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逃避と決意

これは以前に別サイトで『ある冒険者の追想』というタイトルで掲載した作品に加筆修正を加え完結させたモノです。


又、以前、当サイトにて短編として掲載した物を一部加筆修正し、分割した作品になります。

その冒険の切掛けを一言で言うならば、それは『愛と自由を求めて』というのが一番相応しいだろう。

 そして、それはある存在との出会いから始まった。


 俺が住む『神蒼界』では、《秩序の光》と《力威の闇》と呼ばれる二つの勢力が、世界の覇権を求めて相争っている。

 絶える事無く続くその争乱は、世界に大きな混乱をもたらし、そこから生まれる恨みや憎しみが更なる争乱の火種となる負の連鎖。

 それがこの世界に於ける偽り無き現実であった。


 『冒険者』、それは嘗て世界をおびやかす絶対の脅威であった《邪悪なる魔を統べる神》を討ち滅ばした英雄達。

 しかし、彼らこそが今の世界を混迷の渦に巻き込んだ元凶であった。

 その争乱の始まりは、冒険者同士の些細ないさかいであったらしい。

 そこから生まれた刃の恨みに刃の恨みを以って報いた結果、退く事の出来ない争いへと至った。

 互いに譲らぬ意志は、至高の力を誇った《王》と呼ばれる二人の存在によって、冒険者としての実績とそれによる地位を重んじる《秩序の光》と、冒険者としての実力を絶対とする《力威の闇》へとまとめ分かたれる事となった。

 そして、世界はその二人の《王》が戦場に君臨する争乱の舞台となった。


 く言う俺自身もその冒険者の端くれである。

 だが、俺は他の冒険者達とは、少し違った生き方を求めている。

 それは、未だ世界に存在し続ける《魔物》と呼ばれる異形達と戦う日々に身を置く事であった。

 俺が何故なにゆえ、そんな生き方を求めたのかと言えば、その最たる理由は、今、俺のかたわらにあるナビ・パートナーと呼ばれる存在にあるだろう。

 『ナビ・バートナー』、それはその名の通り、俺達、冒険者の旅に付き従う同行者。

 その姿形は其々(それぞれ)に異なり、多少の差は在るがケモノに近い様相を持っている。

 因みに俺の『ナビ』であるスィーナは、焦げ茶と赤茶の二色が重なり合った皮衣かわごろもを持つ『ネコ』に似た姿をしている。

 俺は、忠義と礼節に愛嬌を合わせ持つこの存在を大いに気に入っている。

 否、こよなく愛していると言っても過言ではない。

 そして、俺が魔物達を『仇敵』とする理由は、奴等がナビ達にとっての天敵だからである。

 俺は、冒険者となって、最初に受けた依頼の中で、自らの非力さと魔物達の残忍さを思い知らされた経験を持つ。

 あの時、俺は小さな冒険を果たした歓びにおごり、ナビであるスィーナを危険な目にわせてしまった。

 だから俺は、この愛らしい存在を傷付ける魔物達を狩る事を、冒険者である自分の使命と定めた。


 冒険者としての挫折を知ったあの時の経験から、俺は、臆病に近いぐらいの慎重さを持って生きて来た。

 それは、もう二度とスィーナを危険な目に会わせない為の慎重さである。

 そして、俺は、大切な存在を護る為に、魔物達と戦う危険をおかす少し変わった性質の冒険者となった。

 

