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第1話

この、聖ハスカには刺激が足りない。

いつも教師とか親は、『勉強』って。


刺激が欲しい。もっと、楽しみたい。

ウキウキしたい。ドキドキしたい。

そんなことを、何度思ったことか。


けど、私はそんな残酷で最悪な刺激はいらなかった。


けど、面白そうと思ってしまっていた自分がいた。

その自分が、強かった。


「あははっ! 面白そうじゃない。

いいわ。私は、やる。

てか、全員絶対参加っしょ? 」


うっかり言ってしまった。

みんなは賛成して、ワーワー騒いでる。

けど、みんな心のどこかで、不安に思ってる。はず。


朝会後に、先生が突如発したその言葉は、地獄へのお誘い。


「じゃあ、“いつか”殺人ゲームをするよ。覚悟しといてね」

背筋がゾッとした。

たった一言でゾッとさせるなんて。


**


寒い。

あの日、少し怖くて、けど少し面白くてウキウキして。

そんな状態で学校から帰ってきたあの日。というか、昨日。


殺人ゲームをするって先生が言ったのが昨日。

そして、家に帰って、寝て……。

で、なぜ学校の校庭に?


目が覚めたら、

校庭にいた。立っていた。そこに。

空を見上げる。せっかくのお日様が

雲に隠れていて、謎の寒さを感じる。

周りを見ると、聖ハスカのみんながいた。


「ちょ、紫織! 何ここ!? 」

親友の山崎やまざき さつきが私に話しかける。

この子はドジでおっちょこちょいだけど、クラスの中でずば抜けて運動神経がいい。


100メートル11.2秒だし、

走り幅跳びの記録は7.98メートル。

5年から急に足が速くなり始めて、

結局コレだよ。きっとオリンピックに出れる。


「私だって知らないよ。

今来たんだもん。でも、確実に言えることは、これから“殺人ゲーム”が始まるってことだね」


一瞬、わずかに、皐の口が引きつった。いつも希望に満ち溢れて輝いていた皐の目から、輝きが一瞬消えた。


けど、すぐにいつもの顔に戻って、

怖〜いなんて言ってる。

内心、怖くて仕方がないはずなのに。


「なぁ、ココドコだよ〜。

紫織はここどこかわかるか? 」

風爽枒ふうそうや かえでが私の肩に手をかけながら、聞いて来た。


はぁ。彼女いるのにいいのか?


こいつはバカでただの力のあるだけのやつだけど、キャラはいいし、ルックスもいいし、面白いし、まぁ、モテそうなやつ。で、彼女いるし。


「楓に紫織ちゃん、皐ちゃんまで来てるの? ていうか、全クラスの子がいるか。えっと、おはよう……かな? 」


そう、小さな、聞こえるか聞こえないか、今にも消えてしまいそうなくらいの声の大きさで私たちに話しかけて来たこの子が、楓の彼女、狗流派くるは 喩菜ゆな


とても楓とは性格が似ても似つかない、静かな子だ。けど、なにか、いい雰囲気を感じられる。


「おー、喩菜。お前も連れてこられたのか? ここに。怪我とかは……しなかったか? 」

「うん。大丈夫だよ、楓!

心配してくれてありがとう」

「お、おう」


ほらね。なにか、ほっこりする。

いくら小学生の恋だとしても、残念な終わり方はして欲しくない。そう思える。


キーンコーンカーンコーン……。


一時間目の授業を伝えるチャイムが、校庭中に鳴り響く。

そのチャイムが、

“殺人ゲーム”の始まりを知らせているようだ。


あ……れ?


私は校庭を見渡した時に気づいた。

「ここ、聖ハスカじゃない」

6年の、1組から3組までのみんなが私の方向に向いた。


私は、自分で言うのもなんだが、

スクールカーストっていうの?

