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先生が書斎に戻ってくると、ようやく落ち着いて3人で話が出来るようになりました。使用人さんたちは、私たちがリリアちゃんを必死で慰めている、とでも思ってくれるでしょう。
クリスティーナさんが本当は誰で、どうしてあのような芝居をしたか、の説明を、旦那様の死に言及することなくするために、必死に知恵を絞りました。まずは、当たり障りのないところから。
「お父様は、生前、財務省で何かの不正を調査していたようです。クリスティーナさんのお兄さんは、お父様に頼まれて、調査のお手伝いをしてくれていたんです。どうやら、かなり秘密裏に調査を進めていたようで、クリスティーナさんは、私たちに身元を偽って接触する必要があると考えていたようです。私たち家族のことは信頼してくれましたけど、使用人から調査のことが漏れるかもしれない、とね。だから、あのような芝居を打ったんです。クリスティーナさんは、本当にお父様の愛人ではありませんよ。」
リリアちゃんは、しばらく黙って考えていましたが、徐に口を開きました。
「お父様は、何か大事な調査をしていた・・・」
「そうです。」
「そしてその調査の最中に亡くなった・・・」
あら。
「それも不慮の事故で・・・」
えーと。
「調査に協力してくださってた方も、命の危険を感じている・・・」
まあ、そうですが。
「つまりは、お父様の死には不審がある、お父様は殺されたかもしれない、ということではないのですか?」
うわー。
リリアちゃんは、驚愕の憶測を、非常に冷静に、淡々と述べました。これだけは、リリアちゃんに言いたくはなかったのですが、聡いリリアちゃんのことです、もう隠すことは無理と見ました。
「お母様と先生は、お父様の死に疑いを持っていて、独自に調査していらっしゃるのですよね・・・私も参加いたします。」
「「ダメです!!」」
期せずして、先生と私の声が重なりました。