が何度も夜会を開かなきゃならないのよ。あの性格じゃ、殿下から選ばれるとは思えないから、片っ端から年頃の男性を呼び集めてるらしいわよ。」


私の親友でもあるジョージア・ユークリス伯爵令嬢はなかなか毒を吐きます。


私は表向き、新しい婚約者を探しているということになっているので、まだ喪が残っているにも関わらず、積極的に夜会に参加している、ということになっています。なので、とりあえず疑われないよう、そこらかしこで、「新しい婚約者探してます!」って、宣伝してます。ダブル憂鬱。


あえて明るく、


「私も適齢期の男性になるべく多く会わなくちゃならないから、こう言った夜会は大歓迎よ!」


と、言って見ました。ジョージアも同じ目的で夜会に来ているようです。


「私だって御同様。いい人の目に止まるよう努力しろって、親が煩くて。」


ジョージアほどの美貌なら、そんな心配はいらないと思うのですが。性格だって、私のお墨付きです。まあ、時々毒を吐くけど。そのジョージアが特ダネをもたらしました。


「今日は、ローランド殿下も、フィリップ殿下もこの会にお忍びでいらっしゃるという話だから、って、強制参加よ。」


えー、めんどくさい。こちらに落ち度はないけれど、ローランド殿下と顔を合わせるのいやだなぁ。いつかはどこかで顔合わせなきゃいけないとは思っていたけれど。トリプル憂鬱。


「・・・先生、私、レディの控え室に下がってていいかしら?」


先生は、心配そうに眉をひそめています。


「リリアさん、疲れているのですか?」


ここは正直に言っちゃいます。


「いえ、話を聞くだけなら控え室でもできるし、早々にローランド殿下と顔を合わせたくないの。」


先生は、私の気持ちを察してくれました。


「では、私もご一緒しますわ。」


先生は、素晴らしい人です。お母様の信頼絶大です。だから、夜会でもどこかでちゃんと私の行動を見張・・・見守ってくれています・・・いや、夜会で話を聴きこむぐらい、私一人でも大丈夫だから。任せてくれないかなぁ。


「いえ、先生は会場で皆さんの話に聞き耳を立ててください。二手に分かれた方が効率がよいでしょう?」


先生は少し考えて、頷かれました。


「そうですね。では、後ほど。」





のびのび。あぁ。誰もいない部屋で足を投げ出しちゃいました。


いかん。


早速レディの控え室に行きましたが、パーティーも始まったばかりなので、控え室には誰もいません。なんのために私は夜会に来てるのよ。引きこもってちゃスパイ失格だわ。


正直言って、こと調査に関しては、お母様は先生をすごく頼りにしていらっしゃいます。目と目で語り合っているというか、つうと言えばかあ、というか・・・私はなんだかえらく安全な任務を割り振られて、目ぼしい成果もあげていません。焦る。


自分でも情けないとは思うのですが、ついつい、先生にヤキモチを焼いてしまいます。先生ったら、あちこちに出かけて、あっという間に各商店に帳簿を配置してしまいました。それを幼いジュリアちゃんにしっかり監視させています。ダブル焦る。


対抗意識がムラムラと湧いてきました。


このまま引っ込んでいても、出張ってきた意味がありません。大広間に行かなくてもできることはあるはずです。(此の期に及んでと言われても、まだ、行きたくないの)


裏で、使用人さんたちに聞き込み調査することにしました。先日お母様が、ナイアックが、夜会の花やお酒を、他の貴族に付け届けしている、と、話してくれました。ひょっとしたら、この夜会の花もそうかもしれません。


使用人さんたちに、


「素敵なお花ね、どこで頼んだの?」


と、聞くぐらい、どうってことないでしょう?


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