第7話
この前はすごい短い話だったので、今回は長めにしたよ(? )
いや、小説は量より質!
ぜひクレージー・スクールを楽しんでいってください!
私は皐に問いかけた。
「ねぇ、毒キノコって何色かな? 」
私は皐に、黄色のキノコを片手に問いかけた。黄色はかなり毒キノコっぽいかな? なんて思いと、ゴキから早く逃げないと! っていう思いを胸にとったキノコだったから、あんまり毒キノコっぽくなかったらどうしようなんて思って、皐にこの質問をしたのだ。
「黄色はいいと思うけど、やっぱり毒キノコと言ったら紫じゃない? 」
確かに紫も一理ある。
あの時、パッと冷蔵庫を見たときは、黄色と紫と茶色と白のキノコがあったから、黄色を取ったわけだけど、
どれが一番毒キノコっぽい?
!?
いいこと思いついちゃった〜!
「この携帯電話でさ、メールで、色んな人に、
『毒キノコっぽいキノコは何色? 』
って質問して見ない? 」
我ながら名案!
なんて、自画自賛みたいなことを思いながら、ドヤ顔でそう言った。
「おぉ! 流石偏差値86! 」
「偏差値は87ですー! 」
くだらないことにツッコミを入れながら、内心皐に褒められて、気分がとてもいい紫織であった。
「じゃあ、早速聞いてみますか」
**
集計の結果を早速見て見た。
そして、算数専門教室の部屋の中にある紙と鉛筆で集計の結果を書き写す。
「黄色3人、紫5人、茶色0人、白4人! と言うことで、皐が言ってた紫がトップだね! 白も意外に多かった。まぁ、当たり前だけど茶色はすくないねー」
正の字で集計をとったらこんな結果になった。んー。黄色って少ないのか〜。
ってことは……。
「また食堂に行かないとじゃーん!
ゴキブリ嫌だーーー! 」
算数専門教室で膝を地面につき、床を叩く。なんてこったい! 行きたくないやい!
こんなセリフ、聖ハスカ1の天才少女が言っていいのか!?
チラリと時計を見る。
まだ2時30分〜!?
明らかに時間が過ぎるのが遅過ぎるんだが。
確か、私が3歳の時、お母さんが言ってた。
『時間が経つのが早いと感じるときは、その日にしたことが楽しかったってことだよ。逆に長く感じるときは、今してることが楽しくないってことなのよ』
って。
ってことは、今してることは、私にとって楽しいことではないってことだね。当たり前か。この状況を楽しめるって、どんなアホだよ……。
「いやー、でも、ちょっとこの殺人ゲームが楽しくなってきましたな〜」
皐がそんなことを言った。
……。
ここにアホがいた〜〜!
「どこが!? この状況のどこが楽しいの!? 」
私は少し怒りをぶつけるかのような言い方で、皐にそう言った。
皐はヘラヘラした顔で、
「先生殺せるかもなんだよ?
すごい楽しみじゃん! 人生初の人殺しだよ!? 」
そゆことね。。。
**
食堂に行って、息を潜めながらキノコを黄色から紫に交換した私と皐。
その後、終了時間まで異常に暇になりそうだから、図書室にでも行かない? なんて話になって、今は図書室に向かってるところである。
「しかし、こうして歩いてみると、うちらの学校校舎って、大きいんだなーって感じるよね」
皐がスキップをしながら言った。
「そ、そそそ、そうだねぇぇぇ! 」
そのスキップしながら進む皐を、全力ダッシュで追いかける私。
今この瞬間分かったこと。
それは、
足の速いやつはスキップも速い!
ということである。
「皐! 速い! 一回止まれバカ! 」
皐に怒鳴りつけながら言う。
皐はその私の言葉を聞くなり、
急いで足を止めた。私と皐とは、軽く100メートルは離れてる。
遠い!
「もう! 皐は足が早すぎ! 」
私は怒鳴ったつもりなのに、皐はニコニコしながら、「ありがとう」なんて言った。まったく。おめでたい人だ。
「ほら、そんなこんなでもう図書室の前まで来たよ! 」
皐はまるで話をすりかえるかのように、いきなり話を変えた。
まぁ、図書室の前についたことは事実なのだが。
うちの学校の図書室には、
本が3万冊ある。それが全国の図書室的に見て、多いのか少ないのかなんて分からない。
因みに喩菜ちゃんは、小5の時うちの学校に来て半年でこの図書室の本を全巻読み終わったって。半端なすぎだろ。
私ですらまだ2万冊とちょっとぐらいしか読んでないのに。
あ、因みに私は近くの図書館の本は
料理とかスポーツ関連の本以外は全巻読み終わったけどね。
(チョロイチョロイ! ドヤ! )
「う〜……。本を見ると吐き気がする……」
そう。そして皐は、本を読むのが大の苦手なのだ。スポーツ関連の本は読むし、新聞も読むくせに。
それに、本苦手なのになんで図書室きたし。まぁいいや。
「まぁまぁ。ほら、ここに野球のコツって本があるよ! 」
「それはもう読んだ……」
「……。ほ、ほら! ここにはサッカー少年物語ってのがあるよ! 」
「それももう読んだ……」
「……じゃあバスケ部に入ってから人生が変わったって本は!? 」
「読んだ……」
イライライラ!
