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「いったい何に取り憑かれたらこんなこと考え付くんだか。」
馬車の中で、マーティアン先生に散々ぼやかれました。私は、両手を手のひらを上にして突き出しました。まずは右手を上げて、
「家名」
左手を上げて
「命」
と、両手に持っている物を確認します。両手をしばらく上下させて、その価値を比べた後、左手を高々と挙げました。
「命」
こっちの方が断然大切ですもん。
先生も諦めません。
「でも、お子さん方は、お父さんに愛人がいたなんて聞いたら、どう思うでしょう。傷つくことになりませんか?」
「まあ、一時的には。後で、あれは愛人詐欺だった、お父様は潔白でした、と訂正することにしましょう。」
再度左手を挙げます。
「命」
万が一を考えないと。
馬車が邸宅に到着すると、その子供達が弾丸のように外に飛び出して来ました。
「お母様!」
「遅かったから心配しました!」
リリアちゃんの目には、うっすら涙さえ浮かんでいます。確かに父親が亡くなって以来、子供達の心が不安定であることを過小評価すべきではないですね。
ベッドに入る用意をしていると、ルディ君が寝室に入ってきました。
「お母様、今日は一緒におやすみしちゃ、ダメですか?」
よっぽど心細かったんだろうな。
「いいわよ。」
ルディ君と並んでベッドに入っていたら、リリアちゃんもコンコンとノックして入ってきました。
「お母様、私もご一緒していい?」
3人で川並びで寝ます。ルディ君もリリアちゃんも早々に寝入ってしまいました。でも私は子供と一緒に寝た経験がないせいなのか、なかなか寝付けません。(成長盛りのルディ君が、やたら布団を蹴飛ばすせいかも。)そのうちリリアちゃんの寝言が聞こえて来ました。
「お母様。」
ごめんね、リリアちゃん。お母様の魂は、この体のどこかにひっそりと隠れているんじゃないかな。ご主人の死のショックと娘の婚約破棄の騒動で、ずっと奥の方に引っ込んじゃったんじゃないかと思うよ。どうしてかはわからないけど、その隙に私の魂がお母さんの体を乗っ取っちゃった。ずうずうしいよね、ごめん。おまけに異世界転生するぐらい生き汚い私のこと、この体から出て行くことはないかもしれない。出て行く方法もわからないけど。
ああ、ホント、罪悪感で一杯。せめてもの償いに、しっかり二人は守らせていただきましょう。
皆様、引き続きのブックマーク、評価、ありがとうございます。各章の厚みにばらつきがあって申し訳ございません。今回はここまでです。感想をいただきました皆様、お返事が遅れたこと、重ねてお詫び申し上げます。感想のお返事にも、『確認』と『実行』があって、以前書いたお返事が送られていないことに気がつきました。お返事再送させていただきましたが、もし重複してましたらごめんなさい。捨て置いてくださいませ。素人仕事と笑ってやってください。引き続きよろしくお願いいたします。