あれの頂点にいるっぽい。


だから私の発言で全てをまとめることもできるし、みんなを支配……っていうと言い方悪いけど、みんな私のいうことを聞いてくれる。


だから、私の発言にも敏感らしい。

「え? ここが聖ハスカじゃない? ドユコト? 」

皐が私に聞いてくる。


そう。一見、いつも通っている聖ハスカなのだ。校庭もいつもの芝生の校庭だし、校舎だって、いつもの十階建のままだし、何も変わらない。


けど、今校庭をぐるりと見渡した時に気づいた。


「この聖ハスカ小の周りに、家や建物が一軒も無いのよ」


私のその発言につられるように、みんなが校庭をぐるりと見渡す。

そして、みんなが同時に、ワァッと歓声(? )をあげる。


「さすが紫織さん、お気づきになられるのが早い」

そう、クラスの人間が口を揃えて言う。

なんか、毎回私の言動1つ1つに反応されるの疲れる。


にしてもじゃあ……ここはどこ?


「はい、みんな揃ったかな? 」

突然、校庭の真ん中から声が聞こえた。条件反射で校庭の真ん中を見る。


そこには、6年1組担任の、

サイコパス先生がいた。


背筋に何か、とんでもなく寒い何かが通り過ぎた。

みんなの視線が朝礼台に集中する。


先生は、ニヤリと不敵な笑みを浮かべた。一年生の子で、泣き出している子もいる。


「えーっと……。

みんな揃ってくれたかな?

じゃあ、“殺人ゲーム”を始めようか。

ルールを説明するね」


そんな泣き出している子も無視して、強制的に“殺人ゲーム”を始める。


まるで、心が無いのではないかと、疑ってしまう。


「タイムリミットは日が沈むまで。

それまでの間に僕ら先生から逃げてね〜。


もし逃げられなかったら……。

『死ぬからね』! 」


ゴクリ。


喉の音が、聞こえる。


みんなの顔が青ざめて行くのが目に見えてわかる。


……っ……!


なんて……ひどいのだろう……。


「先生……」

私は、気づいたらそう言っていた。

全校生徒に聞こえるくらいの声の大きさで。


「ん? 」

ニコニコした顔で、先生は私の方を向く。一瞬、背中がぞくりとした。


けど、私は先生をまっすぐに見つめて、口を開く。


「先生を殺すのは、アリですか? 」


じっと先生を見つめながら、

そう、言う。


先生は、少し驚いたような、面白いなんて思ってそうな、不思議な顔をして、そしてニンマリと笑った。


「ははは!

いいね、面白そう。

けど、ならルールを追加しよう。


『夕日が沈むまでに先生を殺すことができないと、君たちの近くに、

原爆を落とす……なんてどうだろう』


は?


先生の言った言葉を、

頭の中でリピートする。


6年以外は、


なんで先生も殺していいのか、なんて言ったんだよ!


とかって言って、私にブーイング?

的なのをしてくる。

私だって、原爆を落とされるなんて嫌だよ。


「お? 6年生以外は嫌だって叫んでるね〜。

なら、6年生以外はもう帰ってよろしい。けど、6年生……6年1組は残りなさい」


喜びの声と、悲鳴が、重なり合って聞こえてくる。


心の底から怒りがこみ上げてくる。

けど、これも全て、私の発言のせいだ。

けど、6年1組は、誰一人と文句を言わない。


「私たち……だけ?

ってことは、私たちだけでこの校舎を、この校庭を使えるってことでしょ! 楽しそう! 」


皐は、少し引きつった顔で、頑張っている。

泣きそうになる。

ごめんね。みんな……!


「じゃあ、戦いの始まりだ。

俺VS6年1組生徒。


ヨーイ、スタート! 」


**


〜“殺人ゲーム”のルール〜


・6年1組のみ参加


・6年1組担任、小川おがわ 幸秀ゆきひでが鬼


・1分経ったら追いかける


・タイムリミットは夕日が沈むまで


・先生を殺すことはあり


・しかし、夕日が沈むまでに先生が殺されていないと、

生徒みんなに原爆が落とされる


《裏での追記ルール》


・夕日が沈むまでに、生徒が残り1人になっていなければ、

生徒みんなに原爆が落とされる


・生徒同士での殺し合いもあり


・先生が死んだ後も、生徒同士で殺し合わなければ自分と他の人、全員が死ぬ

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