「てめぇは
『ハ○ー・ポッ○ー』
でも読んでろ! 」
私は分厚い
『○リー・○ッター』
の本を皐に押し付けながら、
『15少○漂流○』
を手に取る。そして、早速ページを開いて読み進める。
この時、私も皐も、今殺人ゲームの真っ最中だと言うことをすっかりと忘れていた。(キノコのことも)
**
コンコンッ!
扉のノックする音が聞こえて、ハッとした。本を読み進めていて、時間が過ぎるのを忘れていた。
扉がガラガラッ! と開くと、そこからは喩菜ちゃんが出てきた。
「あ、もう先客がいた」
さっきのヤンキーモードとは似ても似つかないぐらい可愛らしい声で喩菜ちゃんはそう言った。
喩菜ちゃんも怖いけど、先生じゃなくてよかった……。
「喩菜ちゃん! ヤッホー!
喩菜ちゃんは図書室の本全巻読んだはずだよね? なんで図書室に来たの? 」
皐は、喩菜ちゃんが入って来たことを確認するなり、すぐにそう質問した。
「なんか、落ち着きたくて……」
喩菜ちゃんは、ふわりと優しい笑顔を浮かべ、目を細くして、そう言った。
「だよねー。分かる!
私もさ、こんな狂ってる現実の中、ちょっと一息つきたいなーなんて思ったんだよねー」
コクコクと頷きながら、喩菜ちゃんに共感してみせた。
「あ、そういえば……」
喩菜ちゃんは、突然斜め上の方向を向き、口をポカッと開けて、そう言った。
「さっき、メールで
『毒キノコといえば何色?
黄or紫or茶or白? 』
って質問して来たけど、あれって何? 」
あー。そっか。すっかり忘れてた。
みんなには、何をするかの理由も教えないで聞いたんだったなー。
だれも何をするかなんて聞いてこなかったけど、疑問に思うのも当たり前か。
そんなことを思いながら、喩菜ちゃんには特別に理由を教えることにした。
「あのね、実は、先生を毒殺させようと思うんだよね……」
「え!? 」
私の言葉を聞くなり、喩菜ちゃんは目をまん丸くさせて、まるで漫画みたいに、手を顔の横に出して、驚いた。
「で、でも、その机に置いてあるキノコは毒キノコじゃないよね……? 」
ん? これは普通のキノコ……。
あ、そっか!
「あー違う違う。毒殺っていうよりも、勘違いって言ったほうがいいかな?」
そして私と皐は、喩菜ちゃんに簡潔にわかりやすく先生を殺す方法を教えた。
「そういうことか。
でも、そんなに先生を簡単に殺せるかなぁ……」
喩菜ちゃんもやはり、私たちと同じ疑問を持った。
まぁ、そりゃあそうだよね。
あんなにたくさん人を殺してるクレージーな殺人鬼を、勘違い毒殺なんていう、簡単な方法で倒せないよなぁ〜。
「んー。やっぱり、正々堂々、ナイフで殺したほうがいいかなぁ」
皐は『ハリ○ポッタ○』の本を抱えながら、頭も抱えた。
皐は簡単にナイフで殺すなんていうけどさ、それもそれでかなり勝率は低いと思うんだけどなー。
きっとこう思うのも、私だけではないはず。
「ふーん。きーちゃった、きーちゃった! 僕を毒殺? 出来るといいねぇ」
な!?
この声。このトーン。この喋り方。
まっさか……。
「「「小川先生!? 」」」
私と皐と喩菜ちゃんは、同じタイミングでそう言った。
ちなみに、私たちの担任の先生は、小川幸秀先生だからね。
ってか、毎回思うけどどっから出て来てんだよっ!
この前はパソコン室の変なところから出て来たし、今回は図書室の先生の机から出て来たし?
あー! いちいちキモい!
「ふーん。僕を毒殺?
しかも本物の毒じゃない?
