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第4話

さて、問題です。

私と皐は今、どこへ向かっているでしょうか。


……。


……。


……。


正解は、家庭調理室でした。

(なんかすみません……)


**


私たちは今、家庭調理室へ向かっている。

それはなぜか。


さっき先生が言ってた。

家庭調理室に生徒同士が話し合えるように電話を置いて、

それと……、生徒同士で殺し合いができるようにナイフも準備したらしい。


電話は正直助かる。

皐と離れ離れになっても話せるもんね。


あ、今思ったけど、さっきまで家庭調理室が鉄みたいなものすごく硬い何かで封鎖されていたのはそのせいか。


**


「じゃあ入ろうか」

家庭調理室を目の前に、私はそう言った。

家庭調理室の近くにある、この学校のベランダへつながる扉から外を覗き込む。


陽はまだ東側にある。


雨はやんでいる。


「ね、ねぇ、この扉開けたら先生バーン! とかないよね……」

少し震え君の声で皐は聞いてきた。

まあ、そんなことがあったらもう叫ぶわ。


軽くコクリとうなづき、小声で「大丈夫」と言った。

ゴクリと唾を飲み、バンと扉を開ける。


……と、その時、

「キャァァァーーーーーッ」


と、甲高い女の子の声が家庭科調理室から聞こえてきた。

少し驚いた。皐はものすごい驚いている。


「な、なんだ……。皐ちゃんに紫織ちゃんだったのか」

「な、なんだぁ。ビビったぁ……」

聞き覚えのある声が、二つ……聞こえてくる。


この声は……。


「「喩菜ちゃんと楓! 」」

そこには、喩菜ちゃんと楓がいた。


えっと、喩菜ちゃんと楓の事を忘れた人もいるかもしれないので、教えます。


楓はクラスでトップのバカ。

けど、頭の良さは学年10番目。

運動神経も悪くはない。


喩菜ちゃんは頭はいいし、本をよく読んでる。

楓と付き合ってるけど、楓とは正反対の性格。

そして、喩菜ちゃんの過去をしる人は誰もいない。


喩菜ちゃんと楓は家庭科調理室の中央に固められたテーブルの上から、

携帯を取っていた。


「ってかよぉ、何考えてんだって感じだよな、先生様はよ〜」

楓は気だるそうな声で言った。

喩菜ちゃんはその楓の言葉に対して、「もう! 」と軽く言って

手をチョップの形にして楓の頭を叩く。


私たちは、これをただ、ボーッと眺めるだけだ。

「皐、携帯電話とナイフ取ったらここ出よっか」

皐に呼びかけるような感じでいうと、皐も察したようで、コクリとうなづいた。


**


携帯電話の電源を入れてみる。

携帯電話っていうのが、先生のチキンさを感じさせる。

なんでガラケーなのって感じ。


ガラケーは使ったことないから、どうやって何をどうすれば誰かに電話をかけることができるのかを頭を抱えて考えていると、横から皐が教えてくれた。


「このボタンを押すと……。ほら。ここに書いてある子に電話をかけられるよ」

その画面には、『1』『2』『3』『4』『5』『6』『8』『9』『10』……と書いてある。


この番号を押せば、ランダムで誰かに電話をかけられるのね。

「あとでその番号の名前を変えることも可能だから、その番号が誰かがわかったらその子の名前に変えよう」

と。皐が教えてくれた。

そして、

「あ、私は3番がないから、私の電話は3番みたいだよ」

と皐が教えてくれた。

試しに3番にかけてみる。


プルルル……!


皐の電話から音がなる。

「本当だ」

私は早速3番の名前を『皐』に変える。


そんな感じで、いろんな子の名前を番号と変えていった。


**


「13番は楓。17番が喩菜ちゃんだったね」

すべての番号を名前に変えた私たちは、早速この学校の他のクラスも探索することにした。


……とその時。


キーンコーンカーンコーン……。

—はーい。みんな携帯電話取ったっぽいねー……。ナイフは取ってない子もいるけど……。

まあいいや。じゃあ俺、放送室から出て追いかけるから……。っと、おっと!

は……い……で……こ……す……バ……バイ…—


「な、何いまの」

皐が不思議がったような声で聞いてくる。

「恐らく、死んだわね」

私がそう言うと、皐は驚いた顔で、何度も「誰が!? 」という言葉を繰り返す。


私は少し引き気味の顔で答える。


「今のは多分、先生はこう言ったのよ。

『っと、おっと!

