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悪戯は程々に-三-
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そのやり取りを、もう何度繰り返しているだろうか。真司は、何かの手によって掃除を邪魔されているのには薄らと感じていた。
しかし、感じているが姿が見えなかった。
見えないものに怒っても仕方がないとわかりつつも、やはり納得できないものがあり、真司も負けずと頑張った。
どうやら、真司は何気に負けず嫌いらしい。
そして、三回目の床掃除も真司は、黙々と床を拭いている。バケツの中の水も溜まったままで、倒されることはなく無事に床掃除を終えた。
それもその筈だ、真司の目の前には目を離すことなく、常にバケツが置いてあるのだから。
やっと床が綺麗になった真司は、うーんと背伸びをする。
「長かった~……やり遂げた~! はっ! 危ない危ない! また、目を離すところだったよ……」
バケツを素早く手に持つと、そのまま店の外に出て水を捨てに行った。
やり遂げた感が表情に出ているのか、満足したような顔をしている。何度も床を掃除しているだけあって床はピカピカだった。