自らの剣を以って魔物達を倒す事に魅入られた俺を、他者は、《魔物モンスター虜刃スレイブ》の異名で呼ぶ。

 そこに在るモノがあざけりであろうとも構わない。

 俺には、護るべきモノに対する誇りが在るのだから。


俺はスィーナと共に各地を渡り歩き、その街々に在る冒険者ギルドで魔物退治の依頼を受けて、日々の暮らしの糧を得ている。

 自らの異名となる程に、魔物を討つ事に特化していたその風評も手伝って、俺は、仕事に事欠く事も無く、着実に冒険者としての経験を積んでいた。

 そんな俺の風評が何時いつしか、名声と呼ばれるモノに近くなるにつれ、ギルドから微妙な依頼が持ち掛けられ始める。

 それは、傭兵として、《光》か《闇》の勢力に加わらないかという内容であった。

 他者ヒトはさて置き、俺には、戦場のほまれというモノに対する興味が全く無かったので話の都度つどにそれを断わってきた。

 しかし、それであきめて話を終わらせてくれないのが、いまだ俺に付きまとう目の前の現実だった。


 それは、《光》と《闇》の勢力に冒険者を誘う、互いに『導司』と呼ばれる職位ジョブにある二人の少女である。

 一人は、《秩序の光》に属する導き手で、名をファーシィ。

 その『得意技』は、清楚な瞳で訴える泣き落とし。

 もう一人は、《力威の闇》に属する導き手で、名をクィーサ。

 その『必殺技』は、理知を完全に無視した恫喝どうかつ

 両者は、正に、真逆の性質を持つ対照的な存在達だ。


 この二人は、俺が冒険者ギルドからの依頼を蹴って直ぐに、俺の前へと現れた。

 最初は、わざわざ々、俺なんかを勧誘に来る手間を難儀だと思ったが、その執拗しつようなまでの執念を以って付き纏われ続けている今では、正直、迷惑以外の何者でもなく感じている。


『さあ、セティ様。わたくしと共に、この世界に美しき秩序の光華を咲かせましょう!』

・・・否、俺はそういうのに全然興味が無いので他所でお願いします。

『セティ! この世は力こそ正義なのよ。あたしと共に力の正義を貫きなさい!』

・・・俺、そういうのは間に合っているので、他の人間を誘ってください。

 と、『心の声』を口に出して言えたならば、全ては解決するのだろうか。

・・・意志薄弱な俺にはムリです(とほほっ…)。

「スィーナ、俺には、お前だけが心の支えだよ」

 俺は、心のオアシスであるナビへと独りごつり、自分の心を慰める為にその頭を撫でる。

 我が事ながら、優柔不断なこの性格が恨めしかった。


『セティ様、一緒に来てくださらないと、私……、私…』

『セティ! 拒んだりしたら、どうなるか分かっているわよね?』

 前者は涙目、後者は威嚇いかく

 これは、何時いつもの展開である。

 そして、それに対する俺の応えも何時もと変わらなかった。

「済みません。俺は、まだまだ未熟な身なので、お二人の要望には応えられません」

 この言葉は、謙遜けんそんである以前にまぎれれも無き事実である。

 これまでの冒険の旅でそれなりの経験を積んだ身ながら、未だ俺は、《重装剣士》の職位に留まっていた。

 それに対し、今、俺の目の前に居る二人は、共に熟練した《神聖魔導師》の身の上である。

 その二人が、態々、俺なんかに構う事自体が、はなはだ不思議であった。

「だから、俺なんかより、もっと良い相手を探してください」

 過去の経験から、それが無意味な事だと知りながらも、俺は、遠回しにこれ以上付き纏わないで欲しいと告げる。

『未熟だなんて、そんな事はありません! 貴方には、他者に無い素晴しい資質が在ります。だから、それを私と共に《秩序の光》の中で開花させましょう!』

・・・それは、貴女の勘違いです。

『セティ! うだうだ言ってないで、私と共に《力威の闇》の下で戦いなさい。さもないと酷い目に遭うわよ!』

・・・それって、貴女に酷い目に遭わされるという事ですよね?

・・・もう、俺の事は放って置いて下さい。

 さあ、俺、きっぱりとそう言うんだ俺!

・・・やっぱり、ムリです(うぅ…)。

『クィーサ、そんな乱暴な言葉で、彼に無理強いをするのは良くありません。彼も困っていますよ』

・・・否、困っているのは、貴女に対しても同じです。

『ふーん。ファーシィ、貴女は、そうやって又、良い子ぶっちゃってくれるわけだ。ほんと、貴女のそういう可愛い振りしてオトコをだます手管が、鼻に付くのよ。涙はオンナの武器ですか。あぁー、やらしィー』

・・・やば、険悪な空気が流れ始めた。

『そんな事を貴女に言われたくありません。それに、貴女だって、その無駄に卑猥ひわいな身体でオンナの色香を振りまいて、強引に相手を誘惑しているではありませんか。イヤラシイのは、貴女の方です!』

