表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/105

1

(!子持ちかよ!)


頭の中に浮かんだ第一声はこれでした。


「お母様!」


と胸に縋る、少女(中坊かしら?)を反射的に抱きしめます。いや、幾ら何でも涙の止まらない子供を押しのけるほどの人でなしにはなれなかっただけです。しかし事態を把握できず、こっそりあたりを見回しました。何かのパーティーのようです。


婚活パーティー?そういや、積極的に参加しようと自分に誓ったばかりですが・・・おまけに皆、仮装してます。仮面がないだけで、まるでヴェニスの舞踏会ですね。こっぱずかしくなるぐらいきらびやかなドレスを着ているし、髪は鬘なのかしら?色とりどりです。


腕の中の少女がまた泣き声をあげました。


「お母様!」


つい声の方を向くと、震える小鳥のような子供が、私を見上げています。なんて声をかけて良いやら、全く見当がつきません。私のことよねぇ。なぜこの子は私を母と呼ぶの?


少女の背中に向かって、正面に立つ少年が荒げた声を投げつけました。


「よって、リリア・スタイヴァサント、お前との婚約は破棄する!」


少女は私の腕の中で気を失いました。


私は少女の重さに絶えかねて、彼女を抱えながら膝を着きます。事態を把握した数人の男性が駆け寄り、少女と私を助け起してくれます。私の腕から少女をすくい取った男性が、


「どうぞ、こちらへ」


と呼びかけます。何が起きているのか、全く理解できませんが、私のことを母と呼ぶ少女(リリアなのでしょうか?)を放っておくこともできません。おまけに、ここに残れば、一人で注目を浴びなければならないようです。


すでに視線が痛いくらい突き刺さってきます。リリアを抱える男性を、顔を伏せたまま、小走りに後を追いました。


連れてこられた場所は、先ほどの大広間からさほど離れていない、一見書斎のような場所です。大きなデスクの横に長椅子らしきものがあり、少女はそこにゆっくりと横たえられました。(うん、リリアちゃんと呼ぼう)


「大丈夫なのでしょうか?」


と尋ねると、男性は、


「おそらく衝撃で気を失われたのではないかと、気付け薬を持ってまいりますので、少々お待ちください」


と返事をし、部屋を早足でていきました。リリアちゃんの様子をそっと探ると、胸がかすかに動いています。青白い顔ですが、すぐにどうこうということはなさそうです。私にできることもなさそうなので、ちょっと後ろめたかったのですが、まず、この訳のわからない状況を把握しようと立ち上がりました。


立ち上がった拍子に、デスク近くの姿見に映った自分の姿が目に飛び込んで来ました。引っ詰めて後ろでお団子にしたサンディブロンドの髪。ほっそりして血の気のない顔。見つめ返す瞳はグレーに近いブルーです。ほとんど喪服といってもよいような黒い飾り気のないドレスを着ています。


鏡に向かい、手をあげて軽く振ってみました。鏡の中の女性も、同様に振り返して来ました。


衝撃が走ります。


「転生だ!」


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