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異世界に昇る日章旗  作者: DD122はつゆき
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 艦隊は、10ノット程度の速度で、『門』の入り口に向けて航行していく。

 単縦陣を形成した艦隊は、護衛艦『いなづま』を先頭に、『門』をくぐっていった。

 もちろん、一度に全艦が突入するわけでは無い。

 一隻通過するたびに、艦の状態や周囲の状況、装備や機材、通信機器の交信範囲などを、入念にチェックを行う。

 そのため、殿の『おおすみ』が通過するまで、実に丸一日が経過していた。

 『門』の外――異世界側に進出した調査艦隊は、門の近辺に停泊し、調査に先立つ『門』周辺の調査準備を整えていた。


「海の上だからかもしんねえけど、地球と大して変わり栄えしねえのな」

「陸地が見えないと、実感が沸きませんよね」


 一夜明けた次の日。

 調査艦隊は本格的な調査と偵察行動に移る事となった。

 しかし、派遣されていたOH-1偵察ヘリ2機のうちの1機にマイナートラブルが発生し、離陸を見合わせることになってしまった。

 その穴埋めとして、二人の乗るAH-1Sが代替機として、偵察任務を行うことになっていた。

 アイランド横の第1エレベーターよりせり上がって来た二人の乗るAH-1Sは、トーイングカーに牽引されて第1スポットへ誘導され、

脚下の台車がはずされた。


「さて。んじゃ、ぼちぼち行くとするかねー」


 愛機と共にエレベーターを昇ってきた那珂と球磨は、徐に機体に乗り込んだ。

エンジンスタート、チェックリスト読み上げ後、誘導員の指示に従って手順どおりに発艦した。


「アルファ1、発艦完了。これより、指定ポイントへ向かう」


 艦隊は、旗艦である『ひゅうが』を中心に、前方を『こんごう』『いなづま』『くらま』が、後方を『しょうなん』『ひびき』『おおすみ』が取り囲む輪形陣を敷いている。

 『ひゅうが』の上空を旋回した後、AH-1Sは、所定のポイントに向かった。

 二人の駆るAH-1Sを含めた偵察部隊は、艦隊の前方に展開し、不測の事態に備える事になっていた。

 だが、対水上レーダーなど装備していないAH-1Sなので、出来ることは殆ど限られている。

 あくまで、本来の哨戒ヘリであるSH-60Kの補完的な役割でしかない。


「……なんか、じっと海面を見つめてたら、気持ち悪くなってきた」

「俺の後頭部に吐かないでくださいよ」

「にしても、何にもねえなぁ……事前調査じゃ、陸地が近くにあるんじゃなかったのか?」

「あくまで、可能性の話ですからねえ」


 その時、『ひゅうが』の航空管制より通信が入った。

 別方向を調査中のSH-60Kが、陸地を発見したとの一報だった。

 発見した陸地は、どうやら大陸のようだ。


「見つかったみたいですね」

「おー、そりゃ良かった。こっちも燃料がビンゴだ。そろそろ帰艦するか……んっ?」


 那珂は水平線の向こうに目を凝らした。

 米粒ほどの大きさではあったが、島らしきものが目に入った。


「球磨、見えるか。1時方向。水平線の手前あたり」

「島……ですかね」

「だよな。とりあえず報告するか。こっちも見つけたってな」


 那珂は島らしきものを発見したことと、大まかな距離や大きさを『ひゅうが』へ報告した。

 くわえて、燃料がギリギリであることも報告する。

 当然、『ひゅうが』側でも二人のAH-1Sの残燃料は把握しており、『ひゅうが』への帰艦を認め、交替ヘリの派遣が手配されることとなった。

 那珂は、旋回するためにフットペダルを踏み込もうとして、海面上に別の異常を発見した。

 波のうねりに逆らうようにして、何か線のようなものが海面に浮かんでいる。


「球磨。今度は2時方向下。見えるか?」

「……見えます。何ですか、あれ」

「ウミヘビ……なわけねえよな。この距離から目視できるなんて、どんだけだよ」


 思わず呟いてから、即座に否定した。

 二人は言葉も無く、少しの間、波間に見える不可解な物体を凝視し続けていた。

 その不可解な長細い物体は、船舶のような航跡(ウェーキ)を発しながら、一定の方向に向けて進んでいく。

 二人の目には、先程発見した島と思しき陸地に向かっているように見えた。


「あれは……船か?」


 物体の目指す方向に、何かが浮かんでいた。

 海面の色が保護色となり、更に波にもまれて激しく浮き沈みしていたため発見が困難だったが、ボートのような小舟を見つけた。

 目を凝らしてみると、人が乗っているらしく、必死にオールを操っているのが分かった。

 直感的に、あの物体は、島ではなく、舟を目指しているのだということに気が付いた。

 那珂がそれを理解した瞬間、波間に見えていた物体が、航跡と共に姿を消した。


「アンノウン、ロスト!」

「潜水したのか!?」


 二人が驚愕の声を上げた。

 その次の瞬間、海面が爆発するように盛り上がり、巨大なウミヘビが鎌首を擡げた。

 現実離れしすぎたその光景を、彼らは声も無く見守ることしか出来ない。

 鎌首を擡げた巨大なウミヘビは、ゆっくりと、小舟のほうに近づいていく。

 ウミヘビの目的は、どうやらこの小舟のようだ。

 小舟を操っている人影は、必死に櫂を操って逃げようとしているが、波の影響もあるのか、舟は遅々として進まない。

 那珂は即座にコレクティブとサイクリックを操作し、小舟に向かう進路を取った。


「ちょ、ちょっと二尉……!?」


 前席の球磨は、那珂の取った行動に声を上げた。


「見捨てるわけにもいかんだろう」

「燃料がビンゴなんですよ!? ああ、もう!」


 球磨は抗議の声を上げるが、直ぐにあきらめ、武装の動作チェックに入った。


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