全部聞いちゃったから、この作戦は台無しだね。でも、僕を殺そうって考えを出した君達は、すごいと思うよ。
その勇気に免じて、殺してあげるよ」
はいクソ〜! はいゴミ〜! はい死ね〜!
マジで何考えてんだ殺すぞ殺すぞ? てか死ねよ。
「何が殺してやるよだ、寝ぼけてんじゃぁねぇぞ! 」
皐が急に先生に怒鳴りつけた。そして、手に持っていた
ハリーポッ◯ーを先生に投げつけた。
さすが運動の天才、オリンピック候補者。
先生に見事にヒット! さらに、先生の頭蓋骨に当たったらしい。
先生はものすごく痛そうな顔をして、皐を睨みつける。
「な、なに!? お前は人殺しするくせに、自分は頭蓋骨に多少ヒビが入ったぐらいで
キレんのかよ! この凶悪最低人殺し野郎が! 」
その瞬間、先生は腹の奥から低い声を出して笑い出した。
「クックックックッ!
俺の頭蓋骨にヒビを入れたところで、お前らが俺に殺されることには変わりねぇんだよ! じゃあ先に山崎を殺すか。そのあと、のちに厄介になりそうな結崎、そのあとはヤンキーモードになったら危険な狗流派を殺すわ」
先生はそういうと、お尻側のポケットから黒くキラリと光る拳銃をとった。
大きさは、大人の手にちょうど収まるぐらいの、普通のサイズだ。
戦争とかで使うぐらいバカでかい、鉄砲とかってことはない。
そうとはいえど、拳銃だ。
大きいほうがそりゃあ威力はあるけど、人1人殺すだけだ。
小さめの拳銃でも十分だろう。
カチャッ!
先生が銃のスライドの部分を動かし、弾丸をセットする。
銃の先が皐の方に向く。
「な……っ! じょ、冗談でしょ?
やめてよ、ねぇ、やめてよ!! 」
皐は口をひきつらせながら、
キラキラした目で先生を見つめる。
人は、緊張すると目がキラキラするらしい。皐の目はキラキラしているから、緊張しているのだろうか。
なにに?
いや、皐の場合は違う。
泣きそうになっているのだ。
泣き目だから、目がキラキラしているのだ。
それもそのはず。さっきまでのほのぼのした雰囲気が、あっという間にこんなになっているのだから。
そして、銃の標的は、他でもない、自分なのだから。
この状況の皐は、どんなことを思っているのだろうか。
なにを考えているのだろうか。
そして次の標的は、私なのだ。
死を間近にした時の恐怖。
これは、あまりにも大きいものだった。
この時、普通の人ならどうするか。
先生の性格だ。最初に殺すと言った人は、どんな手を使ってでも最初に殺すだろう。
仮にこの時私が図書室から出て、
図書室からぐんぐん離れて行ったとしても、先生は私を追いかけず、皐を狙い続けるだろう。
ならどうするか。
私が逃げてしまえばいいのではないだろうか。
今まで仲良くして来た友達、親友を見捨てて。
よし、そうしよう。
作戦決行だ。
なーんてね。私が親友を目捨てるわけないじゃない。
見捨てないけど、助けられない。
皐が死ぬところを、私はただただ呆然と立ち尽くして見ることしかできないのだ。
見捨てない。けど助けもできない。
悲鳴。血。白目。穴。先生の勝ち誇った顔。
それを見ながら私も同時に死ぬのだ。
あぁ。人間はなんとか弱いのだろう。
人1人も助けられないなんて。
そしてまた、人間はなんと残酷なのだろう。
皐も死ぬ。私も死ぬ。喩菜ちゃんも当然死ぬ。3人揃って死ぬ。
誰しもがそう思った。はずだ。
パァァァァァンッッッッ!
銃声。思った通りの悲鳴。そして血。
血。血。血。血。血。血。血。血。血。血。
血?
皐は驚いている。
当然私も。
だが、一番驚いているのは先生。
皐の前に、人がいる。
皐は怪我ひとつないが、その人は今にも死にそうだ。
ショートカットの清潔そうな髪。
落ちるメガネ。
喩菜ちゃんの頭に弾丸。
喩菜ちゃんは死んだ。
「皐ちゃんは生きて」と最後に言って、そのまま倒れた。
皐をかばって喩菜ちゃんが死んだ。
頭が追いつかない。
先生もキョドッている。
なん……で? なんで人が目の前で死んでいくの? なんで喩菜ちゃんが。
なんで? なんで?
なんで?
「「喩菜ちゃーーーっっん!! 」」
残り13人。日の出はまだまだだ。




