星とルナの運試し-四-(終)
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あかしや橋の前に着いた星とルナは橋を渡った。
すると、橋の名はゆらりと揺れ『あやかし橋』へと変わる。辺りが霧に包まれながらも目の前に現れた朱色の鳥居をくぐる一人と一匹。
すると、辺りの霧は晴れ、ザワザワと賑わう商店街通りへと辿り着いた。
「……帰って、きたね」
「にゃー♪」
星とルナは、少し嬉しそうな顔をする。そして、星はルナを肩に乗せると菖蒲が営む骨董屋へと向かったのだった。
色んな妖怪とすれ違う度に「お、帰ってきたか!! おかえり!」と、挨拶をされる星たち。
「……ただいま」
「にゃー♪」
声をかける妖怪たちに星とルナは挨拶を返す。人混みが多い所は好まない星だが、この時だけは少し嬉しい気持ちだった。
「にゃー?」
肩に乗っているルナが星に問いかける。
『だから、珍しく表通りを歩いたの?』
星は、その質問に頷くとハニカムような顔をした。
「おかえり……その言葉……好き」
「にゃ~」
ルナは『そうだね』と言うように鳴くと星の頬に擦り寄った。
そして、骨董屋の前へ着くと星は緊張した面持ちで店の入り口を開けようとドアノブに触れる。
ーーチリリン。
星がドアを開ける前に先にドアが開いた。
「おかえり、星にルナ」
「にゃー♪」
「……ただいま、帰りました。……菖蒲さん」
菖蒲は星の頭を優しく撫でる。頭を撫でられた星は、恥ずかしげに俯いた。
しかし、撫でられる事自体はマンザラでもないらしい。
「ふふふ。白雪からね、皆が何やら騒いでると言うから何事やと思ったら、お前さんらが帰ってきていると言うからねぇ」
「……ん」
星は「だから、開ける前にドアが開いたのか」と、内心納得する。菖蒲はそんな星を見て苦笑した。
「全く、ここの奴らは大袈裟過ぎるぐらいに騒ぎ立てるのぉ」
「……でも……嬉しかった、よ」
その言葉に菖蒲はニコリと微笑んだ。
「なら、よかった。ほれ、中に入りんしゃい。白雪がお茶を用意してくれてるよ」
「……ん」
菖蒲は星とルナを中に招き入れると、菖蒲は星が持っているものに気がついた。
「む? 星、それはなんじゃ?」
星は思い出したように手に持っていた紙袋を菖蒲に差し出した。
「……忘れてた……あげる」
「??」
菖蒲は星から紙袋を受け取り中を見ると目を見開きながら驚いた。
「なっ!! こ、これはっ!?」
「ルナ……当てた」
「まっ、まことかえ!?」
菖蒲は驚くように星の足元にいるルナを見下ろした。
ルナは『そうだよ』というように尻尾をユラリと揺らし「にゃー♪」と鳴く。すると星が少しだけ笑みを浮かべながら「……面白かった、よ」と、言った。
その言葉に、菖蒲は優しい微笑みを浮かべ星の頭を再び撫でた。
「そうかえ。なら、よかった。さ、上がりんしゃい」
「……うん」
「にゃー♪」
星とルナは小さく頷くと、菖蒲と一緒に細い板張りの廊下を歩き居間へと入る。すると、お雪に突進しながら抱きつかれ、さらに頬ずりまでされた星は少し眉を寄せながら「頬……熱い……」と、お雪から距離を置き自分の頬を摩ったのだった。
その頃の菖蒲はというと、星から貰ったルンバをうっとりとした目で見つめていた。
(終)
【報告】
短編(前半)はこれにて終了し、次回は本編に戻ります。
あかしや橋のあやかし商店街②として、新しく作成連載します。(こちらは完結します)
シリーズ連携しますので、駄文ですが宜しくお願い致します。
【次回】
三学期を向かえた真司。
春の芽吹きと同時に、友達との会話に笑ったり苦笑したりする。
しかし、それも一時の安らぎだった。
突然現れた謎のお化け(妖怪?)に追いかけられる真司は、そのモノの正体に唖然.....。
そして、遂に菖蒲の過去に一歩足を踏み入れた.....。