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即興小説トレーニング

虹の麓

作者: 鴨の土師

虹の橋を渡れば、愛犬と共に天国に行けると聞いたのはいつのことであっただろうか。


確か、私が小学生の時に飼い犬のジローが老衰でもう長くはないと知り、泣き喚いていたときに手を優しく握ってくれた隣の家のお姉さんの言葉だった。


私を可愛がってくれたお姉さんの優しい声と手の暖かさは今でも思い出せるほど鮮明だが、顔はもう思い出せない。




窓から土鳩の鳴き声が聞こえてくる。


いつもと代わり映えのない朝を迎え、無意識にテレビの電源をつけ、トーストを焼き、コーヒーを入れる。


テレビに映し出された朝のニュースは最近逮捕されたシリアルキラーについて掛り切りだ。


どのテレビ局もライバルを出し抜こうと、彼の少年時代を過ごした近隣の人や学校の同級生へインタビューをする。


あまりにもセンセーショナルな犯行内容と裏腹に余りにも変哲のない少年の頃や学生時代の話が掘り出され、電波に乗って流され、また人々の記憶に埋もれていく。なんてもない日々の営みである。


だが、今日に限っては1人の女性のインタビューが心に残ったのだった。


それは彼が少年時代、飼い犬を可愛がり、毎日のように夕方散歩に出ていたという話だった。


その話を聞いたとき、私の脳内には幼い頃聞いた虹の橋が思い浮かんだ。彼はおそらく死刑になるだろう。先に天国へと繋がる虹の麓の草原へと導かれた彼の愛犬とは、また出会うことができるのであろうか。


彼は天国に行けるはずのない人間である。何の罪無き人を多数殺した極悪人である。だが身体が朽ちることなく草原で待ち続ける愛犬のことを考えると、深く考えさせられる。


何も彼が生まれた時からそのような蛮行を行うとはつゆほども思っていなかっただろう。


ふと思った。私は虹の麓の草原へたどり着くことができるのであろうか。

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