・・・うわぁ、最悪の展開。

『あらぁー、言ってくれるわね。ふぅっふーン、それは、無い乳娘の負け惜しみかしらぁーン』

『うっ、ウルサイのです! そういう貴女は莫迦バカの一つ覚えで、昔から、所構わずその贅肉ぜいにくの詰まった塊を自慢げに張り出していましたわね』

・・・嗚呼、こうして生まれる確執が《光》と《闇》の間にある因縁の溝を更に深めるのですね(合掌)

 白熱する乙女の戦いを前に、俺は、それを止めるも出来ず唯黙って見詰めていた。

「(しかし、これはある意味、チャンス)」

 二人の気が逸れた今を好機と、俺は、スィーナを抱き上げると忍び足で後ずさる。

 幸いな事に、どちらも俺の行動に気が付きはしなかった。


「……ここまでくれば、一安心だな」

 俺は、見事に虎口を脱した感慨かんがいから、安堵の言葉を洩らす。

「しかし、それにしてもあの二人の因縁は、昨日今日に始まったという程度のモノではなかったんだな……」

 その二人に自分が迫られている選択肢の結果を思えば、余り知りたくは無かった事実である。

「同じ女性でも、『彼女』とは全然違うな」

 口にしたその言葉と共に、俺の腰にある『彼女』と過ごした日々の思い出の証である剣がずっしりとした重みを示した。

『アルディナ様の事ですか?』

 俺の言葉に反応して、スィーナが問い掛けの言葉を口にした。

「ああ、どうせ追い掛け回されるなら、彼女にこそ、そうしてもらいたいんだがな」

『マスター、ガンバです!』

 応援の言葉と共に、俺の頭を撫でるスィーナに苦笑混じりの眼差まなざしを返し、俺は、黙って頷く。

・・・嗚呼、本当に頑張らなくてはだな。

「もう一度、彼女に会いに行く為にも、早くこれを振るうのに相応しい力を身につけなくてはだな」

 俺は、独り言の様にその言葉を口にして、背中にびたアルディナが俺の為に鍛えて上げてくれた双剣に触れる。

 この双剣は、アルディナとの初めての出会いとなる邂逅かいこうの際、戦いの中で折れてしまった俺の愛用の剣を、彼女が新たなる姿を以って打ち直してくれたモノで、この世界には俺が持つ二振りとは別に、もう一振りだけしか存在しない、持つ者の意志に応えて成長する刃を持つ《ガーディアン・ブレード》と呼ばれる特異の力を宿した特別なモノである。

 彼女は、そのもう一振りを生み出した鍛冶の師である、《神の武具を鍛えし者》とたたえられるイルグ・オードに認められる為に、俺を信じこの双剣を託した。

 だが、俺は、彼女の想いに応える事を約束しながら、未だにその一歩すら歩み出せず、この双剣を振るって戦う事が出来ずにいた。

『マスター、焦る必要はありません。この世界から《神》が去ろうとも、彼の存在は今も尚、私達を見守っております。貴方が求めるモノを見失わない限り、何時かはそれに対する報いが与えられる筈ですから』

「そうだな、ありがとう。弱音を吐いているヒマなんて無いな」

『そうです! ファイトです! オォーです!』

 腕を振り上げて気合いの声を上げるスィーナ。

 俺は、その励ましに応えて、スィーナの頭を撫でた。

「では、まあ、目指す道程みちのりはまだまだ遠いけれど、歩き出さなければ何も始まらないからな。行こうか、スィーナ」

 俺は、自分に言い聞かせる意味も込めて、その言葉を口にすると、スィーナを伴い歩き出した。


既に掲載済みの同タイトルを、読みやすさと、『なろう投稿作品に於ける文章作成の心得』として必要なところを押さえて(まだ不十分かもしれませんが)、加筆修正し再構成をいたしました。


既に読んでくだされた方には、紛らわしい事をして申し訳ありません。


新たに読んでくださる方には、この作品と微妙に絡んでいる作者別作品の『半熟侍さんは異世界に夢を探しに行きました』の方も、是非、一読を頂けると嬉しいです。

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