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「夫人に早々に就任してお仕事を始めていただくためにも、私の戴冠式も簡略に、なおかつ早急に行います。

それまでに陛下には、えーと、陛下には・・・」


エドワルド殿下のためらいに気がついたヘンリエッタ夫人がすかさず助け舟を出します。


「陛下は私が引き受けますわ。私の領地に連れ帰ります。ご心配なく。」


うっ。陛下どんな扱い受けるんだろう。聞きたいような聞きたくないような。事情を知るデュラント伯爵と、マーガレット王女、そして私は、三人が三人とも白目になってしまいました。


一番最初に立ち直ったマーガレット王女が、


「あら、ヘンリエッタ、領地に戻るの?」


と、聞いています。


「ええ、久しぶりの王都も楽しかったのですが、領地管理もありますし、近日中に一旦引き上げます。」


そして、私の方を向くと、


「でも、これからはちょくちょく王都に顔を出しますわ。貴方が、お仕事ばかりにならないよう、私が王宮から引っ張り出しますわね。未亡人の楽しみは、色々ありますのよ。」


うわ。

まあ、ここで負けてはいられません。


「まだ、未亡人としてはひよっこなので、頼りにしてますわ、ヘンリエッタ様。」


デュラント伯爵は鼻白んでいますが、マーガレット王女は大笑いしながら、エドワルド殿下の方へ向かいました。


さてと、別室で心配している人たちを待たせちゃいけないわね。


デュラント伯爵が、退出する私を見送ってくださいました。


「ヴァネッサ様、改めてもう一度お礼を言わせてください。貴方のおかげで私は姉を取り戻すことができました。長い年月、妄執に取り憑かれていた姉も私も、前を向いて歩くことができます。」


デュラント伯爵は、素早く私の手をつかみました。


「デュラント伯爵・・・」


伯爵は私に最後まで話させる気はないようです。


「いつの日か貴方が、スタイヴァサント侯爵の元を離れ、踏み出されるのではないかという希望を持ちながらお待ちしております。」


なんてお返事すればよいのでしょう。私の中の暖かい光(旦那様)が消えることはないのでしょうが、デュラント伯爵の手から感じる熱は、不思議なほど現実感を持っています。


「ありがとうございます、デュラント伯爵・・・でも今の私には、お返事の差し上げようもないわ。」


伯爵はじっと私を見つめると、


「ヴァネッサ様、オリヴァーとお呼びください。

お返事を期待していた訳ではないのです。私たちもこれから大きな変革の波を乗り切らなくてはならないでしょう。

私は何時でも貴方のお側におります。その覚悟であることをお伝えしたかったのです。」


と、おっしゃいました。


そうか、側にいてくださるのか。その言葉は思いもかけず私の心を揺さぶりました。

旦那様には会えなかったからなぁ。

何時か、側にいてくれる人が欲しいと思う日が来るのかしら?この手に感じる温もりを大切に思う日が?


まあ、その日が来るまで待ちましょう。


「そう、これからですよね。」


タッパンもこれから、そしてスタイヴァサントも私もこれからです。私の未来も、どうなるかはわかりません。なにせ私は未亡人1年生なんだから。





控え室に向かう廊下で、待ちきれなくなった私の愛しい金色の弾丸君が、例のごとく飛び込んできます。


「お母様、国家転覆できたの?」


旦那様と同じ瞳が私を見つめ返します。


貴方のために、貴方と共に。


「まだまだこれからよ!」


私の子育て(国造り)は、続きます。


The End

お読みいただき、ありがとうございました!ご挨拶を活動報告でさせていただいております。そちらの方もよろしくお願いいたします。

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