はやいね。でもころすね。バイバイ』

多分だけど」


私がそう言うと、皐は青ざめた表情で、慌てている。

と、先生の声が聞こえてきた。


—今、早とちりして突っ込んできた男子生徒2名と女子2名を殺したよ。

残りは18人—


やっぱりね。


やっぱりねっていうのは失礼な気がするけど、まあ、予想どうりだなぁ。

皐はでも、だいぶ人が死ぬということに慣れてきたようだ。

(いや、人の死になれるってどういうことだろう)


「よし! 6階あたりに行こう」

皐の手を軽く引っ張り、上に行こうと家庭科調理室の前を通ると、

楓と喩菜ちゃんに呼び止められた。


「まって! 一緒に行動しない? 」

私たちは目を合わせると、二人で同時にうなづいた。


**


六階についた私たちは、六階にある食堂で一息つくことにした。

食堂には、調理道具もあるし、火も使えるし、冷蔵庫の中にはたくさんの材料が入っている。


本当に何がしたいんだ? 先生クズは。


まあいい。あいつのことを考えると、頭が痛くなる。

「私が料理を作るよ」

喩菜ちゃんが言った。私たちは、ありがたく作ってもらうことにした。


**


「あんな優しい子を彼女に持つなんて、憎いねぇ! 」

皐はどっかの親しみやすいおっちゃんのような言い方でこんなことを言いながら、楓を肘でつつく。

心の中で大笑いしてしまう。


その時悲劇は起きた。

「な、なに!? キャ、キャァァァーーーーーッ! 」

突然食堂に喩菜ちゃんの声が響いた。


急いで喩菜ちゃんの方へ向かおうとした時、誰よりも早く(つっても3人だけど)

楓が喩菜ちゃんの元へ向かった。


「ど、どうした!? 」

そこには、先生がいる……と思いきや、喩菜ちゃんがモテすぎて、喩菜ちゃんのことをひがんでる奴らがいた。


その女たちは、手にナイフを握りしめていた。

「こ、これであんたを殺せば、殺人犯にならないわよね? それに、楓君もフリーになるし、ライバルが減る! 一石三鳥ってね! 」


はぁ。一石三鳥なんて言ってるけど、最終的に1人にならないと意味ないから、どっちにしろ楓の反感を買うだけなんだけどなー。


呑気のんきなことを考えながら、視界の中で喩菜ちゃんと楓のツーショットを映す。


「てんめぇら! ふざけたこと考えてんなよ! 」

急に楓が怒鳴り出す。少しビクッとする。


「か、楓君! 怒んないでよ〜。

じょ、冗談に決まって……」


サクッ!

ブシャァッッッ!


それは、一瞬の出来事だった。

目の前が血で広がる。

「うっ……」

皐が口元を押さえている。涙目にまでなっている。


如何やら皐は人の死に、特別弱いようだ。

そのあとは一瞬だった。あっという間に僻み女たちが倒れていった。


その女たちの横には、真顔で死んだ女たちを見つめる先生がいた。


そして、途端にニヤリと笑う。


そして標的は、喩菜ちゃんに向けられた。

先生はナイフを思い切り投げる。

それも、ニヤニヤ笑いながら。


「え、な、な、な!

逃げられない……! 」

喩菜ちゃんは目を丸くして、ギュッと思い切り目を瞑った。


グチャァッッッ……!

グ、グロい音が聞こえてくる。

あぁ。喩菜ちゃん……っ!


「ふぇ? 」

喩菜ちゃんの拍子抜けの声が聞こえてくる。そして、悲鳴が聞こえた。

「キャァァァァァァァァァァァァ!

ギャァァァァァァァァァァァ!

嘘でしょ! 嘘でしょ! 楓ぇ!! 」


目をゆっくり開けると、喩菜ちゃんの目の前に楓が転がっている。

腹の少し上……心臓部分にナイフが刺さっている。


楓は顔を歪まして、無理やり笑顔を作っている。

「グフッ! 」

その声と同時に、楓の口から血がたれ出てくる。

そして静かに、楓が崩れていく。


真っ白で綺麗だった床が、赤いペンキで塗りつぶしたかのように真っ赤になっている。

その赤黒い色の地面に楓の体が横たわる。


ピチャリと赤黒い血が跳ねる。


それが喩菜ちゃんの白かった服に、模様のようにかかる。


楓の方を見ると、楓の心臓に刺さっていたはずのナイフが無くなっている。

その代わり、ぽっかりと心臓部には穴が空いていて、

白い骨が肉からはみ出ている。


「喩菜は……死ぬんじゃぁねえぞ……」

かすれた声で、楓が言う。


喩菜ちゃんは涙をボロボロ流した。


「楓ぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!! 」


残り14人。日没まであと6時間30分。

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