4話 状況整理 ①
次の日の朝は久しぶりにスッキリとした気分で目覚る事ができた。
今までの倦怠感が嘘のようだ。
「うーーん」と伸びをしていると
「おはようございます。お嬢様」
いつの間にか隣にセバスがいた。ちょっと怖いんですが。
そんな事を思いながら、セバスをまじまじと見る。セバスは30になるかならないかのベテラン執事だ。茶色の髪に薄茶の目、細身の長身の彼は端から見ると優しそうな風貌をしている。
リリィの記憶には頼りにはなるが、優しいセバスの記憶はほとんどない。
元気な頃は、リリィの教育係を兼ねていた彼はひどくスパルタだった。ええ、本当に。リリィちゃん可哀想そう。
優秀だが、平民出身のセバスは私達親子の専属として仕えていると、お母様が申し訳なさそうによく話していた。
「おはようセバス。
本当は今すぐアリシア様方にお会いしたいのだけど、先に確認しておきたい事が山ほどあるわ」
「ええ・・」セバスの眼差しが少し鋭くなった。
「まずは私をなぜ『お嬢様』と呼んでいるのかしら。そして、ここは城内ではないようだけど、どういう事かしら」
「お察しの通り、ここは城内ではありません。
クレセント商会の別荘になります。
あなた様は今はリリィ・クレセント様として扱うように命を受けております」
そこまで言うと、セバスは声色を一段と低くして
「失礼ながら、リリィ様は大人びているとはいえ6歳です。
貴方は何者でしょうか?」
しまった。そりゃそうだ、病み上がりの6歳の子供が起きてすぐに状況把握などできる訳がない。ましてや、セバスはリリィの事を赤ちゃんの時から知っているのだ。
冷や汗が出てきた。
そうこうしているうちに、部屋の温度がどんどん下がっていく。
うー、セバスの眼差しが怖すぎる。
このままだと、錬金術師の彼女達に会うどころではなくなってしまう。
「私は間違いなくリリスティアよ」
意を決して私は話続ける
「ただし、リリスティアの生を受ける以前の記憶が蘇ったのよ。
リリィとしての記憶も意識もあるから安心なさい。」
高貴な者らしく、わざと偉そうに話した。
セバスは驚いたような顔を一瞬したが、すぐに
「失礼ですが、いくつかの質問に答えて頂けますか」
私はコクリと頷くと、セバスの矢継ぎ早の質問という名のテストに必死で答えていた。
質問が終わる頃には、セバスの眼には涙がたまっていた。
「大変失礼致しました。性格が変わったとしても、貴方様はリリスティア様でございますね。
ライラ様に引き続き、リリィステア様まで居なくなられてしまったらと取り乱してしまいました」
申し訳なさそうに、セバスが頭を下げる。
失礼だぞと思ったけど、セバスの悲しそうな姿は見たくないなと私は思った。
状況整理が続きます。
セバスさん初老設定からミドルエイジへ変更。
脇役だったのですが、絡んできました。