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リリアちゃんは、そのまま部屋の中に駆け込んできて、クリスティーナさんに詰め寄りました。


「嘘に決まってる!お父様は、お母様のこと何よりも大事にしてたもの。こんな事する人じゃない!」


リリアちゃんの後から事情を知る先生が飛び込んできました。


「リリアさん!何をしているの!ここはお母様にお任せして、お部屋に戻りましょう!」


何を言っても今のリリアちゃんには何も聞こえないようです。さらに言い募るリリアちゃんに、クリスティーナさんは、もう既に、自分の役割を忘れています。


「お嬢様、ごめんなさい・・・そんなつもりは・・・本当にお気の毒です。」


クリスティーナさんには、これ以上の悪役愛人は無理そうです。(根が善人ですからね)


私は、先生に目で合図を送り、開け放たれている書斎のドアを閉めてもらいました。おまけに先生は、閉じられたドアに、耳をつけて、人の気配がしないか探っています。(本当に優秀な探偵だわ)


リリアちゃんやルディ君に、できれば内緒で事を進めたかったのですが、これ以上は無理でしょう。まあ、クリスティーナさんの正体をバラすとして、侯爵の事故に怪しい点があることは、どうにか隠さなくては。うーん、これは難題です。


「リリア、一体、何を騒いでいるの?」


「エイミィが、バートと話しているのを聞いたんです。お父様の愛人と名乗る女が、お金を強請りに来てるって。」


「いえ、そうではないのよ。バートにはそのように見えたかもしれないけれど、ワンダさんは、お父様が注文していたものを届けてくださって、その代金をお支払いしているところなの。このお金は、正当なものなのよ・・・」


リリアちゃんは、いきなり私の手から小袋を取り上げ、中のお金を確認します。


「お母様、この金額・・・、いったい、お父様は何を購入されたのですか?」


「えっと、宝石よ」


「どれですか?」


「銀行の金庫にしまってあるわ。」


「請求書は?」


リリアちゃん、一度は、この家の帳簿を預かろうとしただけに、なかなか鋭い。おまけに引き下がるつもりはないようです。


先生もドアから離れ、援護射撃にやって来ました。


「リリアさん、お母様のお邪魔をしてはいけないわ。お任せしましょう?」


リリアちゃんは、尚一層疑いを深めたようで、先生にも鋭い視線を投げかけます。


「先生、いったいお母様と一緒に何をやっているんですか?この間から、二人でこそこそと。どうして私は蚊帳の外なんですか?この人のせいなんですか?」


と、またもやクリスティーナさんに冷たい視線を向けます。クリスティーナさんは、もう小さく萎縮して、あわあわしてます。


クリスティーナさんには受け答えは無理と見て、私が仕切ることにしました。


「とにかく、愛人云々は、誤解です。でも、使用人さんたちがそのように思っているのであれば、そのままにしておきましょう。」


いや、これは苦しい。我ながら酷い。


「だからお母様、なぜ?本当の事を聞くまで、私はこの場を下がりません。」


リリアちゃんは腕組みをして、その場に座り込んでしまいました。クリスティーナさんは一刻も早く街を出なければならないのに、ここでリリアちゃんに粘られると、彼女の危険が増すのではないかと気が気ではありません。正体不明のネズミが徘徊しているのなら、なおのことです。


えーい、ままよ。


「クリスティーナさん、これは当座のお金です。それと、これが、ハンプトンへの手紙。ここに長くいればいるほど危険です。すぐにハンプトンへ発ってください。こちらへ戻れるようになったら、領地の代理人を通して連絡を入れます。」


見上げるリリアちゃんの口がガクンと開きました。呆気にとられて、言葉もないようです。


「お金が足りないようであれば、代理人に請求してください。私たちのために、こんな目に会わせてしまって、申し訳ないわ。でも、あなたとお兄さんの安全のためよ。お兄さんに連絡を入れるのも、偽名を使うなりして、用心してちょうだいね。万が一を考えてのことだけど。」


「クリスティーナ???ワンダじゃないの?」


リリアちゃんの呟きが聞こえます。


「リリア、後で全て説明します。今は、クリスティーナさんを無事に屋敷から出してあげることを最優先しなくてはなりません。いいわね?」


「え、ええ、お母様・・・」


「今から、一芝居打つけど、あなたは、黙って見ているか、クリスティーナさんに怒ったふりをしなさい。わかった?」


「怒った振りは、(お母様)を対象でよいですか?」


そういって立ち上がると、リリアちゃんは、まず、眉にシワを寄せました。


リリアちゃんに構わず、私はクリスティーナさんに声をかけます。


「クリスティーナさん、用意はいい?」


命に関わると聞いて、クリスティーナさんも覚悟を決めたようです。


「・・・はい、奥様。」


私は、声を荒げました。


「二度とここへ来ないでちょうだい!今度顔を見せたら、叩き出すから!先生、この人を追い出して!」


先生は素早く頷くと、クリスティーナさんの腕を掴んで、部屋から引きすりだします。リリアちゃんはその後ろ姿を睨みつけます。


・・・どうか、ご無事で。


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